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クラウドとiOS/Android/Windows 10アプリ開発を統一して扱えるVisual Studio 2015の狙いいつまで個別のスキルとツールで疲弊し続けるのか(1/2 ページ)

マイクロソフトの統合開発環境の新製品「Visual Studio 2015」がついにリリースされた。Windowsだけではなく、iOS/Androidをターゲットとした「クロスプラットフォーム開発」が可能な点が、大きな売りの一つになっているが、同社では、この製品がリリースされたタイミングで、あえて開発者に「フロントエンドだけではなく、バックエンドも含めた開発プラットフォーム全体を再検討してはどうだろうか」と提案する。その意図を同社に聞いた。

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 マイクロソフトは米国時間の7月20日(日本時間の7月21日)に、統合開発環境(IDE)の最新版となる「Visual Studio 2015」をリリースした。同日には、無料版の「Visual Studio Community 2015」も配布が開始されており、すでにその使い勝手を手元で試してみたという人も多いのではないだろうか。

 かつては「Windows向けのデスクトップアプリケーション、特に業務システムを作るための開発ツール」というイメージが強かった「Visual Studio」だが、近年ではターゲットとなる言語やプラットフォームを急速に拡大した。iOS/Androidといった「非Windows」プラットフォーム向けのアプリ開発や、Unityとの連携によるゲーム開発といった場面でも、開発者の生産性を高めるIDEとして魅力を増している。加えて、最新のVisual Studio 2015では、7月29日(日本では7月30日)にリリースされた「Windows 10 開発者用ツール(Visual Studio Tools for Windows 10)との組み合わせによる「Universal Windows Apps」開発への対応もトピックの一つとなっている。


Android Wearアプリ開発も可能になったVisual Studio 2015のテンプレート選択画面

 こうした「クライアントアプリ」開発の生産性向上は、もちろんVisual Studio 2015の持つ、大きな魅力である。しかしマイクロソフトは、Visual Studio 2015がリリースされたこのタイミングで「フロントエンドだけではなく、バックエンドも含めた開発プラットフォーム全体を、今後、どのように構築、運用していくべきかについてあらためて考えておくべきだ」と開発者に訴える。

 今回、その意図について、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの相澤克弘氏と、日本マイクロソフト デベロッパー エバンジェリズム統括本部 オーディエンス テクニカル エバンジェリズム部 エバンジェリストの井上章氏に話を聞いた。

Azureとの統合がさらに進んだVisual Studio 2015

 近年、「モバイルファースト」「クラウドファースト」といった言葉が多く聞かれる。あらためて説明する必要もないかもしれないが、これは開発の初期段階から、iOS/Androidデバイス、IoT(Internet of Things)などを含む多様なクライアント環境や、「クラウド」によるバックエンド処理を前提とした設計を行うというシステム開発のトレンドを表したものだ。

 Visual Studioでは、従来バージョンにおいてもアップデートリリースを通じて、こうした「モバイルファースト」「クラウドファースト」に対応する機能を追加してきた。最新の「Visual Studio 2015」では、それをさらに押し進め、強化している。

 「クラウドファースト」の部分に着目すると、Visual Studio 2015では「Microsoft Azure」(以下、Azure)を利用した開発を従来以上に効率化するためのいくつかの新機能が追加されている。Visual Studio 2015のリリースと同時に公開された「Azure SDK 2.7」との組み合わせにより、両者を緊密に統合した開発環境が構築できるという。

 Visual Studio 2015では、まず「Microsoftアカウント」を利用し、Visual Studio内からAzureに対してシングルサインオンが可能だ。さらに、Azureのサブスクリプションが登録されている複数のアカウントを、Visual Studio上から任意に切り替えて利用できるようになっている。


クラウドエクスプローラー

 Azureにサインオンした状態では、新たに追加された「クラウドエクスプローラー」を通じて、Azure上にあるサービスにリモートアクセスできる。従来のバージョンでも「サーバーエクスプローラー」を通じて、Azureにアクセスすることはできたが、新しい「クラウドエクスプローラー」では、Azure上のリソースがタイプごと(データベースサーバー、データベース、Webサイトといったエンティティごと)にカテゴライズされ、より利用しやすくなっている。

 クラウドエクスプローラーから、Azure上の仮想マシンやWebサイトに直接アタッチし「リモートデバッグ」を行うことも可能だ。アタッチ先は、サインオンを行っているアカウントのサブスクリプションに含まれているものであれば、どのリージョンに存在するものでも選択できる。条件に基づいたフィルタリングや絞り込みを行って、求めているリソースを迅速に探し出すことも可能となっている。

テレメトリ情報を容易に取得できる「Application Insights」

 また、Visual Studio 2015では、バックエンドとしてAzureを利用することを前提として、すでにAzure上に用意されている高度なサービスの活用も容易になっている。

 そうしたサービスの一つが「Visual Studio Application Insights」である。Application Insightsは、Visual Studioで開発するアプリに、クライアントに関するさまざまな情報(テレメトリ情報)を取得するためのモジュールを組み込み、そこから収集したデータを分析するための環境だ。ここで得られた情報は、Webアプリやモバイルアプリにおける問題の検出や、クラッシュの診断、ユーザーの利用環境、アプリ使用状況の追跡などに利用でき、アプリの品質を継続的に高めていく取り組みにおいて有効に活用できる。

 Application Insightsは、Visual Studio 2013の時から提供されており、現在、有料のパブリックプレビュー段階にある。Visual Studio 2015では、アプリケーションへのApplication Insightsの組み込みが「プロジェクト生成」画面から、従来よりも容易に行えるようになっているという。


Application Insightsの組み込み

 相澤氏は「Application Insightsは、現在パブリックプレビューの段階ではあるものの、正規価格の半額での有料提供を行っており、今後時期を整えて正式リリースになる見込みです。Application Insightsのような、すでに稼働している有用なパーツを組み合わせてさらに価値の高いアプリケーションを作っていくという作業が、Visual Studio 2015とAzureによって、より容易に行えるようになっています」と話す。

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