IoTデータの「出会い系サイト」? EverySenseが目指すもの:2015年秋にサービス提供開始
EverySenseは、2015年秋に、IoTデータのマーケットプレイスサービスを提供開始する。どのようなデータを対象とし、どんなビジネスモデルを構築しようとしているのか。同社CEOの、真野浩氏に聞いた。
2015年8月下旬、クラウドファンディングサイト「Makuake」で、小型環境センサーのファンディングプロジェクトが始まった。米国の著名工業デザイン企業にデザインを依頼したといい、温度、気圧、湿度、照度、紫外線、加速度センサーなどが機能ブロックとして用意されていて、無線LANでデータをアップロードできる。別途、新たなセンサーデバイスをつくるための、開発ボードもある。
だが、このプロジェクトを立ち上げた企業、EverySenseの最終的な目的は、センサーデバイスの販売ではない。IoT(Internet of Things)データのマーケットプレイスだという。同社は2015年秋に、サービスを提供開始する予定だ。
EverySense CEOの真野浩氏は、同社がやろうとしているのは「分かりやすく言えば出会い系サイト」だと話す。誤解されるきらいがなくはない表現だが、自らはデータを仕入れて売るのではなく、不特定多数の間のやり取りの仲介役に徹するということだ。このため、同社はデータを保存することがない。扱うのは基本的にはリアルタイムデータ、およびキャッシュされたデータだ。データの価値についても同社は関与しない。データ利用者が提示する価値に、データ提供者が同意すれば、自らのデータを提供することになる。価値は、ポイント交換サイト「PointExchange」のポイントで支払われる。EverySenseは、データ利用者から手数料を得る。
より具体的には次のようになる。データ提供者は、自らを登録した後、自分の提供したい情報項目、提供頻度などを登録する。一方、データ利用者は、情報項目や情報の粒度、所在地などの条件でEverySenseサービスサイトを検索する。利用することにすると、この条件に該当する全てのデータ提供者に対し、提供ポイント数を含めたオーダーが自動送信される。データ提供者がオーダーを承認すれば、この利用者へのデータ提供が開始する。時系列的な情報の蓄積が必要なら、データ利用者が自らサービス外で蓄積する。データ提供者からの情報は、本人特定ができないように、EverySenseが抽象化するという。
IoTというと、データの構造・形式、データ交換プロトコルをどうするのかと思ってしまうが、テキストにパースできるデータ形式で、データと関連付けられる情報項目と単位をサービス側が把握できればいいという。「このジャンルの情報にはこの項目が必須」ということもない。
では、IoTデータといっても幅広いが、EverySenseはどのようなデータを対象としているのか。サービス開始当初からやり取りされるものとして、真野氏が期待することの一つは、スマホアプリからの情報。EverySenseは「EveryPost」というアプリを提供する予定で、一般スマホユーザーは、自分のスマホが取得している加速度センサー、GPS/位置情報などのデータを、このアプリ経由で選択的に提供、見返りにポイントを手に入れる機会を得ることになる。冒頭で触れたセンサーデバイスの「EveryStamp」の情報もある。
もともと、真野氏がこのサービスを発案したきっかけは、ネットにつながり情報をメーカーに送る製品が増えているが、なぜユーザーは無条件でメーカーに情報を提供しなければならないのか、情報のオーナーシップ(所有権)は誰にあるのかと考えたことにあるという。
従って、ウエアラブルデバイスなどの製品を提供するメーカーに、EverySenseのサービスを活用してほしいという。一方、家庭における電力消費量など、特定の情報が欲しい企業が、そのデータを取得する機器を開発し、安価に配るとともに、ポイントの提供によって情報提供をうながすといったシナリオも考えられる。
もちろん、このサービスにおけるデータ提供者は、一般消費者に限定されない。企業が自社の工場における各種センサーのデータを提供することも考えられるし、農業センサーデータを提供することもあり得る。農業センサーデータを、個々の事業オーナーのみが利用するよりも、多様な地域の、多数の事業者のデータが集まれば、ノウハウを得やすいのではないかと、真野氏はいう。他社のクラウドサービスからのデータの取り込みにも対応するという。
EverySenseサービスは、単一の企業が各地に設置したデジタルサイネージなどのデバイスからのデータを自らモニタリングするなど、事実上クローズドな利用も可能だ。だが、複数の事業者がデータを共有する、さらには不特定多数の事業者がニーズに応じて情報を活用し合うためのプラットフォームとして使われるとき、その存在価値が高まるだろうと、真野氏は話している。
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