実業務でも使えるか? 今アツいDocker運用管理製品/サービス15選まとめ:Docker運用管理製品/サービス大全(1)(2/2 ページ)
数多く台頭しているDockerの運用管理に関する製品/サービスの特長、使い方を徹底解説する特集。初回は、紹介するDocker運用管理製品/サービスの概要と比較表を提示する。
各Docker運用管理製品/サービス一覧の概要と特長
Docker Machine、Docker Swarm、Docker Compose(Docker M&S&C)
Docker社が提供する機能拡張のオーケストレーションツール群です。
それぞれ下記の機能を担います。詳細は、今後の特集で解説しますが、2014年12月発表時の記事「Dockerが新機能・サービスを続々発表、主要クラウドプレーヤーとの距離も緊密に」も参照してください。
- Docker Machine:Dockerのホスト環境を構築
- Docker Swarm:複数のDockerホストのグルーピング機能を提供
- Docker Compose:コンテナーの多重化機能を提供
これらを組み合わせて使うことで、複数ホスト間でコンテナークラスターを構築できます。Docker社が提供するものなので、構築、設定は容易で想定ターゲットはITアーキテクトといえるでしょう。
Docker Kitematic
Docker社が提供するMacやWindows環境にDockerコンテナーを構築、管理するためのGUIツールです。想定ターゲットは開発者/プログラマーといえるでしょう。
Amazon EC2 Container Service(ECS)
AWSのサービスの一つでDockerオーケストレーションツールを提供するSaaSです。AWSの各種サービスを利用しながら、Docker環境の構築、運用を一貫して行えます。
SaaSであるため、利用が容易で小規模環境でも利用可能ですが、複雑なコンテナー構成にも対応し、オートスケールも可能なので大規模環境でも利用可能です。オートスケールや監視については、AWSの他のサービスで設定する必要があります。
想定ターゲットはITアーキテクトであり、AWS Elastic Beanstalkより汎用的な構成を組む場合に向いています。
AWS Elastic Beanstalk
AWSのサービスの一つで、Javaや.NET、PHP、Node.js、Python、Ruby、Go、そしてDockerを使用して開発されたWebアプリやサービスを、WebサーバーでデプロイおよびスケーリングするためのPaaSです。AWSの各種サービスを利用しながら、Docker環境の構築、運用を一貫して行えます。
想定ターゲットは開発者/プログラマーであり、ECSと比べるとDockerコンテナーの多重化機能や複数のタスクを1インスタンス上で動かす機能がないので、単一アプリを負荷分散する構成となるでしょう。
Google Container Engine(略称:GKE。Google Compute Engineの略称がGCEなので)
グーグルが提供するGCPのサービスの一つでDockerオーケストレーションツールのSaaSです。GCPの各種サービスを利用しながら、Docker環境の構築、運用を一貫して行います。
SaaSであるため、利用が容易で小規模環境でも利用可能ですが、複雑なコンテナー構成に対応しています。GCPの他のサービスで設定する必要がある機能もあります。
想定ターゲットはITアーキテクトといえるでしょう。
Kubernetes
グーグルが提供するDockerコンテナー管理のオープンソースフレームワーク。GKEで利用されている機能をOSS(オープンソースソフトウエア)で公開したものです。
下記、flannelを使うことによって複数ホスト間のDockerクラスター環境を構築できます。インストール方法や設定が複雑でバージョン間の違いが大きいため、構築するのに手間が掛かります。
想定ターゲットはITアーキテクトであり、GKEのコアコンポーネント以外にも単独でプライベートクラウドを組み上げる場合でも利用できます。
flannel
複数ホスト間でのDocker Engine(Dockerの本体)の連携を行うためのネットワークツールです。オープンソースプロジェクトであるCoreOSが提供しています。想定ターゲットはITアーキテクトであり、単独で利用するには、やや困難なツールといえるでしょう。
cAdvisor
グーグルが主体で開発されているDockerホストとコンテナーを監視するOSSツール。ローカルのDockerホストとコンテナーのみが監視対象です。
想定ターゲットはITアーキテクト、開発者/プログラマーといえるでしょう。
Shipyard
Dockerコンテナーを監視・管理するOSSツールです。リモートのDockerコンテナーを監視できます。認証機能やコンテナーのクラスタリング機能があり、Docker運用環境の整備に向いています。
想定ターゲットはITアーキテクト、開発者/プログラマーといえるでしょう。
Seagull
Dockerコンテナーを監視・管理するOSSツールです。Shipyard同様、リモートのDockerコンテナーを監視できます。SeagullはShipyardとは違いローカルのDocker Engineにリモートアクセス設定を行わずに管理することが可能で、コンテナー一覧のフィルタリング機能を備えています。
想定ターゲットはITアーキテクト、開発者/プログラマーといえるでしょう。
Panamax
CenturyLink社が提供する、Dockerコンテナーを監視・管理するOSSツールです。Shipyard同様、リモートのDockerコンテナーを監視できます。PanamaxはShipyardとは違いコンテナーのグルーピング機能(単一ホスト)を備え、GUIが使いやすいという特長があります。
想定ターゲットはITアーキテクト、開発者/プログラマーといえるでしょう。
Datadog
Datadog社が提供するシステム監視機能のSaaSで、Dockerも対象としています。監視対象のDockerホストにエージェント、エージェントコンテナーを配置して使います。
類似サービスとして下記New Relicがありますが、Datadogがコンテナーのメモリのページフォルトなどの詳細な監視ができるのに対して、New Relicは使用メモリのみ監視します。また、Datadogがコンテナーのディスクを監視できるのに対して、New Relicはディスクの監視ができません。
想定ターゲットはITアーキテクト、開発者/プログラマーといえるでしょう。
New Relic
New Relic社が提供するシステム監視機能のSaaSで、Dockerも対象としています。監視対象のDockerホストにエージェントを配置して使います。Datadogと異なり、エージェントのインストールのみでホストとDockerコンテナーの両方の監視が可能です。
想定ターゲットはITアーキテクト、開発者/プログラマーといえるでしょう。
各ツールの位置付け
最後に各ツールの位置付けを図に整理します。
次回からは、一覧で紹介した各製品/サービスについて、機能概要や使い方をもう少し詳細に紹介していきますので、お楽しみに。
筆者紹介
澤井健
富山県出身。株式会社NTTデータに入社後、PostgresForestやHinemosの開発、保守、導入支援に携わり、今はHinemosのクラウドへの普及展開を進めている。休日は仕事を離れ、宝塚観劇のため日比谷や兵庫に訪れるなど趣味を満喫している。
- 執筆履歴
Software Design plusシリーズ『Hinemos 統合管理[実践]入門』(共著:技術評論社)
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