テラスカイが設立するSAPクラウドSI企業、ビーエックスが目指すもの:「SAPの構築・運用の世界に風穴を」
テラスカイは2016年2月15日、SAPのクラウド上への移行を行う新会社、ビーエックスの設立を発表した。クラウド専業として、SAPのコスト効率の高いクラウドへの移行と運用サポートを提供するのが、新会社の第一の目的。さらにSAPを、疎結合的なクラウドERPに進化させていくことを狙っている。
テラスカイは2016年2月15日、SAPのクラウド上への移行を行う新会社、ビーエックスを3月1日付けで設立すると発表した。SAPはクラウドへの移行が進みつつあるにもかかわらず、インテグレーションやサポートのサービスを提供する企業は、従来のオンプレミス型のビジネスモデルを引きずっているため、料金が高く、構築には時間がかかるケースも多い。ここに焦点を当て、クラウド専業として、SAPのコスト効率の高いクラウドへの移行と運用サポートを提供するのが、新会社の第一の目的だという。このため、運用支援では、従量料金などのクラウド的な料金体系を取り入れていくとする。
新会社は20人程度でスタートする。ビーエックスの副社長兼CTOには、SAPのクラウド基盤構築および移行の経験が豊富な広木太氏が就任。新会社の社長も務めるテラスカイ代表取締役社長の佐藤秀哉氏によると、SAPをAmazon Web Services(AWS)へ移行した実稼働事例は、日本国内で四十数件あり、新会社に所属するスタッフはそのうち約半数に関わった実績を持つという。
「顧客にわくわくしてもらい、インフラエンジニアがわくわくできる会社にしたい」と広木氏は話す。
初年度の売り上げ目標は、1.5億円としているが「すでに十数件の引き合いがある」(佐藤氏)。少なくとも当初は、案件の獲得よりも、案件に対応しきれないことのほうが心配だという。
新会社はインフラに特化、さらにマルチクラウド連携を目指す
「単一商品として最大の市場を形成しているSAPのビジネスへの、テラスカイらしい参入のしかたを、以前から考えてきた」と佐藤氏はいう。結果として、大手システムインテグレーターやコンサルティング企業が注力しているアプリケーションレベルの設計や開発ではなく、インフラレベルのクラウド移行および運用管理に特化することにしたという。
具体的にはSAPおよびS/4 HANAのクラウド移行、運用自動化ツールの提供、24時間年中無休の運用サポート、SAPのマルチクラウド/他アプリケーション連携の4つを主業務とする。移行先のクラウドとしてはAWSを主とし、SAP HANA Enterprise CloudやMicrosoft Azureなども利用していくという。
これらに関しては、テラスカイのグループ企業のリソースを活用していく。サーバーワークスのAWS運用自動化ツール「Cloud Automator」では、SAPデータのバックアップやワークロードのスケールアウトに対応する拡張を進める。運用サポートサービスは、スカイ365を通じて提供する。また、テラスカイのデータ連携サービス「SkyOnDemand」の活用を進める。
ビーエックスでは、国内のSAP導入企業約2000社のうち、約1000社が2020年までに基盤を刷新し、そのうち約半数に当たる500社がクラウドに移行すると予測する。この約半数を獲得していきたいという。
ビーエックスのビジネスは、一度のクラウド移行に留まらないと、佐藤氏は説明している。移行後の運用サポートは長期にわたるビジネスであり、同社にとって重要な収益源となる。クラウドサービスで今後も続く機能強化を、どう取り入れていくかについて、顧客にアドバイスできるところにも、同社の特色があるという。
究極的に同社が目指すのは、「ポストモダンERP」。SAPをSalesforceなど他のクラウドサービス上のアプリケーションと疎結合的に連携させた、新しい業務システムの構築を支援していきたいとしている。
佐藤氏は、当初こそ既存の大手ITベンダーをプライムコントラクターとする案件が多いかもしれないが、対等の立場でビジネスをしていくといい、その後はビーエックスがプライムとなるケースも増えていくだろうと話している。
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