「2020年のアプリ開発環境の予想図」から見えてくるもの:業務アプリInsider 読者調査レポート(2/2 ページ)
2016年の技術トレンドと業務アプリ開発について2016年3月に実施したアンケートの調査結果を紹介する。
2020年のアプリ開発状況
Q. あなたは2020年に、主にどのようなアプリケーションを開発していると思いますか?
「新規アプリを開発している」が34.2%、「既存アプリの保守・拡張を続けている」が18.2%、「既存アプリのリプレースを行っている」が16.5%となっている。既存アプリに関連する2つの項目の合計が34.7%と、新規アプリ開発の34.2%とほぼ同じになる。極めて近い将来の話でもあるため、既存アプリに関連する作業はやはり残るのだろうが、その一方で、新規アプリ開発あるいは既存アプリのリプレースが行われることで、今とは異なる種類のアプリが生まれている可能性もある。
前ページで見た課題と関連して興味深いのは次の2つの調査結果だ。
Q. 2020年のアプリケーション開発環境について、あなたの回りで現状から変化があると思われる項目をいくつでもお選びください。
「特に変化はないと思う」がわずか10.5%。9割の人は何らかの形で2020年には開発環境に変化が訪れると予想している。開発ツールに絞って、より詳細な項目について調査をした結果を、上で見た現在使用している開発ツールについての調査結果と比較したものが次だ。
Q. あなた(のチーム)が2020年に使用していると思われる開発ツールを、いくつでもお選びください。
「テスト自動化ツール」(現在:13.5%、2020年:36.4%)と「クラウドサービス」(現在:13.9%、2020年:32.9%)の伸びが圧倒的だ。先で見た課題である「開発期間と開発コストの削減」に即効性がある技術が2020年には使われるようになっているというのが、開発者の予想(であり期待)である。
加えて「仮想化ツール」(現在:15.2%、2020年:26.8%)も伸びている。また、絶対的な数値こそ若干低いが「コンテナー管理ツール」(現在:3.1%、2020年:14.0%)も大きく数値が変わっているところだ。これらも、開発期間とコストの削減に大いに貢献する技術といえる。
つまり、開発者の多くは自分たちを取り巻く課題と、それを解決するための方策についても把握している。後はそれをどうやって開発の現場へと取り込んでいくのか。そのためにはマイクロソフトをはじめとするベンダーがどうかじ取りをしていくのか、開発者自身が現場をどう変えていくのか、そして本フォーラムなどのメディアがそれをどうサポートしていくのか。こういったことがポイントとなるだろう。
その他に気になる点としては、統合開発環境の数値だ。「Visual Studio」は現在48.4%なのが2020年には43.4%に減少すると予想されているのに対して、「その他の統合開発環境」は現在42.6%が2020年には47.4%になると予想されている。2020年にはVSではなく他の統合開発環境を使っていると予想している開発者が多いのだ。.NET言語ではなく、JavaScriptやHTML5、これらと使いやすいツール(もしかしたら、高機能な統合開発環境ではなく、Visual Studio CodeやSublime Textなどのエディタと各種のツール類)を組み合わせて、Windows以外のプラットフォームで開発を行うということも想定されているのかもしれない。
2020年のアプリ開発について読者の皆さんからいただいたコメントをまとめたものを以下に示す。
「ツールによる自動化」「アジャイルな開発スタイル」「クラウド/Web/モバイル」「ハイブリッドアプリ」といったまとめ方が印象的だ。これらは恐らく現在の開発者を取り巻く課題を解決するためのポイントでもあるだろう。効率よくさまざまなプラットフォームに対応しながら、プロダクトをリリースしていくにはどうすればよいか。開発者はそうした感覚を持って2020年のアプリ開発を予想したのだと思う。
ただ、それだけではなく、「人間系」をどう改善するのか、さらに現在でも大きな流れを作り出そうとしている「IoTや機械学習」など新たな技術についても開発者の目が向いていることが分かる。
では最後に業務アプリInsiderにいただいたフィードバックをまとめよう。
『@IT 業務アプリInsider』フィードバック
Q. あなたが今後「@IT 業務アプリInsider」で読みたい記事内容があれば、いくつでもお選びください。
「JavaScriptによるクロスプラットフォームアプリ開発」(41.2%)と「HTML5プログラミング再入門」(40.7%)がダントツであり、少し離れて「オープンソース活用の基礎知識」(34.5%)と「ノンプログラミングツールの紹介記事」(31.0%)と「JavaによるWeb業務アプリ開発入門」(31.0%)が続く。
マイクロソフト技術よりもWeb標準技術、OSSに関する情報への需要が高まりつつあるのが印象的だ(そうした傾向は、本稿でもこれまでに見てきた調査結果の中から浮かび上がってきていたはずだ)。マイクロソフト自身もそうなっているが、開発者の目線も今では「Web標準技術」「オープンソースソフトウェア」へと向かっていることがあぶり出されたのが今回の調査だといえるかもしれない。
「JavaScriptによるクロスプラットフォームアプリ開発」に対して、「Xamarinによるクロスプラットフォームアプリ開発」は思ったよりも数値が低く、14.2%にとどまっているのが象徴的だ。ただし、アンケート期間が終了した後、Build 2016でXamarinがVSに無償で組み込まれることが発表された。Xamarinはコスト面でのハードルが高かったことを考えると、今後はXamarinにも大きな注目が集まる可能性は高い。
本フォーラムではこの結果を基に、読者の皆さんの役に立つ記事を公開できるようにしていきたいと思う。
今回のアンケートにご協力いただいた皆さんに感謝したい。
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