「2020年のアプリ開発環境の予想図」から見えてくるもの:業務アプリInsider 読者調査レポート(1/2 ページ)
2016年の技術トレンドと業務アプリ開発について2016年3月に実施したアンケートの調査結果を紹介する。
powered by Insider.NET
* 本稿では、「アプリケーション」は「アプリ」と略す。
@ITでは、2016年3月3日(木)〜3月13日(日)の期間、Windowsベースの業務アプリ開発に携る@IT読者を対象に、Web上での自記式アンケートによる読者調査を行った(調査実施・グラフ作成:アイティメディア株式会社。有効回答数は232件)。
本稿は、その調査結果をグラフ化し、簡単な説明と考察を付記したものである。
現在の業務アプリ開発状況
まずは読者が現在、どのような種類の業務アプリの開発に携わっているか、そのアプリがどんなデバイス/OS上で動作しているのか、使われている開発言語が何かについてまとめよう。
開発中の業務アプリの種別
Q. あなたは現在主にどのような種類の業務アプリケーション開発にかかわっていますか? もっともあてはまるものを、ひとつだけお選びください。
前回の調査とは微妙にカテゴライズが変化しているが、基幹系アプリと業務支援系アプリで全体の約半分という傾向に変わりはない。
前回は「グループウェアなどの情報系アプリ」が9.6%だったが、今回は6.5%に減少しているのが特徴的といえば特徴的だ。これは社内での情報共有の在り方が変化していることを示唆するものかもしれない。例えば、SlackなどのクローズドなSNS的ツールを利用することで簡単な社内のコミュニケーションなら十分ということが考えられる(が、そこまで特徴的な数値が出たといえるか微妙なところではあるが)。
業務アプリを利用するクライアント端末の種類
これらの業務アプリが動作するデバイス/OSについての調査結果は次の通りだ。
Q. そのアプリケーションは、どのようなデバイスで利用されていますか? あてはまるものを、いくつでもお選びください。
「Windows PC」が圧倒的だ(93.1%)。前回調査と比較すると、スマートデバイスについては「スマートフォン(iPhone)」が16.6%→19.0%、「iPad」が13.6%→15.6%、「スマートフォン(Android)」が16.3%→16.5%、「Androidタブレット」が12.9%→12.6%となっている。iOSデバイスについては上昇傾向があるが、Androidデバイスについては横ばいだ。業務アプリの世界へのiOSデバイスの浸透は着々と進みつつあると見てよいだろう。
さらに「Mac(Mac OS/OS X)」が前回の10.2%から14.7%とおおよそ1.5倍の数値になっている。Webベースの業務アプリ(あるいはExpressなどのWeb技術を利用したクロスプラットフォームアプリ)が普及を始めているのだとしたら、この傾向(そして、次に見る開発言語の調査結果)は当面続くかもしれない。
なお、今回はWindowsのバージョンについての調査は行われていないため、Windows 10がどの程度広まったかについては不明だ。
開発言語と開発ツールの利用状況
次にアプリ開発に使用している言語とツールについての調査結果を見てみよう。
Q. そのアプリケーション開発に使用している言語を、いくつでもお選びください。
前回調査と比較すると、少しビックリする。「Java」は33.7%→39.7%、「JavaScript」が29.3%→34.1%と大きく伸びているのに対して、「Visual Basic(.NET)」(以下、VB)は37.1%→29.3%、C#が26.2%→24.5%と数値を落としているのだ。先に見たアプリを実行するデバイスとしてMacが増えていることとも関連して、業務アプリ開発の世界におけるマイクロソフトテクノロジーの影響力が少しずつ減少していると捉えるのは少し行きすぎた見方だろうか(もちろん、マイクロソフトはそうしたことを把握した上で、.NET以外の言語のサポートを強化したり、自らがオープンソースの世界に飛び込もうとしたりしているのだろう)。
ちなみに、VB6は前回調査時点で21.8%だったのが、今回は11.8%となっている。VB6アプリのメンテナンスが収束しつつあることがうかがえる。
Q. そのアプリケーション開発で使用しているツールを、いくつでもお選びください。
開発ツールについては「Visual Studio」(以下、VS)が強い(48.4%)。本フォーラムの読者層を考えればこれは当然だろう。一方、「その他の統合開発環境」の42.6%というのは、上記で見たJava開発者層が使っているものと思われる。
最近では、こうした統合開発環境には何らかのバージョン管理システムとの統合機能が搭載されているのが一般的であることから「Gitなどのバージョン管理ツール」の数値が30.5%と高いものになっているのだろう。
それ以外は「Redmineなどのプロジェクト管理ツール」が19.7%、「JenkinsなどのCIツール」が14.3%、「AWS・Azureなどのクラウドサービス」が13.9%などとあまり導入は進んでいない。次で見る課題と関連するが、こうした技術やツールをどう開発の現場に取り込んでいくかが、これからのアプリ開発における重要ポイントとなると思われる。
現在の業務アプリケーション開発の課題
Q. そのアプリケーションの開発や運用で、あなたが感じている課題があれば、いくつでもお選びください。
前回調査と比べると「アプリ配布や更新などの運用管理工数の削減」(30.6%→34.8%)と「スマートフォンなどPC以外の様々な端末への対応」(32.7%→27.0%)の順位が入れ替わった以外は、傾向は変わっていない。ただし、数値を見ると「開発期間や開発コストの削減」が53.4%から61.3%に大きく増加している。前回調査でもこの項目は39.2%から53.4%へと急増していることを考えると、年々、これが開発者にとって重要な課題となっていることが分かる。その一方で、以下は現在のアプリ開発の方法論についての(ざっくりとした)調査結果だ。
Q. そのアプリケーションの開発方法論は、次のどれにあてはまりますか?
こうして見ると、現在の開発者は従来のウオーターフォール的な開発を行う一方で、開発期間と開発コストの削減を求められていると読める。そして、先に見た「使用している開発ツール」の調査結果からは、そのために必要なツールや環境の導入が進んでいないこともうかがえる。これを踏まえて、次ページでは2020年の業務アプリ開発についての調査結果を見てみよう。開発者自身は、こうした状況と、そのためにどういった変化が必要かを理解していることが分かる。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.