Cisco HyperFlexは、第二世代のハイパーコンバージドインフラ製品である:HCIはもっともっと普及する
機動的なITインフラの実現を目的として、「ハイパーコンバージドインフラ」製品の導入を考える企業は明らかに増えてきた。だが、真剣に検討したものの、導入にまで至らないケースも多い。理由は既存のハイパーコンバージドインフラ製品が、ユーザー企業の求めるものに対してミスマッチになっていることにある。
「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」が注目されるようになってきた。ご存知の方も多いと思うが、これは、ハードウェア、ソフトウェアを問わず、組織のITインフラを構成する要素をパッケージ化し、構築と運用を迅速で容易なものにする「コンバージドインフラ」(統合インフラ)の一種だ。HCIでは専用ストレージ装置を使わず、ハードウェアとしてはサーバ機のみを使っているため、「ハイパー(超)」がつく。
HCIが注目されるのには理由がある。「簡略化と自動化による、迅速でシンプルな導入・構築・運用」という統合インフラ製品のコンセプトを、さらに推し進める有効な選択肢となるからだ。専用ストレージ装置の代わりに、サーバ機に内蔵の記憶媒体を利用することで、物理的な運用管理の対象はサーバ機のみになる。設定にしても、運用にしても、サポートにしても、サーバとストレージが完全に一体化したものとして扱える。統合インフラ製品を、「高度な安定性が要求されるミッションクリティカルな業務システムに至るまで適用でき、その運用を近代化できるもの」と表現するなら、ハイパーコンバージドインフラは、さらに機動的なITを求める組織および用途に適しているといえる。
HCIのメリットは明確であり、認知度も高まっている。だが、実導入例が爆発的に増えているとはいえないのが現状だ。その背景には、HCIの第一世代製品に見られる、ユーザーニーズとのミスマッチがある。これを解消できれば、HCIの普及は加速する可能性がある。
第一世代製品では、1. サーバとストレージは統合されたものの、ネットワークが考慮されていないため、簡略化と自動化が十分でない、2.搭載するストレージソフトウェアが、企業における運用に適した機能および性能を満たしていない、3.ハードウェア構成の選択肢が限定的、4.閉じた世界を形成する傾向にあり、企業データセンター全体やパブリッククラウドを含めた統合的なITインフラ運用が考えられていない、といった点で、企業における実運用には利用しにくいと判断せざるを得ないものが多い。このため、「HCIを導入したいが、導入に至らない」というケースが増えてくる。
そこで、第一世代HCIの欠点をカバーする、第二世代HCI製品として、シスコシステムズが投入したのが、インテルXeon®プロセッサーを搭載した「Cisco HyperFlexシステム(以下、Cisco HyperFlex)」だ。HCIとしては後発という言い方ができなくはないが、シスコが7年前より、Cisco Unified Computing System(以下、Cisco UCS)で目指してきたものは、HCIと大きく重なっており、さらにHCIを超えている。Cisco HyperFlexは、これを製品として具体化したものだ。
2009年に登場したインテルXeon®プロセッサーを搭載したCisco UCSは、サーバとネットワークを統合し、これに統合管理ツールを与えた。同製品における設定は抽象化され、アプリケーションや用途に基づくニーズを反映できる。今回シスコが投入したCisco HyperFlexでは、加えてストレージ、ハイパーバイザ/仮想化ソフトウェアを統合。ITインフラ全体の構築・運用を簡略化・自動化し、さらにアプリケーションに応じて柔軟な対応ができるプラットフォームに進化した。
Cisco HyperFlexでは、ストレージソフトウェアの「Cisco HXデータプラットフォーム」および仮想化ソフトウェアの「VMware vSphere」が工場でプリインストールされたCisco UCSサーバと、ネットワークを統合する「シスコファブリックインターコネクト」というスイッチがシステムとして提供される。
そして、機材が到着してから1時間以内に、サーバ、ストレージだけでなく、ネットワークを含めた初期設定・構成を済ませ、仮想化環境の利用を開始できる。全ての構成要素に関する設定は、Cisco UCSの「サービスプロファイル」という集中設定の仕組みにより、統合的に行える。Cisco HyperFlexでは、事前設定されたサービスプロファイルを適用しさえすれば、あとは仮想化クラスタやデータストアの設定を済ませるだけで、仮想化環境を運用開始できる。
HCI第二世代のCisco HyperFlexがもたらす違いとは
では、前述のHCI第一世代に見られる欠点を、HCI第二世代であるCisco HyperFlexは、どうカバーしているのだろうか。
第一世代の欠点1:サーバとストレージのみで、ネットワークが考慮されていない
HCIの導入・拡張では、ネットワークが思わぬ落とし穴になる可能性がある。だがCisco UCSではネットワークを統合済みだ。単一の接続を論理的に分割できるため、ネットワークケーブル配線はシンプル。ネットワーク関連設定はサーバ設定と同一の仕組みで一括して行え、設定変更も柔軟に行える。というより、大部分のネットワーク関連設定が済んだ状態で届くので、ラッキング、ケーブリング、起動というレベルで個別設定は必要なく、初期導入作業でやらなければならないことは少ない。サーバを追加する場合も、人手はほとんどかからず、最適なネットワークを瞬時に構成できる。
第一世代の欠点2:ストレージソフトウェアが、企業における運用に適していない
HCIでは専用ストレージ装置の代わりに、サーバ内蔵のSSDやハードディスクドライブ(HDD)を記憶媒体として用い、ストレージソフトウェアを動かす。このため、ストレージソフトウェアが、HCI全体の性能に大きな影響を及ぼす。また、重複除外をはじめとする各種データ管理機能の有無が、HCI全体のコスト効率および用途を左右することになる。
Cisco HyperFlexが搭載する「Cisco HXデータプラットフォーム」は、ハイパーコンバージドインフラのために開発されたストレージソフトウェア。同ソフトウェアは、ユニークな完全分散型アーキテクチャを備えていて、Cisco HyperFlexを構成する全サーバのSSD/HDDにデータを分散配置して、安定した高い性能を発揮するとともに、サーバの障害が発生しても他のサーバで即座に代替し、復旧できる機能を提供している。ノードの追加によるクラスタの拡張も、自動的なデータ再配置により複雑な作業なしに行える。また、インラインの重複除外/データ圧縮機能、高速なクローン、スナップショット、複製といった機能を備えているため、ハイパーコンバージドインフラだからといって妥協する必要は全くない。
第一世代の欠点3:ハードウェア構成の選択肢が限定的
HCI第一世代では、限られたサーバ構成で、ストレージ容量とプロセッサ能力の両方同時強化となる構成しか提供されないなど、サーバの選択肢が限定されているケースが見られる。「積み木のようなイメージで利用してほしい」というコンセプトは分かるが、仮想マシンの構成によって「処理能力だけがもう少し欲しい」というときに追加サーバを1台購入しなければならず、追加サーバに搭載されているストレージ容量が無駄になるといったことでは利用しにくい。硬直的なハードウェア構成のせいで、組織が想定するアプリケーションの運用には「帯に短し、たすきに長し」になりかねない。
Cisco HyperFlexでは、1Uあるいは2Uのラックマウントサーバ複数台を使って、クラスタを構成できる。各サーバに搭載するストレージ容量も、サーバCPUおよびメモリ搭載量と同様、選択が可能だ。また、「処理能力だけが欲しい」という場合は、集約度に優れたブレードサーバである「Cisco UCS Bシリーズ」を組み合わせることで、対応ができる。
第一世代の欠点4:運用環境が閉じており、統合的なITインフラ運用が考えられていない
ハイパーコンバージドインフラ製品では、独自の運用管理ツール/運用ポータルを備えていることが多い。「ITを知らない人にも使いやすい、導入・運用ができる」ことだけを目指しているようだ。だが、これは逆効果も生む、そのハイパーコンバージドインフラ製品だけの、「管理のサイロ」ができてしまうのだ。ハイパーコンバージドインフラは利用しているうちに成長する。そして、企業のデータセンターに存在する他のITインフラや、パブリッククラウドとの連携ニーズが生まれるはずだ。そうしたときに対応できないのではもったいない。
Cisco HyperFlexでは、あえて専用の運用管理ツールは搭載していない。ハードウェアは「Cisco UCS Manager」で管理されるが、すでに工場出荷時にHyperFlexの環境に合わせて必要最低限の設定がされており、Cisco HyperFlexからプラグインが提供されるため、IT運用管理者は 通常の運用管理をVMwareの「vCenter」で運用できるようになっている。そのほうが汎用性に優れるからだ。もともと、この2つの運用管理ツールは難しいものではない。逆に、慣れてしまえば高度な機能が活用できるようになるし、既存の同一環境と共通なので、効率的な運用が可能になる。例えば同一データセンター内で、共通のネットワークポリシーを適用するといったことが考えられる。
Cisco HyperFlexは、現在のところVMware vSphereによる仮想化環境の構築・運用しかできない。だがシスコは今後、Hyper-V、KVMといった他の仮想化、話題のコンテナ、さらに非仮想化環境での運用といった選択肢を提供していく予定だ。社内で複数の環境を動かすことも増えてくるだろう。その時に、異なる環境を結び付けるような運用ツールの重要性が認識されるはずだ。
さらに、Cisco HyperFlexでは今後、パブリッククラウドサービスとの連携で、ハイブリッドクラウドを構築・運用できる機能が強化されていく。だが、ユーザーが望むハイブリッドクラウドのあり方は一様でない。社内のデータセンターネットワークを、パブリッククラウドに延伸したいというニーズもあれば、アプリケーションレベルでの連携がしたいといった要望もあるだろう。シスコは今後、Cisco HyperFlexのために、多様なハイブリッドクラウドの選択肢を提供していく。そして、ハイパーコンバージドインフラとパブリッククラウドで、共通のポリシーを適用できるような環境を整備していく。
このように、全体ネットワーク、セキュリティ、クラウドを考慮した上でITインフラとの連携で、世界を広げていけるかどうかが、ハイパーコンバージドインフラ製品の価値を大きく左右すると、シスコは考えている。
ハイパーコンバージドインフラとハイブリッドクラウドの関係
「シャドーIT」の問題が多くの企業で顕在化してきている。ITがビジネスの競争力を大きく左右するようになり、ビジネスの変化により迅速かつ柔軟に追随できるITインフラを求めるあまり、企業のビジネス部門が情報システム部門を経ずにパブリッククラウドを導入するケースが増えてきている。
ビジネス部門が、「機動的なITを手に入れるために、パブリッククラウドしか選択肢がない」と考えているとすれば残念な状況だ。ハイパーコンバージドインフラをうまく活用すれば、選択肢を大きく広げることができる。社内とパブリッククラウドを臨機応変に組み合わせ、柔軟でかつ、ガバナンスの効いたIT利用が実現できるはずだ。
第二世代の登場で、導入しやすくなってきたハイパーコンバージドインフラを、ぜひ生かして、社内ITのスマート化を進めていただきたい。
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