日本の社会インフラを支えるシステムに、SPARC/SolarisやOracle Databaseがどう貢献しているのですか?:約20万人が使うプライベートクラウド基盤を構築した東芝さまに聞きました
SPARC/Solarisの“新発見”を紹介する「SPARC/Solaris World」。今回は、サン・マイクロシステムズの創成期からSPARC/Solarisを扱っていただき、高性能と高い信頼性・可用性・拡張性を実現するサーバーとして「UX7000」シリーズでブランド展開されている東芝さまを訪問しました。道路交通やエネルギーなどの社会インフラを支えるシステムを提供してきた東芝さまでは、どのようにSPARC/Solarisを活用し、どのような点がSPARC/Solarisの価値であると考えておられるのでしょうか。
今回は、日本の社会インフラを支える東芝さまに聞きました
こんにちは。日本オラクルの増田佑菜(ますだ ゆうな)です。
今回は、サン・マイクロシステムズの創成期からSPARC/Solarisを扱っていただき、高性能と高い信頼性・可用性・拡張性を実現するサーバーとして「UX7000」シリーズでブランド展開されている東芝さまを訪問しました。
道路交通やエネルギーなどの社会インフラを支えるシステムを提供してきた東芝さまでは、どのようにSPARC/Solarisを活用し、どのような点がSPARC/Solarisの価値であると考えておられるのでしょうか。
日本オラクル 執行役員でクラウド・システム事業を統括する山本 恭典と一緒に、東芝 インダストリアルICTソリューション社 統括技師長の山口晶嗣さまにお話をお聞きしました。
われわれのコンピュータービジネスはSPARC/Solaris抜きには語れない
増田 東芝さまには、サン・マイクロシステムズの創成期からSPARC/Solarisを扱っていただいており、SPARC/Solarisのエキスパートもたくさんいらっしゃるとお聞きしています。どのような点が、SPARC/Solarisにおける東芝さまの強みだと見ていらっしゃいますか。
山口氏 最も重要なのはインストールベースだと考えていて、長年にわたって多くのお客さまに受け入れていただいていることが強みだと思っています。それを支えているのがエンジニアの技術の蓄積です。われわれは、SPARC/Solarisの技術をかなり深い部分まで理解して対応しています。例えば、独自ベンチマークでSPARCのプロセッサ特性を把握し、過去に蓄積したデータと比較してプロセッサの適性を生かしたシステムをお客さまに提案しています。
東芝のコンピュータービジネスは、汎用機の後のオープン化という点においてSPARC/Solaris抜きには語れないと思います。
山本 オラクルは、年間売上の14%となる約6000億円を研究開発に投資し、その多くをハードウェアに費やし、SPARC/Solarisを継続させています。東芝さんの、長い期間お客さまのシステムをしっかりと支えるという姿勢とSPARC/Solarisは合っていると思います。
山口氏 しっかりとしたCPUを作っていると思います。メモリのバンド幅が広いことを高く評価しています。
増田 Linuxマシンと比較して、どのような点がSPARC/Solarisの強みだと思われますか。
山口氏 われわれもオラクルもLinuxを扱っていますし、LinuxにはLinuxの良いところがあると考えていますが、SPARC/SolarisがLinuxマシンと最も大きく違う点は、スケーラビリティではないでしょうか。Linuxはx86アーキテクチャのCPUを使ったシステムが多く、SPARCよりもメモリのバンド幅が狭いため、スケールしづらいと思います。Linuxマシンは、スケールアウトには適していても、スケールアップする企業の基幹系システムには、まだ向いていないと考えています。
だから、われわれは、スケールアップ型の大規模なシステムでSPARC/Solarisを使っているわけです。Oracle Databaseも使っていますから、SPARC M7の「SQL in Silicon」などの新機能は非常に有用だと思います。データベースを開発しているオラクルがSPARC/Solarisを提供するようになり、データベースを高速化できる機能が提供されることは歓迎したいですね。
社会インフラを支える制御系システムにおける「Silicon Secured Memory」の有効性
増田 東芝さまは、SPARC/Solarisを使って、具体的にはどのようなシステムを提供しているのでしょうか。
山口氏 われわれがSPARC/Solarisを採用しているシステムの多くは、ミッションクリティカルなもの、例えば、社会インフラを支えるようなシステムです。道路交通やエネルギー関連、官公庁のシステムなどを手掛けていますが、このようなシステムは、止まってしまうことは許されず、アベイラビリティ(可用性)を確保する必要があります。
山本 もともと「Oracle」はCIAプロジェクトのコードネームに由来する企業名であり、オラクル自身が米国のナショナルセキュリティに強いベンダーです。そういうノウハウを持つ製品群を東芝さんに、インストールベースで提供していただき日本でも展開できれば、日本の公共機関にも貢献できるのではないかと思います。
山口氏 そうですね。われわれは、SPARC/SolarisとOracle Databaseの安定性を信用していますが、その上でアベイラビリティを提供するために、独自にクラスタソフトウェアとして「ClusterPerfect」を提供しています。SPARC/Solaris、Oracle Database、ClusterPerfectの強力な組み合わせでアベイラビリティを実現しているシステムは、長い間安定して稼働しています。
また、2013年2月に、約20万人の東芝グループで利用する基幹システム向けのプライベートクラウド基盤をSPARC/SolarisとClusterPerfectを使って構築しています。グループ各社で個別に構築されサイロ化しているシステムを統合し、運用コスト削減だけではなく、信頼性・可用性と柔軟性・拡張性を両立させる狙いがありました。100を超える基幹システムを15台のSPARCサーバーに集約しています。物理分割から論理分割へ変更することで、リソースの利用率、柔軟性を向上させ、サーバーの運用・保守コストを約半分にし、ラックスペースを約4分の1にすることで、消費電力などのコストを大幅に削減しています。
増田 セキュリティも非常に重要な課題だと思いますが、SPARC M7のセキュリティ機能「Silicon Secured Memory」に対しては、どのように期待されていますか。
山口氏 セキュリティは、さまざまな技術層(レイヤー)で対策が必要だと考えています。CPUにセキュリティ機能が実装され、それを用いてアプリケーションの脆弱(ぜいじゃく)性対策、例えばバッファオーバーフロー攻撃などの対策ができれば、極めて有効な手段だと思います。これまで外部ネットワークから遮断された閉じた環境にあった制御系のシステムも、これからはネットワークに接続されてくるのでセキュリティ対策が必要です。アプリケーションを改変しなくても、CPUやOSレベルで攻撃を防御できるような技術を期待しています。
アプリケーションを改修することなく防御を高めることができれば、アプリケーションの二次開発費用を抑えるというメリットもあると思います。
山本 サイバー攻撃が非常に増えている中で、ハードウェアベースで守れることは非常に画期的だとわれわれも自負していますが、社会インフラを守っている東芝さんから見て、どのように評価していただけますか。
山口氏 IoT時代のセキュリティは、サーバーサイドを守ればよいというものではないので、これらの機能は大歓迎です。東芝でも、センサーやデバイスのチップレベルでのデータ保護に取り組んでいます。われわれは、モノ、人、データ、プロセスがセキュアにつながる環境の実現を目指しています。このために、社会インフラや東芝グループを支えてきたセキュリティ運用ノウハウを体系化して「東芝セキュリティソリューション」(https://www.toshiba.co.jp/cl/sol/security/)としてご提供しています。皆さんに東芝の取り組みを知っていただき、ぜひ活用していただきたいと思っています。
山本 IoT、ビッグデータ、M2M、インダストリアルインターネットといった流れの中で、従来のシステムをどうやってサイバー攻撃から守るかも課題です。今後も、東芝さんと共に、社会インフラを含めたミッションクリティカルなシステムを守ることに取り組んでいきたいですね。
最新のSPARC/Solarisに移行したい要望やパブリッククラウドを使いたい要望には、どう応えるのか
増田 従来のシステムという話が出ましたが、一方で最新のシステムに移行したいと考えているお客さまもいらっしゃると思います。そのようなお客さまに対しては、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。
山口氏 われわれは「プラットフォームマイグレーション」サービスを提供しています。仮想化統合も含めて、最新のSolarisサーバー環境への移行をスムーズに行えるようにマイグレーションセンターがサポートしています。
「Solaris移行支援サービス」では、検討フェーズから移行・試験フェーズまでトータルにサポートして、最適な移行先へマイグレーションできるように支援しています。
増田 最新のシステムを使いたいお客さまは、パブリッククラウドの活用も考えていると思います。UXシリーズを使ったパブリッククラウドの展開なども考えていらっしゃるのでしょうか。
山口氏 クラウドについては、オラクルのパブリッククラウドを利用して、オンプレミスとハイブリッドで使うことを考えています。われわれ自身がSPARC/Solarisを使ってクラウドを運用することは、まだ考えていません。オンプレミスをUX7000シリーズで構築して、パブリッククラウドが必要であれば、積極的にオラクルのクラウド環境を使っていけばいいと思っています。
SoEの時代でもしっかりとしたサーバーとデータベースが必要、Javaの高速化も
増田 では、クラウド活用以外で、SPARC/Solarisを使った今後の展開について、お聞かせください。
山口氏 ビジネスを取り巻く環境の変化が速い現在、エンタープライズのシステムでも、SoR(System of Record)に加えて、SoE(System of Engagement)を取り入れなければならなくなっていると思います。多様なマイクロサービスが必要になって、非常に難しい時代になってきたことを感じています。しかし、しっかり記録を保持しなければならないデータベースの設計も全て変えてしまうような、行き過ぎた“SoE化”をやってしまうことは避けなければならないと考えています。
アプリケーションの作り方が変わっても、きちんとした根幹となるサーバーとデータベースが重要で、その領域でわれわれはSPARC/SolarisとOracle Databaseを使い続けていきたいと考えています。
SoEでは、アプリケーション、例えばJavaの実行性能が課題となりますが、SPARC/Solarisはその点も追求してほしいですね。
山本 SPARCは、「Software in Silicon」の中でSQL処理の高速化やセキュリティ機能を提供していますが、Javaの高速化も実現しようと考えています。Javaはオラクルが権利を持っているソフトウェアなので、SPARC/Solarisで確実にブレークスルーできるようにしていきます。
山口氏 将来的にシステムは劇的に変わるところと、変わらないところがあるでしょう。堅牢さが求められるシステムはなくならないので、われわれがSPARC/Solarisを使っていくことは変わらないと思っています。
山本 グローバルでは、これまでホワイトボックスの集合で運用されてきたシステムがSPARC/Solarisやエンジニアドシステムに置き換えられている傾向があります。コモディティの集合ではコストが見合わなくなってきている中で、日本国内でも東芝さんと共にSPARC/SolarisやSPARCベースのエンジニアドシステムを提供していきたいですね。
増田 ありがとうございました!
※社会インフラを支えるシステムの課題をSPARC/Solarisとクラスタソフトウエアで解決するための手法と東芝のソリューションをまとめたホワイトペーパーはこちらから閲覧できます。ぜひご覧ください。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月30日