エンジニアよ、部品になるな――Go Galaxyな男の運命の拓き方:Go AbekawaのGo Global!〜金本成生編(2/4 ページ)
宇宙葬や人工衛星キット開発など宇宙関連事業を手掛ける「スペースシフト」の金本成生氏。学生時代にIT企業を起業、米国で就職、宇宙事業に進出、とフィールドを広げてきた金本氏に、エンジニアのキャリア構築法を伺った。※金本氏からエンジニアへのメッセージ動画付き
IT業界で蓄えた知見を持って宇宙事業へキャリアチェンジ
阿部川 ずっと、宇宙にかかわる仕事をされてきたのですか?
金本氏 いえ。2009年にスペースシフトを設立するまでは、IT関連のコンサルタントとして15年近く、クライアント企業に入り込んで、業務システムの導入やサイト構築時のベンダー選定などをしていました。
コンサルタントとして活躍したり、事業を大きくしたり、IT業界でキャリアをまっとうするという道もありました。しかし、「自分の仕事」としてできること、一生飽きずにできることは何かと考えたときに子どものころからの夢を思い出し、宇宙事業を始めることにしたのです。
IT出身ですから、宇宙産業とのつながりはないし、宇宙工学を学んでもいないし、衛星が作れるわけでもありません。何から取り掛かればいいのか分からなかったので、宇宙に関するコンテンツを集めたメディアを立ち上げることからスタートしました。
そうするうちに、宇宙業界で活躍されている方とつながりを持つようになって、あることが分かりました。彼らは物は作れる――例えば衛星を作って、打ち上げて、データを衛星から降ろす、ということはできるけれども、それをビジネスにどうつなげたらいいか、海外のお客さんをどうやって見つけるか、などが分からないということが見えてきたのです。
私はIT業界でずっと、国内と海外の企業をつないだり、海外のマーケットの情報を国内に伝えたり、新しい事業の可能性を発掘したり、といったことをしてきました。そこで、同じことを宇宙でもできるのではないかと考え、コンサルティングビジネスを始めたのです。他にも、人工衛星に搭載する機器や部品を共同開発したり、衛星のデータを解析するソフトウェアを開発したりしています。
衛星のデータは、今まで人間が見て「ここに家がある」「川がある」と解釈をしてきました。そうしたデータの解釈を自動化したり、ディープラーニングやマシンラーニングで分析したりするソフトウェアの開発など、まさに宇宙とITが融合する領域にも携わっています。
阿部川 自社を運営する上で、毎日が戦略の練り直しと実行との繰り返しかと思います。仕事をする際に念頭においていることは何ですか?
金本氏 1番は「昨日と同じことをしない」です。
具体的には、以前の失敗を振り返り、同じ状態になっていないかチェックして、常に新鮮な気持ちで仕事に取り組むことです。人に会うときも、「何かこちらから与えられるものはないか」「何が得られるか」を考えます。
好物は、宇宙とハードロックとPC
阿部川 宇宙には子どものころから興味があったのですか?
金本氏 宇宙の謎を解き明かしたいという気持ちがあり、漠然と天文学者になりたいと思っていました。
小学生のころから天体写真を撮り始めて、役場の人からオファーをいただいて、公民館で写真展を開催したりしました。当時、環境庁が開催していた「星空の町100選」コンテストに選ばれたこともあります。
阿部川 天体写真を撮るのは大変ではないですか? 機材はどうしたのですか?
金本氏 カメラは親父の一眼レフを借りたり、お年玉をかき集めて買ったり。高い望遠鏡は自分では買えないので、役場の人にお願いして買ってもらったり。大人に交渉して物事を実現するのが好きでしたね。
阿部川 そういう経験が後の起業に効いているのではないですか?
金本氏 今思うと、そうかもしれません。
阿部川 天文学者になりたくて、大人を巻き込んで高級な機材を購入したりする子どもだった。しかし大学では工学部に進んだのですね。なぜですか?
金本氏 星を見るのは好きでしたが、音楽も好きで、ハードロックバンドでギターとボーカルを担当していました。同時にPCもとても好きで、マックを借りてプログラミングしていました。
進路を選ぶ際に、天文学者になるのは難しいけれど、システムエンジニアならなれそうだ、しかも「すごい給料がもらえるらしい」と聞いて、「じゃあ、ITだな」と考えたのです。それからは、家でプログラミングしたり、学校のサーバを使ってWebサイトを立ち上げて先生に怒られたりしながら、自分で勝手にスキルアップしていきました。
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