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gloopsやgumiのソーシャルゲーム開発を支えるアトラシアンのツール群現場でJIRAやBitbucketはどう活用されているのか?

アトラシアンがコミュニティーカンファレンス「Atlassian For Teams − Team-1 ゲーム開発現場でのチーム開発」を開催。現場でアトラシアンのツールを活用しているゲーム開発企業gloopsやgumiの担当者が登壇し、ツールの利用事例や、利用している中で見えてきた課題、ツールへの要望などをセッション形式で発表した。

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 プロジェクト管理ツール「JIRA Software」(以下、JIRA)や、コード管理ツール「Bitbucket」などを提供するアトラシアンは、2016年6月15日にコミュニティーカンファレンス「Atlassian For Teams − Team-1 ゲーム開発現場でのチーム開発」を開催した。このカンファレンスでは、現場でアトラシアンのツールを活用しているゲーム開発企業gloopsやgumiの担当者が登壇し、ツールの利用事例や、利用している中で見えてきた課題、ツールへの要望などをセッション形式で発表した。

gloopsが3者の視点で語るJIRA運用

 最初のセッションでは、gloopsから、木村竜太氏、國定拓実氏、岸康司氏が登壇。それぞれに「現場のメンバー視点」「現場の管理者視点」「JIRAの管理者視点」から、JIRAの導入状況や運用方法を紹介した。

バグ管理をスプレッドシートからJIRAに移行して対応時間を「5分の1」に短縮


gloops ソーシャルゲーム事業本部 品質管理部 品質管理グループ 木村竜太氏

 木村氏は「ソーシャルゲーム運用チームにJIRAを導入してみた話〜弊社Nativeアプリの事例〜」と題し、「バグ管理」にJIRAを導入して得られたメリットや、今後の課題を紹介した。

 木村氏はテストチームリーダーとして、あるネイティブアプリゲームの運用に関わっている。コンテンツは、iOS/Androidに対応したもので、運用年数としては約3年。チーム規模は約30〜40人だという。

 従来、このチームではGoogleスプレッドシートによるバグ管理を行っていたが、より案件の透明性、視認性を高めるため、1年3カ月前からJIRAによる管理に切り替えた。コンテンツに関わる全セクションの担当者がユーザーとなり、一部の機能をカスタマイズして情報の共有とトラッキングに活用している。


JIRAワークフロー(木村氏の講演資料より)

 木村氏は、チームメンバーに対して行った「JIRAを導入して良かったところ、苦労したところ」のアンケート結果を紹介した。

 「良かったところ」については、「チームの誰が案件のボールを持っているかが把握しやすくなった」という意見が多かったという。機能面では「チケットの更新通知が自動的にメール送付されるので全体への周知がしやすい」「コメントをエビデンスとして活用できる」といった点が評価されている。また、開発者からは「(不具合が頻発している部分が可視化されることで)開発過程で改善すべき場所が分かりやすくなり、事前の対策が可能になった」というメリットも指摘されているとのこと。

 同チームでは効果の数値による算出を試みており、「チケットTAT(Turn Around Time)」、つまり「不具合の報告から対応完了までの期間」が、スプレッドシートで運用していたときと比較して「約5分の1」にまで短縮できたとしている。

 一方で、JIRAの運用において、幾つかの課題も明らかになった。例えば「管理ルールを明確にし、かつメンバーが意識しなければチケットが放置されてしまう」といった状況が挙げられる。これについては、「定期的なチケットの棚卸し」や「週間単位でのダッシュボード作成」といった対策を実施することで、改善を図っているという。

実践して分かったJIRAでの「タスク管理」を効果的に行うコツ


gloops ソーシャルゲーム事業本部 プロジェクトマネジメントオフィス 國定拓実氏

 続いては「ゲーム製作現場のタスク管理手法」として、gloops、ソーシャルゲーム事業本部プロジェクトマネジメントオフィスに所属する國定氏が、同社で行っているJIRAによるタスク管理手法について紹介した。

 岸氏、木村氏のセッションでも紹介された通り、現在gloopsではJIRAを「バグトラッキング」「タスク管理」といった用途で利用している。同社ではチケットの種類について、部署をまたぐ作業用の「ストーリー」、親チケット(ストーリー)にひも付けられる実作業を表す「サブタスク」、部署をまたがない単発作業用の「タスク」の3種類に分けている。

 「ストーリー」と「サブタスク」のチケットについては、ディレクターやプロデューサー、チーフといった役割を持つメンバーが発行し、各担当者が実作業を行ってクローズするのが大まかな流れになる。


「ストーリー」チケットと「サブタスク」チケット(國定氏の講演資料より)

 チケット管理については、発行した全てのサブタスクチケットに1度「unplanned(リリース未計画)」を設定し、1週間ごとのスプリントの中で「修正バージョン」を作成(マイルストーンを達成)しながら、最終的に製品版のリリースまで、スプリントを繰り返すといったプロセスを採る。日々、該当するバージョン内での進捗(しんちょく)管理を行うと同時に、適宜「unplanned」が設定されたサブタスクの棚卸し(工数見積もりと修正バージョンへの振り分け)を繰り返すことで、開発を進めていく。振り分けられたサブタスクの工数は、WBSガントチャートによって一覧表示することが可能になっている。

 國定氏は、この管理方法について「ストーリーにひも付くサブタスクを全て発行することで、リリースまでに必要な工程全体が可視化できる」点がメリットになるとする。一方で、単発作業向けの「タスクチケット」は、ストーリーチケットのように「修正バージョン」ベースでの棚卸しを行わず、「期日」と「担当者」のみで管理を行っていたため、棚卸しがおろそかになる傾向があったという。

 國定氏は、JIRAによるタスク管理のメリットとして「バグもタスクも一元管理できる」「セクションをまたいで実装されるタスクが可視化できる」「ゲーム製作工程における前後関係が可視化できる」「修正バージョンごとにタスクを棚卸すので状況の把握が容易」といった点を挙げた。一方で、「チケットの定期的な棚卸し」や「運用ルールの設定や順守」を意識して行わないと、管理がうまくいかなくなる恐れがあることを指摘した。

gloopsで使われているJIRAのアドオンは?


gloops ソーシャルゲーム事業本部 品質管理部 岸康司氏

 gloopsでは2014年11月よりJIRAを導入しており、岸氏は現在、JIRAの管理も担当している。JIRAの特長の1つは、多数の「アドオン」が用意されており、ニーズに応じて機能を拡張できる点だ。JIRAの導入以降、現場の開発者からは機能に対するさまざまな要望が出た。これらの要望に対し、gloopsでは主にJIRAへアドオンを導入することで対応している。既に多数のアドオンを導入しているが、岸氏はその中から特に利用頻度の高いものを順に紹介した。

  • WBSガントチャート for JIRA

 JIRA上でWBS(Work Breakdown Structure)とガントチャートが利用できるアドオン。現場からの「JIRA上でタスク管理も行いたい」という要望に応じて導入したもので、導入後の評価も高いという。バージョンアップが1カ月当たり数回といった高頻度で実施され「新機能の追加や改善も迅速に行われる」(岸氏)点も好印象だとする。

  • JIRA Automation
  • Issue Matrix

 「JIRA内で発行されている子チケットに、順次対応する際の画面遷移を改良してほしい」という要望に対しては、「JIRA Automation」と「Issue Matrix」の2つのアドオンで対応した。JIRA Automationは、JIRA上のイベントをトリガとして、項目の更新やメール送信などのアクションを実行できるようにするもの。Issue Matrixは、子チケットの表示項目のカスタマイズを可能にするものだ。この2つのアドオンを組み合わせることで、親チケットから子チケットへ遷移し、対応を行った後に、親チケットに戻ることなく、キーボードショートカットで直接次の子チケットへ遷移する動作を実現している。

  • Script Runner for JIRA

 JIRA管理者向けの管理ツールの強化と、JQL(JIRA Query Language)で使用できる追加関数を提供するアドオン。管理者向けには「他のユーザーとしてログイン」「複数の共有ダッシュボード、共有フィルターのオーナー権限の一括変更」「プロジェクトの作成やコピー」といった機能を提供。JQLの追加関数としては「リンクされている子チケットをn階層まですべて検索」「ファイル添付があるチケットを検索」「指定したユーザーアカウントがコメントしたチケットを検索」するものなどが用意されている。

 岸氏は、JIRAへのアドオンの導入に当たって「機能についての詳細な情報が少なく、選択に大変苦労した。今回の発表が、これからJIRAを使いこなしていきたいと考えている企業の参考になれば幸いだ」と述べた。

グローバル規模でのチーム開発にアトラシアン製品が欠かせない理由


gumi 本間知教氏

 続いては、gumiの本間知教氏が「gumiにおける海外支社とのアトラシアン製品利用事例」と題したセッションを行った。

 2007年に創業したgumiは、国内では東京、福岡に拠点を持ち、海外に複数の開発子会社を持つグローバルな組織となっている。本間氏は2011年に入社し、現在は国産ソーシャルゲームのインフラ運用チームに所属している。ちなみにgumiでは、ゲームサーバのほぼ全てをAWS上に展開しており、本間氏を含め、約4人のチームメンバーで全体の運用を行っているという。

 本間氏は、gumiで採用されている技術の一覧を示しつつ、アトラシアンの製品は「ツールの側面から、gumiにおけるゲーム開発と運用を支えている」と説明した。


アトラシアン製品の関連図(本間氏の講演資料より)

 同社では海外拠点を含めた従業員に対して「Google Apps for Work」によるユーザーアカウントを発行しており、アトラシアン製品へのサインインに当たってはGoogleアカウントとの連携を行っている。このアカウント連携は、アトラシアンのID管理製品である「Atlassian Crowd」の有償プラグイン「Google Apps for Crowd」を利用して実現しているという。

 チャットツールである「HipChat」は、gumiの国内拠点や海外支社、さらには協力会社とのコミュニケーションに活用している。HipChat上でコミュニケーションを行うことにより、管理者はチャットルームのログを保存しておくことができる。業務上でのやりとりを行う際には必須の機能だ。また、ビデオ会議機能があるため、限られた会議室の有効活用にも貢献しているとする。

 HipChatのメリットは、他のアトラシアン製ツールとの連携が容易な点だ。他のツールの更新通知やアラートなどは、HipChatを通じて配信が可能。メッセージ送信を自動で行う「ボット」を作成することも容易であり、システムメンテナンスやデプロイに関する連絡などもHipChat上で行っているチームもあるという。

 本間氏はHipChatの長所として、「ユーザーの集中管理が可能」「1ユーザー当たり約2ドルと低価格(ただし、ボットにもライセンスが必要)」「他ツールとの連携が容易」といった点を挙げる。

 「Bitbucket Server」は、Bitbucketの機能を企業内で展開できる、社内設置型のGitリポジトリ管理ツールだ。gumiでは以前「GitHub Enterprise」を利用していたが、近年Bitbucket Serverに移行した。理由としては「(Crowdを経由して)Google Apps(Googleグループ)の権限をそのまま利用できる」「ユーザー費用の削減」「(他の社内ツールとの連携が容易なことによる)サーバ運用コストの削減」などを挙げている。

 Bitbucket Serverのメリットとして、最近のGit Serverとしての基本的な機能を備えていることに加えて、本間氏は「プラグインによる機能追加が容易」なことに触れた。同社では「Snippets for Bitbucket Server」や「Pages for Bitbucket Server」などを導入しているという。また、ゲーム開発では大容量のバイナリファイルを管理するケースが多くなるが、Bitbucket Serverでは、追加費用なしで「Git LFS(Large File Storage)」に対応している点が使いやすいとした。一方、今後の要望として、現在クラウド版のBitbucket向けに提供されているCI(Continuous Integration:継続的インテグレーション)サービス「Bitbucket Pipeline」のServer対応をぜひ実現してほしいとした。

 Wikiツールである「Confluence」は、それまで各拠点やチームによってバラバラに蓄積されていた、社内ノウハウの集約を目的に導入したという。Confluenceに限らず、海外に拠点や協力会社を抱える企業がコラボレーションツールを選ぶ際に重要なポイントとして、本間氏は「国内外で中途入社の方が入社後にすぐにその能力を発揮できる、海外でも名前が知られているツールを選ぶこと」を挙げた。

 ゲームや施策の仕様更新などは、Confluence上で共有することで、HipChatにも通知が出る。その他、ミーティングの際のプレビューや、開発要件書の共有などにも活用されている。Confluenceでは、ドキュメントの内容を容易にPDF化できる点も評価が高いという。マクロ機能やコメント機能を利用して、障害報告などの定型作業を省力化できるのも魅力の1つだ。

 gumiにおいてJIRAは、現状、海外の一部の開発子会社で限定的に利用されている状況だという。本間氏は「今後、国内での導入も視野に入れ、チケット管理ツールとしてJIRAを再評価していく予定だ」と話した。

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提供:アトラシアン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年7月13日

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