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AWSジャパンがKinesis AnalyticsやApplication Load Balancerを説明EBSではAWSにとり52回目の値下げ

アマゾンウェブサービスジャパンは2016年9月12日、最近発表の新サービスを国内で説明した。52回目の値下げが含まれているとともに、提供価値に対する料金体系の最適化とも考えられる動きが見られる。

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 アマゾンウェブサービスジャパンは2016年9月12日、Amazon Web Services(AWS)が2016年8月中旬にニューヨークで開催した「AWS Summit New York 2016」における一連の発表を中心に、新サービスを国内で説明した。52回目の値下げが含まれているとともに、提供価値に対する料金体系の最適化とも考えられる動きが見られる。

 今回説明された主な新サービスはAmazon Kinesis AnalyticsとApplication Load Balancer。他に、Amazon EBSスナップショットの値下げ、Amazon API Gatewayの機能強化、AWS Key Management Serviceにおけるユーザー側の鍵持ち込み、Amazon S3のIPv6対応、Transit VPCソリューションがある。

 Amazon KinesisはWeb上のユーザー行動データをはじめ、連続的に送られてくるデータの流れ(ストリーミングデータ)を処理するプロセスを自動化するサービスの総称。Kinesis Streamsではデータストリームを保存し、カスタムアプリケーションを構築してこれを処理できるようにしている。Kinesis Firehoseでは、ストリーミングデータを逐次Amazon S3、Amazon Redshift、Amazon Elasticsearch ServiceといったAWSのサービスに送ることができる。

 8月に発表のAmazon Kinesis Analyticsは、Kinesis StreamsあるいはKinesis Firehoseで収集しているストリーミングデータに対し、直接SQLクエリを発行し続けるイメージでデータ集約や分析が行えるサービス。集約や分析の結果は、S3、Redshift、Elastic Search Serviceなどに送れる。このため、例えばRedshiftにデータを蓄積して分析ツールを適用しているケースで、リアルタイム性を維持しながら分析対象データを減らすといったことも考えられる。


Kinesis StreamsあるいはKinesis Firehoseで収集しているストリーミングデータを対象としたデータ集約や分析ができる

 Application Load Balancer(ALB)は、文字通りアプリケーションレベルの負荷分散機能。これまでAWSは、IPアドレスとポート番号に基づく負荷分散機能としてElastic Load Balancer(ELB)を提供してきた。これはClassic Load Balancer(CLB)と名前を変え、今後も提供される。

 新規に提供開始されたALBでは、IPアドレスに加え、コンテンツに基づくトラフィックの振り分けが行える。つまりHTTPのパス情報(Webサーバの物理/仮想ディレクトリなど)を基に、別のホストへ振り分けることができる。さらに、コンテナスケジューリングサービスAmazon EC2 Container Service(ECS)と連携し、コンテナ間の負荷分散が行えるようになったことが特徴。ECSではコンテナ単位で動的にポート番号を割り当て、ALBはこれを使って負荷分散が行える。

 ALBは、負荷分散対象のアプリケーションプロトコルをHTTPおよびHTTPSに限定している点ではCLBと変わりがない。ただしHTTP/2とWeb Socketsに対応している。逆に、CLBにあってALBに欠けているのはレイヤ4情報に基づく負荷分散機能。

 本記事の冒頭で、「提供価値に対する料金体系の最適化とも考えられる動き」と表現したのはALBの料金体系。CLBは現在でも件数と転送量に基づくシンプルな料金体系だが、ALBでは「Load Balancer Capacity Units(LCU)」という単位で時間課金する。LCUは、1秒当たりの新規接続数(1 LCU=25)、1分当たりのアクティブ接続数(同3000)、帯域幅(同2.22 Mbps)のうち、最大値のLCU計算に基づき課金される。CLBと比べた場合のALBの料金は、利用状況によって全く異なるため、値上げとも値下げともいえない。

EBS、API Gateway、S3、VPCにおける強化点

 Amazon EBSではEBSスナップショットの料金を全リージョンで47%値下げした。AWSとして52回目の値下げに当たるという。また、EBSのProvisioned IOPSでは、従来の制限が緩和された。従来、設定できるIOPS上限は1GiB(1 GiB=約1074KB)当たり30IOPSだったが、50IOPSになった。さらに単一のEBSボリュームに設定できるIOPSの上限である2万IOPSを設定できるためには、667GiB以上の容量を設定する必要があったが、この制限が400GiBに緩和された。

 APIの作成・提供が行えるAmazon API Gatewayの機能強化では、ユーザーやサービス内容に応じて利用プランを作成・適用できるようになった。1秒当たりのリクエスト数上限、期間ごとのリクエスト数上限、アクセスできるAPIおよびAPIステージを、プランごとに設定できる。

 暗号鍵管理サービスであるAWS Key Management Service(KMS)におけるユーザー側の鍵持ち込みは、鍵管理のプロセス全てをカバーする同サービスで、ユーザー側で生成した鍵を対象に、KMSの他の機能が全て活用できるというもの。

 Amazon S3のIPv6対応は、S3のバケットをデュアルスタック対応させられるというもの。モバイル関連のサービスなどで、端末から直接、IPv6でデータをS3に保存するなどの用途に使えるという。AWSでは、現在デフォルトになっているAmazon VPCがIPv6に対応していないため、他の主要サービスはまだIPv6をサポートしていない(前述のCLBは、VPCを対象としない場合IPv6に対応している)。今後の方向性としては、サービス全体にIPv6サポートを段階的に組み込んでいくつもりという。

 Transit VPCのソリューションは、複数のVPCからのVPN接続を集約する中継用のVPCを作成し、ここでソフトウェアルータを動かして、企業の拠点や他のデータセンターなどとのルーティングを行うもの。これは新サービスではない。ソリューションだ。

 好みのソフトウェアルータを使って同様の構成を作り上げることは従来より可能となっている。「ソリューション」という意味は、AWS CloudFormationを使って、ルーティングなどの複雑な設定を自動化していることにある。今回のソリューションはシスコのCloud Services Routerを使っているが、理屈上は他の製品でも同様なソリューションを構築できるはずだ。

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