ネットサービスは「何歳から解禁」にすべきなのか:アカウント作成「13歳未満は禁止」は存在するが……
インターネット上の脅威から子どもを守るための年齢制限や、取るべき安全対策の在り方を、あらためてどう考えるか。セキュリティ企業のESETが提言記事を公開した。
スロバキアのセキュリティ企業ESETは2016年9月12日(現地時間)、同社が運営する「WeLiveSecurity.com」のブログで「子どもは何歳からオンラインサービスにアクセスできるようにすべきか」と題する記事を公開した。インターネット上の脅威やリスクから子どもを保護するための年齢制限について考察し、取るべき対策の在り方をまとめている。以下、ブログを抄訳する。
インターネット上での子どもや若者の保護にどう取り組むかは、昨今のデジタル社会に向けた大きな課題となっている。グルーミング(性的誘引)やサイバーいじめなど、特に子どもや若者にとって深刻な脅威やリスクへの対策も既に数多く実施されている。しかし、安全なデジタル環境の実現への道のりはまだ遠く、果てしない。
有名無実と化しているネットサービスの年齢制限
ネット上での子どもの安全を保護するために特に重要となるポイントは、「ネットサービスを使える年齢の設定」と「義務付け」にある。
例えば、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の中には、子どもの利用を想定して開発されておらず、また、13歳未満は登録できないと定めたサービスが多い。Webメールなどのサービスにおいても、13歳未満はアカウントの作成を禁じるルールが設けられている。
しかし、どちらの場合もユーザーの年齢を確認する仕組みまでは用意されていない。ユーザーのモラルに委ねており、年齢制限は有名無実と化している。
サービスの提供側が、13歳未満の子どもはSNSやメールのアカウントを取得できない規則を設けているのは、米国ではCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)により、特別なプライバシー保護措置を講じなければならないからだ。。
追加的な制限を設けるサービスもあるが……
アカウント作成時の年齢制限は実効性に乏しいようだが、そんなユーザーがサービスを使い続けてしまうのを防ぐ仕組みも存在する。例えば米フェイスブックでは、13歳未満の子どもが使っていると思われるFacebookページを通報するためのフォームを設けている。
ESETでは、この効果を確かめるために実際にこのフォームで通報した。しかし、現時点では全く反応がない。フェイスブックのサイトでは、「通報された子どもの年齢が13歳を下回ることが合理的に確認できない場合、私たちはそのアカウントに対して何も措置を講じない可能性がある」とも記述されている。通報に基づいてどうチェックするのかが明示されておらず、この仕組みも効果には疑問が残る。
ネットサービスを使い始めるのに適切な年齢、対策の在り方を見直す
この問題に結論を出すのは極めて難しい。実際、年齢制限の機能は形骸化している。しかし、子どもをデジタル世界から理由なく締め出すことは、この先、子どもにとっても、私たちにとっても、大きなマイナスになりかねない。
子どもが親や教師の適切な監督の下でネットサービスを使えるようにし、サービスの適切な使い方を守らせるとともに、ペアレンタルコントロールのようなセキュリティツールを適切に取り入れて保護を強化する必要がある。
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