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1行だけの「TODOリスト」――仕事をゲームのように楽しむ方法田中淳子の“言葉のチカラ”(35)(2/2 ページ)

「TODO」を細分化し、リストを細かく消し込む手法をとっているエンジニアは多いだろう。しかし、たった1つの「TODO」を目標にする、というやり方もあるのだ。

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たった1行の「TODOリスト」

 たった1つの「やるべきこと」に取り組んだ人もいる。BさんというPMである。

 Bさんのチームには、「扱いにくい年長者」Cさんがいた。Cさんは「彼は、扱いにくい。指示した仕事は納得しないとやらないし、自分のペースだけを大事にしてチームで行動できない。技術力はあるが、同じプロジェクトのメンバーとしてやっていくのはできれば避けたい」と、どのPMからもメンバーからも距離を置かれていたという。

 Bさんは「Cさんを攻略する!」と「TODOリスト」に入れた。それができれば、チーム運営に自信が持てるようになる、と思ってのことだ。周囲にも「オレ、Cさんと仲良くなる!」と宣言した。

 Bさんはまず、Cさんという人そのものに興味を持った。「どうしてこの人はここまで大勢から『困ったものだ』と言われているのだろう」と思い、まずは徹底的に自分からコミュニケーションをとるようにした。

 朝晩のあいさつ、ねぎらいの言葉、仕事に関する質問……。Cさんの反応はそっけないものだったが、時々質問に答えてくれることもあった。Bさんは、その中からCさんが反応を示しやすい話題を探り、Cさんの話を聞くように心掛けたそうだ。「教えてくださってありがとうございます!」と笑顔で感謝の言葉を伝えていたら、少しずつCさんと会話できる時間が増えてきたという。

 Bさんは、こう話してくれた。

 「周囲はCさんのことを、『扱いにくい』と言っていましたが、ちゃんと話してみれば、そうでもなかったのです。言葉は少ないけれど、スキルが高いだけではなく、さまざまな経験を積み、開発に対するアイデアも意見もたくさん持っている。思い込みを排除してCさんの話を聞いてみたら、教えてもらえることが増えて仕事がしやすくなりました」

 そんなある日、Bさんが体調を崩して仕事を休んだ。2日ぶりに出社したら、Cさんが「身体、大丈夫ですか?」と声を掛けてくれたそうだ。

 これには周囲もとても驚いたらしい。「いったい、何をしたんですか? あの、気難し屋のCさんが体調を心配してくれるなんて!」と尋ねられたという。

 事務仕事でも人間関係でも「ああ、いやだなぁ」と思っているだけでは状況は変わらない。「TODOリスト」に入れて、「やるぞ!」と取り組む。そうすると、大変な仕事にも「やりがい」が感じられるようになるのだろう。

 “Enjoy business as a game.”という言葉がある。せっかく何かに取り組むなら、「ゲームのように挑戦してみる」というのは、仕事を楽しむコツの1つだ。

筆者プロフィール 田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。

著書:「ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方」(日経BP社)「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。

電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)

ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!


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