マイクロソフトは「セキュリティ」「管理」「イノベーション」で企業のデジタルトランスフォーメーションを強力に支援:Microsoft Tech Summit基調講演(2/2 ページ)
日本マイクロソフトは2016年11月1〜2日の2日間、IT技術者向けのイベント「Microsoft Tech Summit」を開催。企業がデジタルトランスフォーメーションを実現していくための最新技術と実践的なノウハウを、100を超えるセッションで紹介。ここでは、初日に行われた基調講演の模様をレポートする。
4つの視点で「AIの民主化」を進めていく
それでは、IT技術者によって推進されるエンタープライズITの未来とはどんなものか――。続いて登壇した、榊原彰氏(執行役員 最高技術責任者)は、その一例として「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」への取り組みを挙げた。
「マイクロソフトでは、“AIの民主化”を掲げ、安価に誰でもAIの技術を使っていただけるようにします。AIのパワーはまさに今、開花したところ。これからどう取り組むかがカギになってきます」(榊原氏)
榊原氏によると、マイクロソフトにおけるAIの適用領域は、大きく「エージェント」「アプリケーション」「サービス」「インフラストラクチャ」の4つがあると説明する。
エージェントという視点では、「Cortana(コルタナ)」のような認識技術がカギになる。既に個人のデバイスを通じて、1億3300万ユーザーが120億の質問をCortanaに送っており、日々の学習を通じて、精度の向上が図られているという。
アプリケーションについては、Office 365とDynamics 365への適用例を挙げた。例えば、Office 365では、分析機能の1つである「Microsoft Graph」を使って、個人のプライバシーを守りながら、次にどんな作業すべきかを先回りして教えてくれるようになるという。
「どういう人とコラボレーションすればよいか、どの仕事を優先すればよいかをOfficeが教えてくれるようになります。本来やるべき仕事に集中できるようになります。また、Dynamicsでも、これまでのCRMでは、社内情報やビジネスのコンテキストに閉じた情報しか活用できませんでしたが、それをSNSなどの外の情報にリンクさせながら、問題を解決してくことができるようになります。これは、問題解決を支援する“仮想アシスタント”のようなものです。カスタマーサポートを支える重要な技術になるでしょう」(榊原氏)
さらに、サービスについては「Bot Framework」や「Cognitive Service」の分野に積極的に投資を行っている。チャットボットのようなサービスは、人とコンピュータとの新しいインタフェースになる。それだけでなく、人と環境とのインタフェースにもなる可能性を研究しているという。
実際の事例としても、「Cognitive Toolkit」を使って自動応答システムの開発を発表した三井住友銀行のケースがある。また、高知銀行は、Nextremerとブイキューブと共同して、銀行受付でAIを活用した対話システムの導入を試験的に進めている。
講演では、銀行受付の対話システムやBot Frameworkを用いたチャットボットのデモが披露された。チャットボットのデモでは、Visual Studioで表情分析API(Application Programming Interface)を用いたボットプログラムを作成し、AzureのWeb App上に展開後、Bot Directoryに公開して、すぐに利用できることを示した。ボットに榊原氏の顔写真をアップロードし、笑顔の度合いを自動判定して「11%の笑顔ですね!」などと会場の笑いを誘っていた。
最後のインフラストラクチャについては、Azureで提供されるFPGA(Field-Programmable Gate Array)の事例を紹介。Azureでは、「Microsoft Cognitive Toolkit(CNTK)」「Caffe」「TensorFlow」「Torch」といった深層学習ツールが利用できる。CNTKはマイクロソフトがGitHubにOSS(オープンソースソフトウェア)として公開しているものだ。こうしたツールを活用する際にポイントになるのが、GPUコンピューティングやFPGAだという。
「FPGAはもともとBing検索で用いていました。最近は、独自にデザインしたFPGAのボードをAzureに組み込み始めています。深層学習にFPGAを利用することで、エンジニアがソフトウェアの設計に組み込んで利用できるようになります」(榊原氏)
この仕組みを用いて、Azure上でスーパーコンピュータ(スパコン)サービス「XTREME DNA」を提供しているのがエクストリームデザインだ。これにより、エクストリームデザインでは「スパコンの民主化」を進めているという。榊原氏は「AIの民主化により、人間とコンピュータがともに課題を解決していく社会になっていく」と今後の展望を示した。
基調講演の最後には、代表取締役社長の平野拓也氏が登壇。「Microsoft HoloLens」を国内で提供することを発表するとともに、「企業のビジネスを通して生活が改善することを信じています。取り組みは今まさに始まったところです。新しいテクノロジーを使って、技術者、開発者のみなさんと一緒に新しい未来をつくっていきたい」と力強く宣言した。
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