SPARCの新製品が続々リリース! クラウドでも利用できるって本当ですか?:さまざまな選択肢を提供できるように
SPARC/Solarisの“新発見”を紹介する「SPARC/Solaris World」。今回は、米国のオラクル本社からコンバージドインフラストラクチャのシニアバイスプレジデントを務めるジム・ガーガンが来日したので、Oracle OpenWorld 2016でさまざまな発表が行われた中で、オラクルはどのようなインフラストラクチャ戦略を採り、SPARC/SolarisやOracle Cloudをどのように進化させていくのかを聞いてきました。限定動画も公開中!
今回は、オラクルのコンバージドインフラストラクチャ担当が来日
こんにちは。日本オラクルの吉田千華(よしだちか:写真左)と松崎穂波(まつざきほなみ:写真右)です。
2016年10月26日に行われたOracle Cloud Days Tokyo 2016では、クラウド基盤の最新情報について、いくつもの講演が行われました。米国のオラクル本社からは、コンバージドインフラストラクチャのシニアバイスプレジデントを務めるジム・ガーガン(Jim Gargan)さんが来日し、オラクルのインフラストラクチャ戦略について講演しています。
今回は、日本オラクル 執行役員でクラウド・システム事業を統括する山本恭典とガーガンさんの対談模様をお伝えします。
Oracle OpenWorld 2016でさまざまな発表が行われた中で、オラクルはどのようなインフラストラクチャ戦略を採り、SPARC/SolarisやOracle Cloudをどのように進化させていくのでしょうか。
「エンタープライズに最適なOracle Cloud」その理由とは
山本 ジムさんは、1年前にオラクルに入ってきましたが、オラクルに入る前はSPARC/Solarisをどのように見ていたのでしょうか。
ガーガン 以前はIBMにいたので、SPARC/Solarisは競争相手として注目していました。Solarisの堅牢性や、SPARCプロセッサにも注目し、「どのようにして、“完璧な”プラットフォームを作っているのか」に関心を持っていました。
山本 オラクルに入った後は、どう思っていますか。
ガーガン もちろん、素晴らしい製品であることは間違いなく、しかも進化し続けていると感じています。SPARCの機能を拡張して新たな市場にも対応し、インテルアーキテクチャに対抗できる新しい機能も搭載してきています。2016年10月には、新プロセッサ「SPARC S7」のローエンド向け製品群とIaaSとしてSPARCを利用する「Oracle SPARC Cloud Service」を発表し、ローエンドからクラウドまでSPARCテクノロジーを利用できるようにしました(参考「中小規模のシステムにも対応、SPARCベースのIaaSも開始:オラクル、“Software in Silicon”を実装した「SPARC S7」製品群を投入」)。
山本 今回のアナウンスでは、2015年にアナウンスしたSPARC M7プロセッサのコアと同じ機能を持ち、さらにスケールアウト・アーキテクチャに最適化した先進的なSPARC S7サーバをX86サーバと同じ価格帯で提供し、メディアにも大きく取り上げられました。また、その先進的なテクノロジーをクラウドでも利用できるようにしたということで、そちらも話題になりました。
ガーガン 日本だけではなく、アメリカでも同じように注目を集めています。特にSPARC/Solarisの機能を、オンプレミスだけではなくクラウドに拡張して使えることが特長の1つです。1社提供による統合的な環境において、オンプレミスで使用している技術やプラットフォームをクラウドででも利用できるのは、他のインフラベンダーやクラウドベンダーにはない強みといえるでしょう。
例えば、AWSを使ってハイブリッドクラウドを構築しようとすると、オンプレミスとパブリッククラウドの統合を全て自分たちで行う必要があります。オンプレミスとAWSでは、アーキテクチャも技術も異なっており、統合して使うことを前提に作られていないため、非常に苦労することになると思います。
一方オラクルの場合は、オンプレミスとパブリッククラウドで同じハードウェアを使えるため、アプリケーションの開発やテストなどにおいてリコンパイルや再テストを行う必要もありません。OSやその他の技術も含めて、同じものをオンプレミスとクラウドの両方で使えるのです。
また、われわれは2016年4月に新たに「Oracle Cloud Machine」を発表しました(参考:Oracle CloudのIaaSとPaaSをサブクリプションで提供:Oracle Cloudを“自社DC”で利用可能に──オラクル、クラウド新サービス「Oracle Cloud Machine」を発表)。これによって、Oracle Cloudの機能を自社のファイアウォールの内側で利用できるようになり、クラウドを利用することによるセキュリティや規制対応、コンプライアンスに対する懸念を払拭できます。
パブリッククラウドのみを活用する選択肢としてAWSを検討されているお客さまも多いですが、AWSはIaaSの機能を中心としたパブリッククラウドという特徴があります。エンタープライズでクラウドを活用するためには、インフラストラクチャ(IaaS)、プラットフォーム(PaaS)、ソフトウェア(SaaS)の3つが必要となります。PaaSとしてエンタープライズ向けの機能がほとんどなく、ERPなどエンタープライズ向けSaaSの機能もほぼないため、エンタープライズ向けにはAWSは適していないといえるでしょう。
山本 日本のお客さまやパートナーからは、「AWSと契約するとロックインされてしまう」という話をよく聞きます。グローバルでは、どのように評価されているのでしょうか。
ガーガン Oracle OpenWorld 2016のラリー・エリソンの基調講演では、オラクルとAWSをファクトベースで比較していました。基調講演の動画を視聴していただければ、オラクルにどれだけエンタープライズ向けの機能が備わっているかが明確な違いとして分かると思います。
引き続きSPARC/Solarisへの投資を続けていく
山本 日本には、SPARC/Solarisの既存ユーザーが数万ユーザー存在します。このような多くの既存のお客さまに対して、オラクルは新製品について、どのような提案ができるのでしょうか。
ガーガン 既存のお客さまは、最新のSPARC/Solarisを使うことによって、さまざまな選択肢を選べるようになると考えています。スケールアウトを見こしたスモールスタートなものから、大規模なエンタープライズシステムまで対応でき、しかも、それらには同じOS技術やアーキテクチャが使われているため、アプリケーションの移行もスムーズに行えます。もちろん、全てのポートフォリオにおいて、高いパフォーマンスとセキュリティを提供できます。
既存のお客さまにもう1つ提案できるのは、SPARC/Solarisは3つの使い方ができるということです。1つ目は、柔軟かつ最適に設計されたネットワーク、サーバ、ストレージを単体製品として、要件に合わせて選択し組み合わせることができます。2つ目は、統合されたシンプルなエンジニアドシステムを使って、デプロイする時間やコストを節約する方法です。そして、3つ目がSPARCクラウドサービスを使う方法です。
山本 数多くいる日本のSPARC/Solarisファンの中には、Oracle OpenWorld 2016でオラクルがSPARC向けLinuxを搭載した「Oracle Exadata SL」を発表したことによって、Solarisをやめるのではないかと心配している人もいますが、シニアバイスプレジデントとしてSolarisの将来についてお話しください。
ガーガン 多くのお客さまがSolarisを使ってビジネスを行っていて、今後もSolarisを使い続けたいと思っていることは認識しており、われわれはこれらのお客さまにコミットする必要があります。今後も引き続き、Solarisの技術に投資していくことは変わりありません。
SPARCプロセッサを搭載した「Oracle Exadata SL」という選択肢を増やすことによって、Linuxユーザーにも「Software in Silicon」という価値を提供できますが、あくまでエンジニアドシステムの1つとしてLinuxも利用できるということで、その他のスタンドアロンのSPARCマシンでLinuxを使えるわけではありません。
ある政府系のお客さまからは、「SPARCは高速だが、システムをLinuxで標準化しているので使えない」と言われたことがあります。このようなLinuxしか使えない環境にいるお客さまにも、われわれの製品を使っていただくために、エンジニアドシステムの1つとして開発しているのです。Oracle Exadataファミリーの中にはインテルのプロセッサを使っているものもあります。私たちはより多くのお客さまが自由に選択できるように選択肢の幅を広げようと考えており、SolarisとLinuxの2つのOS、SPARCとインテルの2つのプロセッサに対応させています。
Software in Siliconによる機能強化と効果――実際に試すには?
山本 SPARCプロセッサの最新版を搭載したサーバは、S7、T7、M7とラインアップがそろってきて、これらの全てにSoftware in Siliconが搭載されています。これらのサーバによって、これからのコンピューティングはどのように変わってくるとお考えですか。
ガーガン SPARCプロセッサにさまざまな機能を搭載させましたが、その中でも重要なのはセキュリティの強化だと考えています。ファイアウォールの多くが脅威を防げていないという話をよく聞きますが、そのような中で「どのようにデータを保護するのか」が非常に重要です。
われわれの戦略は、Software in Siliconの「Silicon Secured Memory」と暗号化アクセラレータによって、データセンター内のストレージやサーバにあるデータをハードウェアベースで常時保護することです。暗号化はソフトウェアでも実現できますがコストが高い。われわれは、これらのセキュリティ機能をチップに組み込むことによって、ソフトウェアを購入する追加コストや導入する作業が必要なく、パフォーマンスに対してオーバヘッドがないデータの保護を可能にしています。
また最近は、「膨大なデータを収集して、分析することでビジネスをより良くしよう」とする需要が高まってきていますが、従来は、「データを抽出してデータウェアハウスに格納してクエリを掛ける間にデータが古くなる」「一部のデータしか活用できない」など課題があり、素早く意思決定できなかったり、精度の低い分析となってしまったりしていました。
この課題を解決するために、われわれはSoftware in Siliconに「データアナリティクスアクセラレータ(Data Analytics Accelerator:DAX)」という機能を搭載しました。チップの中にアクセラレータを搭載することによって、運用されている膨大なデータをリアルタイムに分析することが可能になります。もちろんDAXを利用する場合も、追加コストやオーバヘッドを心配する必要はありません。
山本 Software in Siliconで機能が強化されていく中で、オラクルはISV(Independent Software Vendor:独立系ソフトウェアベンダー)向けには、どのような価値を提供できるのでしょうか。
ガーガン われわれはハードウェアとソフトウェアの両面を考えて開発を行っている中で、個別のISVと緊密にコミュニケーションを取りながら、Software in Siliconの機能を十分に活用していただけるように努力しています。Software in SiliconのAPIを用意して、ISVの皆さんがハードウェアのメリットを十分に活用できる仕組みを作っています。
例えば、データ分析企業のActiveViam(旧Quartet FS)は、DAXを使ってインメモリデータベースを使った分析を6〜8倍高速にしています。また、われわれは開発者向けサービスを用意しており、ISVの皆さんは、これに登録することでSoftware in Siliconの機能を無償で利用できるようにしており、自社ソフトウェアへの適用をテスト可能です。
グローバルでもSPARC/Solarisへの期待は高い
山本 日本では、数カ月前にSPARC/Solaris専門の営業チームを組織しました。グローバルでは既に専門の営業チームがありますが、グローバルでのお客さまの反応を教えてください。
ガーガン サービスの質やレベルが上がったと好評を得ています。特定の製品に対する専門知識を持った営業チームがあることで、お客さまの要望に応えやすくなり、「目標とするゴールに到達する時間も短くなっている」「サポートも良くなり、良いソリューションを提案してくれる」という感想を頂いています。専門の営業チームは、SPARCクラウドサービスも担当しているので、パブリッククラウド、オンプレミス、ハイブリッドクラウドの全てと、基本的なエンタープライズアプリケーションの全てを網羅した営業活動が行えていると思います。
山本 日本では、「SPARC/Solarisの勢いが戻ってきた」と言ってくださるお客さまが増えてきましたが、グローバルではどのような期待があるのでしょうか。
ガーガン 以前、SPARCプラットフォームの競争力が非常に強かった時代がありました。それから20年くらいが経って、お客さまが再びUNIXに着目し、SPARCのエンジニアドシステムが登場し、Software in Siliconといった技術も生まれています。これらによって、SPARCは、20年前以上に素晴らしいものとして活用されていると感じています。お客さまとSPARC/Solarisの話をするときには、「非常に高いビジネス効果が期待できるソリューションだ」と話しています。パフォーマンスが高く、市場に対して価値があり、セキュリティも充実して、クラウドを幅広く利用できるなど、お客さまにとって魅力的な価値を提供できると考えているからです。
ミッションクリティカルなアプリケーションを利用する多くのお客さまが、UNIXを使っています。UNIXにはさまざまなものがありますが、「クラウドも同時に使いたい場合にどうしたらよいか分からない」というお客さまも数多くいます。われわれがクラウドを含めたさまざまな選択肢を提供できるようになったことも、SPARCが注目されている理由の1つだと思います。
山本 最後に、SPARC/Solarisのグローバルでの事例をいくつか教えてください。
ガーガン 「ニューヨークの家電量販店のB&H Photo Videoは、M7を採用することで、分析のスピードが従来の約83倍高速になった」という事例があります。分析がそれだけ速くなれば、ビジネスの意思決定も約83倍迅速にすることができるでしょう。
また名前は公表できませんが、大手のECサイトでは、データベースの一部にT7サーバを導入し、ワークロードの小さいものに対してはS7サーバを導入することでコストを抑えることに成功しています。このように、2種類のSPARCをコストやワークロードに応じて導入してもOSやSoftware in Siliconの機能は同じものが使えるということは、大きなメリットだと思います。
取材を終えて
松崎 最近中小企業に営業に行く機会が多いのですが、クラウドを採用している企業が多いです。今回の対談やOracle OpenWorld 2016を通して、オラクルのクラウドサービスの優位や差別化要素もそろってきていることが分かったので、話しやすくなりました。また、お客さまに、使っているOSを伺うと、WindowsかLinuxが多いので、Oracle Exadata SLは需要があるのではないでしょうか。Linux for SPARCモデルをExadata以外でも今後出していくのかは注目したいです。
吉田 製品説明をする際にオラクル目線になってしまうことが多いですが、「お客さまが何を求めているのか」「どのような話をすると効果的か」など、お客さま目線で考えて話さないと意味がありません。今回の対談ではオラクルの製品を説明するとともに、「お客さまにはこのように説明している」と実際に効果的だったアプローチ方法を教えていただき、製品内容だけではなく営業スキルの勉強にもなりました。
「SPARC/Solaris World」読者限定動画公開!
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