「経営層のITに対する認識」はどこまで変わったか?:JUAS、「企業IT動向調査2017」の速報値を発表
デジタルトランスフォーメーション推進の上で、大きな課題の1つとされている「経営層のITに対する認識」の変容をIT投資調査に探る。
国内でもデジタルトランスフォーメーションが着実に進展している。テクノロジの力で生み出した新たな価値が、既存の業界構造を破壊するデジタルディスラプションに対する認識も多くの企業に浸透し、IoTやX-Techなどのデジタルビジネスに取り組む企業も着実に増えている。これを受けて、IT活用やIT投資に対する認識も、少しずつ変わりつつあるようだ。
2017年1月12日、JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)が発表した「企業IT動向調査2017」の速報値によると、「2017年度IT予算の増減予測」では、34%が「増加」、49.7%が「不変(前年度並み)」と回答。JUASでは「前回調査に比べるとIT予算を増やす企業の割合は減少しているが、その分『不変』が増えている。そのため全体で見ると、2016年度並み、またはそれ以上の予算が2017年に投じられるようだ」と分析している。
※調査期間は2016年9月30日〜10月18日。調査対象は東証一部上場企業とそれに準じる4000社。各社のIT部門長に調査票を郵送。調査の有効回答数は1071社。うちIT予算に関する有効回答数は668社
売上高別のIT投資では、売上高100億円以上1000億円未満の層が、DI(ディフュージョンインデックス:予算を「増やす」割合から「減らす」割合を差し引いた値)20.7ポイントでトップ。売上高100億円未満の層が18.6ポイントと続き、「中堅企業でのIT投資が活発化する」と予測している。
一方、「IT投資で解決したい中期的な経営課題」としては、「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」がトップ。「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」が続き、「いずれも回答企業の約2割が、IT投資で解決したい中期的な経営課題の第1位」に挙げたという。
JUASでは「2017年度注目したいことは、これらの課題を解決する手段として、IoTやビッグデータなどの手法を取り入れ、革新を起こそうという企業が増えているようにみえること」としている。
経営層の「ITに対する認識」はどこまで変われるか
ただ、IoTも含めたデジタルビジネスは最初から正解が分からない以上、短期的利益を求めず、トライ&エラーを高速で繰り返しながら正解を模索するスタンスが求められる。このためには、IT投資の面でも必要なテクノロジには進んで投資する中長期的視点が必要だ。
だがITを「コスト削減・効率化の手段」ではなく、「収益向上・ビジネス機会拡大の手段」と捉えない限り、こうしたスタンスを持つことは難しい。しかし一般に、多くの日本企業はITを「コスト削減の手段」と捉え、デジタルトランスフォーメーションの実現についても「経営層のITに対する認識」が大きな課題の1つとされている。
やや古いデータだが、JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)が2013年10月に発表した「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」でも、ITを「攻めの手段」と捉える米国企業とは正反対の結果が表れている。
「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」調査結果(2013年10月/一般社団法人 電子情報技術産業協会、IDCジャパン) ※図版の出典元:「攻めのIT経営銘柄」の選定について(経済産業省商務情報政策局)
上記調査から約3年が経過した現在、企業のITに対する認識にどれほどの変化が表れているのか――「4月上旬にダイジェスト版を、5月に詳細な分析結果を発表予定」としているJUAS「企業IT動向調査 2017」をはじめ、各種意識調査が引き続き注目される。
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