Agentforceのアーキテクチャを知って設計に役立てる:Salesforce MVPが解説するAgentforce(2)
SalesforceのAIエージェント基盤である「Agentforce」の内部はどのような構造になっているのでしょうか。 主要な構成要素を理解することで、 適切な設計につなげることができます。
*本連載はNTTテクノクロスのブログ「Salesforce MVP 鈴木貞弘の『Agentforce 匠指南』シリーズ」を再編集して掲載するものです。
Agentforceの内部構造を知る
本連載の第1回では、Agentforceの全体像と、頭脳である「Atlas Reasoning Engine」の仕組みを解説しました。
今回は、Agentforceのアーキテクチャに焦点を当てます。これは単なる技術知識ではなく、導入時の成功を左右する鍵です。しっかりした設計がなければ、どんなに優れたAI(人工知能)も宝の持ち腐れになってしまいます。
特に、2025年の最新アップデート(「Agentforce 3」)では、応答速度の向上やセキュリティの強化が図られ、より大規模な実務適用が可能になりました。運用監視が容易になったことも特筆すべき点です。今回は主要コンポーネントを分解し、設計ポイントを交えて解説します。
Agentforceの自律性を支える4つの柱
Agentforceは、Salesforceの「Einstein AI」と「Data Cloud」を基盤に構築されています。Summer '25リリースではData Cloudとの統合が強化され、リアルタイムデータ処理能力が向上しました。
Agentforceの核となるのは、自律性を支える4つのコンポーネントです。1つずつ解剖していきましょう。
エージェント定義:エージェントの役割とスキルを設定する基盤
Agentforceの起点は、エージェントの定義です。これは、エージェントが何をするのか、どんな役割を担うのかを決める部分で、Salesforceの「Agent Builder」を使って視覚的に構築できます。Agent Builderは、これらのトピックとスキルを設計・管理するための統合開発環境(IDE)であり、ユーザーがエージェントの「スキルセット」を構築するためのUI(ユーザーインタフェース)です。
ここで重要なのは、2025年のAgentforce 3アップデートで追加された「Skills」コンポーネントです。Skillsは、エージェントの能力をモジュール化し、再利用可能にする仕組みです。例えばヘルスケア業界における患者スケジューリングやメディア業界における広告提案生成など、定義済み業界特化スキルが100以上提供されています。これにより、エージェントの導入時間が短縮され、定義フェーズにかかる時間が半分近くになりました。なお、エージェントを定義する際に、重複スキルを避けるのがエージェントをうまく動かすコツです。
トピック設定:ユーザーの意図を解釈するゲートウェイ
次にトピック設定です。これは、ユーザーの自然言語入力(クエリ)を解釈し、エージェントがどのアクションを取るかを決定する部分です。トピック設定ではAtlas Reasoning Engineが活躍し、クエリをトピックにマッピングします。
2025年のSummer '25リリースでは、トピックの精度が向上し、Web検索統合が標準化されました。これにより、エージェントはSalesforce内のデータだけでなく、外部Web情報をリアルタイムで参照可能になりました。トピック設定のベストプラクティスは、クエリのバリエーションを複数登録し、曖昧さを減らすことです。Agentforce 3のAI-driven提案機能を使えば自動で生成できますが、最終的には開発者やビジネスユーザー、データサイエンティストが協力して、顧客が実際に使う言葉を反映させ、クエリの精度を高めていきます。また、トピックでAI-driven schedulingのような新機能をトリガーし、スケジュール調整を自動化することも可能です。
Apexアクション:Salesforceの実行力を引き出すカスタム処理
Agentforceの強みは、Salesforceネイティブのアクション連携です。特にApexアクションは、カスタムコードで複雑な処理を実現します。例えば、トピックからトリガーされ、Apexでサポートケースを作成し、メール通知を送る流れです。
Agentforce 3では、アクションの観測性が強化され、実行中のアクションのボトルネックを特定し、リアルタイムで監視できるようになりました。また、レイテンシーが50%低減されたことで、大規模アクションの実行がスムーズになりました。私は設計時、Apexをモジュール化し、再利用性を高めることを推奨しています。セキュリティのため、Apexクラスに適切な権限を設定することも重要です。
セキュリティと権限:Trust Layerで「信頼」を確保
最後にセキュリティです。これはAgentforceの「Trust Layer」が担い、データアクセスを厳格に制御します。「Salesforce Shield」や「Data Masking」を活用し、エージェントの行動をログ化し監査します。権限は、ユーザーロールに基づき、読み取り/書き込みを制限します。
大規模導入事例から学ぶ設計ポイント
これらのコンポーネントを組み合わせ、大規模プロジェクトにAgentforceを導入する際の設計ポイントを、私の経験からお伝えします。
スケーラビリティの考慮
エージェント定義でSkillsを活用し、トピックを階層化。Apexアクションのボトルネックを避けるため、並列処理を設計。Agentforce 3の低レイテンシーで、ピーク時のカスタマーサポート問い合わせ急増に対応し、オペレーターの負荷を大幅に削減することができます。
統合の工夫
Salesforce外のシステム(例:社内ERP)と連携する場合、フローやApexでカスタムコネクタを作成します。セキュリティで最小権限原則を適用し、データの保護を行います。また、Web検索の統合により、リアルタイム情報活用で顧客満足度を向上させることも可能になります。
注意点
大規模導入時は、トピックのオーバーラップを避け、セキュリティの監査ログを定期レビューします。プロトタイプを作成してイテレーションを繰り返すことで、導入コストを抑えつつ、効果を最大化できます。
これらのポイントを実践すれば、Agentforceは単なるツールではなく、ビジネスの「デジタル労働力」へと進化します。
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