Solaris 10からSolaris 11.3に移行することで何ができるようになるの?:2021年のSolaris 10延長サポート終了に向けて
SPARC/Solarisの“新発見”を紹介する「SPARC/Solaris World」。今回は、Solaris 10からSolaris 11.3への移行プロジェクトを数多く手掛けられているCTCさまにOSのバージョンアップによってお客さまにどのようなメリットを享受できるかを詳しく聞いてきました。
今回は、CTCさまを訪問してお話を聞きました。
こんにちは。日本オラクルの吉田千華(よしだちか:写真左)と松崎穂波(まつざきほなみ:写真右)です。
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)さまは、サン・マイクロシステムズが創業した翌年(1982年)からパートナーシップを頂いてきました。私たちの大切なパートナーさまであり、SPARC/Solarisの多くの実績を持っています。
Solaris 10からSolaris 11.3への移行プロジェクトを数多く手掛けられているCTCさまは、OSのバージョンアップによってお客さまにどのようなメリットを享受できると考えているのでしょうか。
伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守事業推進本部 ITインフラ技術推進第2部 ミドルウェア技術推進第1課 課長の河合玲男さまと、同課の岩尾奈々さまにお話をお聞きしました。
サポート期間終了前にはSolaris 11へ移行しましょう。セキュリティも高まります。
――Solaris 10からSolaris 11.3への移行について、お客さまにはどのようにお話をされていますか。
岩尾氏 Solaris 10は、長期サポートが保証されているOSですが、Solaris 10は2005年にリリースされており、Premier Supportは2018年で終了してしまいます。また、SPARC M7/T7/S7などの2015年以降にリリースされた新しいサーバは、ベアメタルにSolaris 10をインストールできません。パッチに関しては、2021年まで延長保守として提供されることになっていますが、やはりセキュリティ観点から考えて、新しいOSにバージョンアップした方がよいということをサポート期間も含めてお話ししています。
――新たなOSやCPUの機能などについて、お客さまはどのような関心を持たれているのでしょうか。
河合氏 Solarisを使っているお客さまは、昔から使っているアプリケーションを安定してそのまま利用したいと考えられている場合が多いと思います。われわれとしては、今あるアプリケーションを今後も使い続けたいという要望を満たしつつ、OSをバージョンアップすることでパフォーマンスの向上やアプリケーションへの細かな設定が行えることをお客さまにお話ししています。
また、未来を見据えてビジネスの変化に迅速に対応できるように、SoE(System of Engagement)の構築などの提案も行い、SPARCの新たな機能であるSSM(Silicon Secured Memory)やData Analytics Accelerator(DAX)を有効活用することもお勧めしていますね。
岩尾氏 Solarisは11.2からOpenStackに対応していますが、UNIX OSでOpenStackに対応できるのはSolarisだけということも、お客さまは注目されているようです。
河合氏 以前は、テレコムやサービスプロバイダのお客さまが中心だったOpenStackですが、近年は製造業や流通業のお客さまも導入を検討されるようになってきたと思います。CTCとしては、お客さまへOpenStack基盤を導入した実績が幾つかありますので、このノウハウを活用してSPARC/SolarisでのOpenStack構築にも力を入れていきたいと考えています。
移行のポイントと移行事例
――Solaris 10からSolaris 11.3への移行のポイントを教えてください。
河合氏 現在ご利用のSPARC/Solaris環境の最新SPARCサーバ上への移行を検討する場合、新規サーバ上のベアメタル環境に移行するか、「Oracle VM Server for SPARC」を使った仮想環境へ移行するかが最初の選択肢として挙げられます。
Solaris上のコンテナ技術である「Oracle Solaris Zones」はどちらの場合でも利用できますので、移行対象となるアプリケーションの性質を鑑みて必要に応じて検討すれば良いでしょう。
既存環境上で利用中のカスタムアプリなどの移行は、もちろん移行先環境に合わせソースコードを改修し再ビルドしても良いですし、バイナリ互換であることを利用して再ビルドなしでそのまま移行することもできます。
こういった場合には、オラクルが提供している「Preflight Checker」というツールを用いることでアプリケーション移行の事前検証ができるので、安心して移行を進めることができます。
あるいはSolaris 11上で利用可能な「Solaris 10 Branded Zone」を使うと、既存環境をそのままP2Vで移行することが可能なため、移行作業にかかる時間を大幅に短縮することも可能です。
――実際に移行されたお客さまの事例を教えてください。
河合氏 例えば、NTTぷららさまでは、仮想化基盤を構築するために古いSolarisを当時の最新SPARCに移行して、データセンターコストの削減と、タイムリーなインフラの提供を実現しています。
この事例では、アプリケーションに手を加えたくないという要望があったため、バイナリ互換ではなく、Oracle Solaris Zonesを使ったコンテナ移行でスムーズな移行ができました。これによって、Oracle Solaris Zonesで1台当たり30〜50のVM集約率を実現し、試算で年間1億円以上のデータセンターコストを削減することが可能となっています。通常のハイパーバイザー型の仮想化では、1台当たりの集約率は10〜15程度なので、非常に高い集約率を実現したことになります。
――移行プロジェクトでCTCさまが選ばれているのは、どのような理由からですか。
河合氏 われわれは、サン・マイクロシステムズの時代からSPARC/Solarisを扱っており、技術やノウハウも培ってきているので、安心してご選定いただいていると自負しています。また、OASC(Oracle Authorized Solution Center)でしっかりとした検証を行えることや、全国約100カ所の拠点で迅速にサポートできることも選ばれている理由だと考えています。
岩尾氏 仮想化をまだ使っていないお客さまも結構いらっしゃるので、仮想化で何ができるかといった勉強会を行って、その後試してもらうためにもOASCをご活用いただいていますね。
しっかりとした仮想化のためにはSolaris 11を
――今、Solaris 10からSolaris 11.3へ移行することによって、お客さまにはどのようなメリットが生まれるとお考えですか。
岩尾氏 もちろん、新たなOS Solaris11.3とハードウェアSPARC M7やS7を使うことによって、パフォーマンスやセキュリティを向上できることが大きなメリットです。また、Solarisは、仮想化のハイパーバイザーやコンテナ、OS保守費用などの全てがハードウェア保守費用に含まれており、今バージョンアップを行えば、2031年までのPremier Supportを受けられ、延長サポートも2034年まで提供されます。
河合氏 SPARC S7は非常に安価で、お客さまからは、「これであれば、もう1台検証用に購入したい」とご評価いただいています。安価なSPARC S7にOSや仮想化などの全てが含まれるのは、非常に大きなメリットであると思います。また、Solaris 11以降では、ネットワークも含めたしっかりとした仮想化ができるようになっているので、物理サーバを集約したいと考えているのであれば、Solaris 11.3に移行した方がサポートも含めてメリットがあるとお話ししています。
岩尾氏 仮想化だけではなく、SPARC/Solarisの価値が見直されてきていると感じていますね。Linuxで社内インフラを標準化しているお客さまでも、インターネットにさらされているようなサーバは、やはりセキュリティや実績、信頼性の面で「Solarisでなければ」というご意見も頂いています。
河合氏 一時期は、SPARCはなくなっていくのではないかと不安視するエンジニアの方もいたのですが、オラクルがしっかりとした投資を続けており、新しくSPARC S7などの製品も出てきていることをお伝えして、安心してもらっています。われわれは、OASCでSPARC/Solarisのエンジニアの方々と話す機会があり、新しい情報を共有しながら、一緒に検証しているので、SPARC/Solarisがなくなることはないという実感を持っており、自信を持ってお客さまにお勧めしています。
――最後に、お客さまにメッセージをお願いします。
岩尾氏 これまでは、SoEなどの新たな分野でSPARC/Solarisを使うケースは少なかったと思いますが、新しい分野におけるフロントエンドでもSPARC/Solarisを積極的に使ってほしいですし、われわれもSSMやDAXなどの新しい機能を含めて提案していきたいと考えています。
河合氏 例えば、IoTから集めたビッグデータをHadoopで活用するときに、Open DAX APIを利用すれば、Hadoopの処理を高速化できます。これらも、しっかりと検証して、どれくらいバッチ処理の高速化が実現できるかを示していきたいと思います。われわれには、OASCという検証環境があり、有効活用していただけることで確実な移行が実現できます。これまでの実績を生かしたノウハウで、しっかりとご要望に合わせた支援を行っていきますので、移行にお悩みであれば、ぜひともお声掛けください。
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取材を終えて
吉田 OASCという検証環境があるCTCさまならではの強みが、移行という案件でも生かされていると感じました。お客さまとしても、まずは試してみないと、最新OSに移行するべきかどうかの判断もできないはずですので、悩んでいるお客さまには、CTCさまのことを勧めてみたいと思います。OpenStack基盤構築の実績もありますし、OpenStack導入を考えているお客さまにも勧めやすいです。Hadoopの処理を高速化の検証結果も楽しみです。
松崎 これまでは、どちらかというとデータを堅牢に守るSoR(System of Record)で活用されることが多いと思っていたSPARC/Solarisですが、SPARC S7やSolaris 11.3へ移行することで集約率が高まり、1台のサーバで、SoRとデータが連携しやすいSoEも構築できるようになるのではないかと思います。今後、デジタルビジネスを考えているSPARC/Solarisユーザーのお客さまに新しい提案ができるようになりました。
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