ブロックチェーンの活用で、金融機関のインフラコストを平均30%削減できる可能性:アクセンチュアが試算
アクセンチュアが金融機関におけるブロックチェーン技術の導入効果を試算した調査結果を発表。投資銀行における年間インフラコストを平均30%削減できる可能性があると試算された。
アクセンチュアは2017年2月16日、金融機関におけるブロックチェーン技術の導入効果を試算した調査結果「Banking on Blockchain: A Value Analysis for Investment Banks」を発表。ブロックチェーンの活用により、投資銀行におけるインフラコストを平均30%削減できる可能性があるという。
同調査は、ベンチマーキングサービス大手の米マクラガンと共同で、世界の投資銀行上位10行のうち、8行の詳細なコストデータを分析した結果に基づくもの。コスト削減額は8行合計で、年間80億(約9075億円)〜120億ドル(約1兆3600億円)に及ぶという。
投資銀行は、取引や顧客に関する情報などを格納した重要なデータベースを保有している。取引には、自行のデータと取引先や顧客のデータを照合し、厳格に認証する必要がある。高セキュリティが望まれ、かつエラーが許されない処理のためにシステムは複雑となり、その分慢性的に多額の運用コストが発生する課題を抱えているという。
ブロックチェーンは、暗号化と分散ネットワーク技術を活用し、書き換えや改ざんが不可能な形で何らかの記録(例えば、元帳/台帳など)を共有する技術。分散型ネットワークで改ざんが不可能な形で情報を共有できる特性から、特に金融分野での活用に期待が寄せられている。
アクセンチュアによると、ブロックチェーンの活用によって、以下の場面でコストを削減できる可能性があるという。
- 検証済みのデータソースを共有することで、データ品質と内部統制の最適化が図れる。これによって、財務報告に掛かるコストを70%削減できる可能性がある
- 取引での透明性や監査の向上によって、フロント部門やミドルバック部門のコンプライアンス対応コストを30〜50%削減できる可能性がある
- KYC(Know Your Customer)や口座開設といった機能を中央集権型オペレーションにすることで、個人情報の管理プロセスを効率化できる。銀行横断型顧客データソースを共有することで、50%のコストを削減できる可能性がある
- リコンサイル、コンファメーション、不一致分析の必要性が軽減するために、取引事務やミドルオフィス、決済、清算、調査などの業務オペレーションの運用コストが50%削減できる可能性がある
アクセンチュアの金融サービス部門ブロックチェーン専門チームでマネジング・ディレクターを務めるデイヴィッド・トリート氏はこの調査結果を踏まえ、「資本市場でのデータ照合に膨大なコストが掛かっていることを考えると、ブロックチェーン技術に多額の投資が開始されているのも理解できる。しかし、他の新技術と同様に、その投資効果をすぐ把握するのは困難だ。投資銀行の経営層には、ブロックチェーンシステムの導入に当たり、戦略見直しと運用モデルを再設計すること、そして、その手法や対象分野を示した明確なロードマップが必要だ」と提言した。
また、マクラガンのパートナーを務めるクリス・ブライン氏は、「この調査結果は、ブロックチェーン技術によって、投資銀行の今後10年間の運用コスト構造を大幅に改善できる可能性を示唆したといえる。主要投資銀行が、株主資本利益率の改善策を模索している現在、ブロックチェーン技術は重要な突破口となる可能性を秘めている」と述べた。
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