検索
連載

フラッシュを知り尽くした男が語る、ビジネスを変革できるエンジニアの条件とはGo AbekawaのGo Global!〜Matt Kixmoeller編(3/3 ページ)

全てのビジネスデータを基盤として支えるストレージ。同業界で20年以上のキャリアを持つ技術者が考える、これからのエンジニア像とは――。※日本のエンジニアへのアドバイス動画付き

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

競争力を持ったエンジニアになるために必要なこと

阿部川 仕事を行う上で、常に忘れない信念やモットーはありますか?

キックスモーラー氏 フラッシュをご支持いただいているお客さまを訪ねて、いろいろとお話を聞くのは楽しいことです。顧客のビジネスのために何をしてあげられるかについて考えることが大切だと思います。最新の技術は本当に速い速度で進み、IT業界だけではなく、さまざまな業界で活用されていくと思います。

阿部川 近年は「データをいかに価値に変えるか」というテーマが求められており、データ活用の在り方を多くの企業が見直している状況だと思います。そうした中で、エンジニアがビジネスに寄与するためには、どのようなことを意識していかなければならないでしょうか? またグローバル市場で日本のエンジニアが勝っていくためには何が必要なのでしょうか?

キックスモーラー氏 「データを活用してどのような新しいビジネスモデルが構築できるか」という視点が大切だと思います。

 「デジタルトランスフォーメーション」という概念が語られて久しいと思いますが、多くの方々が、既存ビジネスやサービスをデジタルに変えればそれで話は終わり、といったイメージをお持ちかもしれません。しかしそうしたものではないのです。

 Uberがよい例でしょう。Uberはタクシー業界のいわゆる「破壊者(disrupter)」として参入し、タクシーのビジネスを塗り変えました。現在Uberは「Uber EATS」や「Uber Freight」などのサービスも展開し、自身の導入したビジネスをも破壊して発展しようとしています。

 このようなビジネスの破壊者は今までもいましたが、今後はどれだけ大きなスケールでデータのハンドリングができ、それをビジネスモデルに昇華できるかが大切だと思います。

 それと、オープンソースの進化も忘れてはいけません。AIの開発には、例えばGoogleやMicrosoft、Facebookなどが重要な役割を担っています。彼らはAIの開発に技術的に貢献し、それをオープンにして皆が分かるようにし、その結果をコミュニティの中で無償で共有しています。このような動向をしっかり注視し、そこから自分は何ができるのだろうと考えることは非常に大切だと思います。

編集部 子どものころは、何になりたかったのですか?

キックスモーラー氏 私は自分の手を動かして、何かを作ることが好きでした。周りにある機械類は何でも分解してみて、それを再度組み立てるというようなことが好きでした。

 10歳のとき、当時隣に住んでいた親友と2人で、壊れたおもちゃを修理するお店を「開店」しました! 恐らくそれが私の最初のビジネスだったと思います。修理して仕上げるよりも壊してしまうことの方が多くて、残念ながらそのショップは長続きしませんでしたが(笑)。

 そのときはまだコンピュータに出会う前でしたが、私はからくりの付いたおもちゃや機械類が好きでした。ただ、エンジニアになりたいといった明確な目標のようなものはありませんでした。

 その後高校、大学と進むにつれ、コンピュータやインターネットが登場し、Netscape Communicationsがサービスを開始したことで多くのデジタル関連の会社が起業されました。毎日がとても楽しかったことを覚えています。デジタルカメラに夢中になることもありました。

 デジタル技術を知ることによって、とてもクリエイティブになったような気がしました。それは現在も同様で、今の立場ではテクノロジーの面がもちろん刺激的ですが、クリエイティブな面も同じように必要な仕事だと思っています。

阿部川 MITのときにエンジニアを目指したのでしょうか

キックスモーラー氏 化学工学は自分の目指すものではなかったと気付いたことは、それはそれでよかったと思います。それにシリコンバレーで仕事を見つけることができたこともラッキーでした。そこにあるエネルギーやイノベーションの潮流といったようなものに触れて仕事ができることは、本当に素晴らしいと思います。

Go's think aloud 〜インタビューを終えて〜

 大学教育を終えてから現在まで、そのキャリアをこのストレージ業界で過ごしてきたから、キャリアそのものは既に20年近い。若さとキャリアをともに兼ね備えている。同業界のテクノロジーの衰退と発展、企業の浮き沈みも間近で見てきた。若くとも歴史を知っている。それはとても頼もしい。

 ビッグデータや仮想化といったテーマが騒がしい昨今だが、それを支えるデータの基盤、もっといえばデータそのものがなければ、文字通り言葉の理想で終わる。ストレージとセキュリティは現在のIT業界を根底から支えている。インタビュー中に「We are lucky」という表現を何度も使っていた。それは、技術においてもビジネスモデルにおいても、この業界でリーダーとして走ってきた、自信に裏づけられた嫌みのない謙遜に聞こえた。

 人懐っこく見せた笑顔が、MITでの一本気な学生時代をほうふつとさせてくれた。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

ご連絡はこちらまで

@IT自分戦略研究所 Facebook@IT自分戦略研究所 Twitter電子メール


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る