自分の中でイノベーションを起こせ──セキュリティ・キャンプ全国大会2017が抱かせた「好奇心」の真の意図:セキュリティが得意な「次世代」が集った5日間(1/2 ページ)
2017年8月、情報セキュリティをけん引する人材の発掘と育成を目指す「セキュリティ・キャンプ全国大会2017」が開催された。今回は2016年大会のほぼ倍となる82人の学生と生徒が参加し、先端知識と技術を学んだ。
2017年8月14日から4泊5日の日程で、セキュリティ・キャンプ実施協議会と情報処理推進機構(IPA)が主催した「セキュリティ・キャンプ全国大会2017」が開催された。
セキュリティ・キャンプ全国大会(以下、セキュリティ・キャンプ)は、情報セキュリティに関心を抱く若年層を対象に、4泊5日の合宿を通じて普段の授業や独学では得られにくい“濃い”内容の講義を行い、次世代を担う人材を発掘、育成することを目的とした取り組みだ。今回は前回2016年大会のほぼ倍となる82人が参加し、それぞれの関心に沿った講義を通じてコンピュータアーキテクチャやネットワークへの理解を深めた。
キャンプの目的は人材発掘と育成。人が育つ最大のトリガーは「好奇心」だろう。ラックの社長でセキュリティ・キャンプ実施協議会会長を務めた西本逸郎氏は開講式で、「この5日間、皆さんの体の中でイノベーション、すなわち何らかの変化、化学反応を引き起こしてほしい。セキュリティは1つの事柄だけでは成り立たない。自分の中の変化をワクワクしながら楽しんでほしい」と参加者に呼び掛けたが、その通りのことが起こったようだ。
セキュリティ・キャンプのカリキュラムは年々改善が加えられている。今回は、コマ単位で講義を選択できる「選択コース」の他に、「ものづくり」をテーマに3日間を通して同一の課題に取り組む「集中コース」も用意し、どっぷりと専門知識を学べるようにした。これは一時期開催された「セキュリティ&プログラミングキャンプ」に近いイメージといえる。
集中コースは、カーネルやCPUなどのハードウェアに近い低レイヤーをカバーする内容が中心だ。参加者はもくもくと手を動かし、マニュアルを参照してはまた手を動かし……と熱心に課題に取り組み、セキュリティに限らずモノ作りの基礎となるコンピュータの深層を学んだ。
その一方で、「サイバー犯罪捜査の現場」と題する講義では、デジタルフォレンジックの作業だけでなく、千葉県警察による家宅捜索と証拠の差し押さえといった、解析に至る前の捜査活動も模擬的に体験した。手帳のメモ書きなどアナログな情報も活用しながらデジタルフォレンジックを進め、普段の生活ではなかなか触れられないサイバー犯罪捜査の一端に触れた有意義な講義となったようだ。
「サイバー犯罪捜査の現場」と題する講義では、千葉県警の協力を得て、デジタルフォレンジックに至る前の家宅捜索を体験した
他にも、CPU/FPGA(Field-Programmable Gate Array)からカーネル、Webアプリケーション、暗号技術、認証/ID連携、Androidアプリ、組み込み機器、車載機器、機械学習の応用……と、幅もレイヤーも多彩な講義が行われた。「時間が重なってしまったあの講義も受けたかった」といった声が多く聞かれ、「ぜひVR(Virtual Reality:仮想現実)によるキャンプを実現したい。時間にとらわれることなく、いつでも振り返りができるから」と提言した受講者もいた。この「好奇心」だけでも業界としては大きな収穫といえる。
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