さらに進化したWindows 10の企業向け展開――Sysprepを代替/補完する「プロビジョニングパッケージ」と「Windows AutoPilot」:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(16)(1/2 ページ)
Windows 10では、コンピュータやデバイスのための新しい展開技術として「プロビジョニングパッケージ」がサポートされます。Windows 10 バージョン1709(Fall Creators Update)では「Windows AutoPilot」という新機能も追加されました。従来のイメージベースの展開を置き換える、または補完する展開技術を紹介します。
企業クライアントの展開、イメージ展開からの脱却のすすめ
企業のクライアントPCを新規に大量導入したり、リプレースしたりする場合、Windowsのインストールと設定、業務用のアプリケーションを含むイメージを準備して、ネットワークや光学メディアを使用してイメージ展開するのが従来の方法でした。
Windowsのイメージは、マスターコンピュータを構成して「システム準備ツール(Sysprep)」で一般化した後、そのイメージをキャプチャーして、システム設定のための「無人応答ファイル(Unattend.xml)」とともにベアメタル展開するのが一般的です。
Microsoftはそのタスクを支援するツールとして「Windowsアセスメント&デプロイメントキット(Windows ADK)」や「Microsoft Deployment Toolkit(MDT)」を無償提供しています。Windows ADKは、以前「Windows自動インストールキット(Windows AIK)」と呼ばれていたツールの後継になります。
- Windowsアセスメント&デプロイメントキット(Windows ADK)(Microsoft Hardware Dev Center)
- Microsoft Deployment Toolkit(MDT)[英語](Microsoft Download Center)
無人応答ファイルは、テキストエディタで作成、編集することができます。また、Windows ADKに含まれる「Windowsシステムイメージマネージャー(Windows SIM)」を使用して作成、検証することもできます(画面1)。
Windows 10でも引き続き、Sysprepと無人応答ファイルによるイメージ展開が可能です。しかし、従来の無人応答ファイルだけでは、Windows 10で追加された新しい構成を詳細に実装するのは困難です。
例えば、応答ファイルへの実装が難しいのは、無線LANのSSIDの設定やAzure Active Directory(Azure AD)参加設定、Cortanaの構成、アプリケーションのインストールなどです。また、Windows 10は定期的に更新され、既定(半期チャネル(ターゲット指定)の場合)では半年ごとに新バージョンにアップグレードされます。そのため、Windowsやアプリケーションの新しい更新プログラムを含むイメージを保守し続ける作業は、決して効率的とはいえません。
Windows 10の新しいWindowsプロビジョニングフレームワーク
Windows 10には、Sysprepに代わる、あるいは補完する新しい「Windowsプロビジョニングフレームワーク」が用意されています。このフレームワークは、コンピュータ向けのWindows 10エディション(Homeを含む)だけでなく、Windows 10 Mobile、Windows 10 IoT Core、Surface Hub、Microsoft HoloLensなどに共通であり、「プロビジョニングパッケージ」(拡張子.ppkg)を使用してWindowsの展開や設定をカスタマイズし、自動または手動で展開できるようにします。
新しいフレームワークは、Windows 10用のWindows ADKに含まれる「Windows構成デザイナー」というツールを使用します。以前は「Windowsイメージングおよび構成デザイナー(Windows ICD)」と呼ばれていましたが、現在では前述のWindows SIMなど、他のイメージツールと合わせてWindows ICDと呼ばれています。
- Windowsイメージングおよび構成デザイナー(Microsoft Hardware Dev Center)
最新のWindows構成デザイナーを利用すると「デスクトップデバイス」「キオスクデバイス」「モバイルデバイス」「Surface Hubデバイス」の4つのシナリオから選択して、ウィザードベースでプロビジョニングパッケージを作成できます(画面2、画面3)。
例えば、「デスクトップデバイス」の場合は、コンピュータ名の命名規則、プロダクトID、プリインストールアプリの削除、無線LAN設定、Active Directoryドメイン参加設定またはAzure AD参加設定またはローカル管理者設定、アプリケーションのインストール(複数のインストーラーの指定)、ルート証明書のインストールを構成することができます。スタートページで「プロビジョニングの詳細設定」を選択すれば、Windows 10で構成可能な全ての項目を詳細にカスタマイズすることも可能です。
Windows構成デザイナーには「Microsoft Store」(旧称、Windowsストア)から入手可能なユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリ版もありますが、本稿執筆時点では英語のみのサポートとなっています。日本語を含む各国語に対応するには、Windows ADKに付属するものを使用する必要があります(画面4)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Microsoft、業務PC自動セットアップツール「Windows AutoPilot」を提供
Microsoftは「Windows 10 Fall Creators Update」で、IT管理者向けに組織内へのPC展開と管理を容易にする一連の新機能「Windows AutoPilot」を提供する。 - Windows 10 Fall Creators Updateに搭載される「次世代」のセキュリティ機能
Microsoftが「Windows 10 Fall Creators Update」に搭載する次世代セキュリティ機能を紹介。「Windows Defender ATP」に含まれるツールを大幅に拡充することを明らかにした。 - 「Windows 10 Fall Creators Update」に搭載される新機能まとめ
マイクロソフトはWindowsの次期大型アップデート「Windows 10 Fall Creators Update」を2017年後半にリリースすると発表。Windows MRやiOS/Androidも包括したマルチプラットフォーム対応など、コンシューマー/技術者それぞれに向けた新機能を多数リリースする。 - Windows 10 Creators Updateがやってきた!――確実にアップグレードする方法を再確認
2017年4月6日(日本時間、以下同)、Windows 10の最新バージョンである「Windows 10 Creators Update」が正式にリリースされ、利用可能になりました。4月12日からはWindows Updateを通じた配布が段階的に始まります。