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えふしん×シバタナオキ対談 伸びるエンジニアが持つ「哲学と数字感覚」自分たちが決断できないことをユーザーに委ねるのはやめろ(2/3 ページ)

これからの時代は、エンジニアも数字を意識しないとダメ?――モバツイで経営を経験したえふしんこと藤川真一氏と、ベストセラー『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の著者シバタナオキ氏が、なぜエンジニアは数字を味方に付けなければならないのかを探った。

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モバツイ運営で学んだ「聞き心地のいい数字」の怖さ

シバタ エンジニアは、どうしても「できること」「やりたいこと」から入ろうとしますしね。

えふしん そうなんですよ。以前、「エンジニアが作るネットサービスのアイデアがしょぼいワケ」という記事を書いて、そこそこバズったんですけど、そのときに思っていた課題意識もまさにそれでして。

 エンジニアは職業柄、実現不可能だと思うアイデアを削ってしまうというか、「できること」を積み上げていくやり方が染み付いているんですよね。これを意識的に取っ払う何かをしないと、一部の天才を除いて、ビジネス面ではインパクトの小さなプロダクトしか作れなくなってしまう。

シバタ おっしゃる通りです。

えふしん これは後で気付いたんですが、僕がやっていたモバツイも、実は「できること」を積み上げていって生まれたものなんです。

 当時のTwitterクライアントで使い勝手が悪かったところを解決していったら、おかげさまでいろんな人に使ってもらえました。ただ、そこから先の事業展開がうまくいかなくなってしまったのは、僕の「見誤り」があったからなんです。

シバタ その見誤りが何だったか、お聞きしてもよろしいですか?

えふしん 一番はスマホシフトの波に乗れなかったことですね。モバツイは2007年にリリースしたんですけど、当時は米国でiPhoneが出たばかりで、日本ではやるかどうかもよく分からない状態でした。

 実際、その後の2〜3年くらいは、まだガラケーユーザーが全モバイルユーザーの6割ぐらいを占めていました。日本の「ガラケーの山」は当面崩れないだろうという予測もあった。でも、結果は違いましたよね?

 あのときは、聞き心地のいい数字をうのみにしてしまったな、と。

シバタ 「聞き心地のいい数字」ですか。

えふしん ええ。モバツイは広告が収入源だったので、ビジネスとしてはユーザーと広告主双方のアテンションが重要でした。それがどんどんスマホに移っていたという変化をしっかりキャッチアップしていれば、もっと早くに手が打てたはずです。

シバタ 経営者としてそういう経験をされたことは、今のBASEでの仕事に生かされていますか?

えふしん はい。「ビジネスモデルとしてどうすればいいのか?」を真剣に学ぶようになりましたね。エンジニアとして目の前のイシューを1つ1つ改善していくのも確かに大切なんですけど、より大きな視点が持てるようになったというか。

 BASEには、創業者の鶴岡(鶴岡裕太氏 BASE代表取締役CEO)の、「無料で誰でも簡単にネットショップを開設できるようにすることでECのハードルを下げ、価値の交換をよりシンプルにする」というビジョンがあります。

 ですから、ショップ出店の登録料や月額・年額料金を無料にするのはビジョンとして変えてはいけない部分です。となると、流通総額を増やして、決済手数料などを頂くことで成長するしかない。

 じゃあそのために何をやればいいのか、を真剣に考えるようになりました。


シバタナオキ氏
元「楽天」執行役員、東京大学工学系研究科助教、スタンフォード大学客員研究員。東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。スタートアップを経営する傍ら、noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。2017年7月に書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(日経BP社)を発刊。

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