「Enterprise Ethereum」はなぜできた? 「Ethereum」のビジネス活用の問題点とは:Ethereumではじめる“スマートコントラクト開発”(3)(2/2 ページ)
「Ethereum」がブロックチェーン技術、スマートコントラクト技術の1つとして企業に注目されている。しかし、Ethereumをビジネスで活用するにはさまざまな課題がある。そこで今回は、「企業向けスマートコントラクト」の要件を考えてみたい。
Enterprise Ethereum
Enterprise Ethereum Alliance
2017年2月に、「Enterprise Ethereum」の標準仕様策定やユースケース共有などを目的とした組織であるEnterprise Ethereum Alliance(EEA)が設立されました。Enterprise Ethereumは、Ethereumをベースに、Ethereumと互換性を保ちながら企業用途に特化するスマートコントラクト技術です。
エントリー「The Birth of Enterprise Ethereum in 2017」には、「企業は企業向けスマートコントラクトの課題を解決するために、Ethereumをフォークした独自実装か、独自のベンダー拡張機能に依存してきた。しかしそれが結果として、アプリケーション移植性の欠如、コードベースの断片化、ベンダーロックインなどの欠点につながった」と、EEAが誕生した背景が書かれています。
現在EEAには、IT業界や金融業界における国際的な大企業や、ブロックチェーン関連の技術開発に特化した企業など、150社以上が参加しています。
EEAにとってEnterprise Ethereumとは
EEAは、資料「Introduction to Enterprise Ethereum Alliance」でEnterprise Ethereumを次のように説明しています。
Enterprise Ethereum will:
- Be an open source standard, not a product
- Address enterprise deployment requirements
- Evolve in tandem with advances in public Ethereum
- Leverage existing standards (ISO/SWIFT/etc.)
1点目で、Enterprise Ethereumはオープンソースの標準であり、ソフトウェア製品ではないことを明記しています。3点目で、企業向けとして独自路線を行くのではなく、Ethereumの進化を取り込んでいくことを記載しています。
筆者は、EEAの活動に対して非常に期待しており、企業向けのさまざまなノウハウ公開も含め、今後の動向に注目しています。
またEEAの活動は、Enterprise Ethereumの標準策定にとどまらずレファレンス実装も行っています。執筆時点におけるEnterprise Ethereum実装モデルとして、EEAの創立メンバー企業でもあるJPモルガンが開発した「Quorum」があります。
次回は、この「Quorum」について紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スマートコントラクトって何? 「競合との協業」という新たなビジネスの地平を開ける仕組みである理由とは
本連載では、「Ethereum」を使った契約の条件確認や履行などを自動で行う「スマートコントラクト」の開発方法を紹介していきます。第1回目は、スマートコントラクトとは、どのような仕組みで、どのような場面で使えるのかを紹介します。 - 手軽に“Solidity”言語でスマートコントラクト開発、開発環境「Remix」ってどう使う?
Ethereumでスマートコントラクトを開発する場合、何を準備して開発すればいいのだろうか。本稿では、コンパイラ兼統合開発環境である「Remix」をサンプルコードと一緒に紹介する。 - ブロックチェーン技術「Ethereum」とは何か、アプリのアーキテクチャはどう変わるのか
リクルートテクノロジーズの社内ラボで行っている、主に非金融領域に対するブロックチェーンの活用に向けたR&Dを紹介する連載。今回は、スクリプティング機能をより広汎に使える形にしたブロックチェーンの構築を目指したオープンソースソフトウェア「Ethereum」を利用し、「履歴書データベース」として実装した課程と、その結果を紹介。