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5年後に汎用量子コンピュータ登場か、IBM、Google、Microsoftが先陣――NRI、「ITロードマップ 2018年版」を発表

野村総合研究所(NRI)は、今後のビジネスや社会に影響を及ぼすIT技術について、数年先までの動向をまとめた「ITロードマップ 2018年版」を発表。AI進化の切り札となる「量子コンピュータ」については、2024年度以降に汎用化と予測する。

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 野村総合研究所(NRI)は2018年3月8日、これからのビジネスや社会に広く普及し、さまざまな影響を及ぼすと考えられる情報通信関連の技術が2018年以降、どのように進展し、実用化されるかを予測した「ITロードマップ 2018年版」を発表した。ロードマップの詳細は、同年3月9日に発売される書籍『ITロードマップ2018年版〜情報通信技術は5年後こう変わる!〜』に掲載される。

 ITロードマップ 2018年版で取り上げたのは、「AI(人工知能)」「AIアシスタントデバイス」「エンタープライズ・チャットプラットフォーム」「VR(Virtual Reality:仮想現実)/AR(Augmented Reality:拡張現実)」「量子コンピュータ」「金融×AI(金融分野におけるAI活用)」「ロボアドバイザー2.0.」「マーケティング×AI(マーケティング分野におけるAI活用)」の8項目。

 さらに、年々重要度が高まっているセキュリティ技術から、「IDと認証セキュリティ」「APIセキュリティ」「ブロックチェーンにおけるセキュリティ」の3項目を取り上げた。

 中でも、AIの進化の切り札といえる「量子コンピュータ」については、以下のように概要を公表した。

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量子コンピュータ関連のロードマップ

スーパーコンピュータでも解けない問題や、未知なる領域への適用に期待が高まる

 量子コンピュータのアイデアは、ノーベル物理学賞を受賞した米国の理論物理学者、故リチャード・ファインマン博士によって1982年に提唱されたもの。その後、技術開発の難しさに加え、日本では景気の後退も重なって企業の撤退が相次いだが、現在、再び注目を集めている。

 その理由は、カナダの量子コンピュータ企業D-Wave Systems(以下、D-Wave)が「量子アニーリング型コンピュータ」を2011年に商用化したこと。さらに2015年には、GoogleとNASA(アメリカ航空宇宙局)がこのコンピュータを使って、「1000個の変数を持つ『組み合わせ最適化問題』を、従来のコンピュータと比べて最大1億倍の速さで解いた」という研究成果を発表したことにある。

 以降、国内外の研究機関やITベンダーが量子コンピュータの開発に再び注力し始めており、将来的には、新素材や新薬の発見につながる分子や化学相互作用の解明、量子物理学の法則を活用した暗号方式など、スーパーコンピュータでも解けない問題や、未知なる領域への適用が期待されている。

2017年度まで:量子アニーリング型コンピュータの登場と利用シーンの探索

 2017年度は、海外に続き国内でも、D-Waveの量子コンピュータを利用した組み合わせ最適化問題の実適用に向けた研究が始まった。ほとんどの企業にとって、量子コンピュータは未知の技術であり、企業はD-Waveを利用できるようになったものの、どのようなビジネス上の問題を解決できるのか、どのように問題を実装すればよいか分からないといった課題があった。そこで、量子アニーリングの研究を行う国内の大学などと共同し、利用シーンの探査に取り組むのがこの時期の特徴になった。

2018〜2022年度:黎明期 量子アニーリング型コンピュータを用いたAI研究の進展と量子超越性の実現

 D-Waveに加え、内閣府の産学官連携プロジェクト「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」で開発されたレーザーネットワーク型コンピュータがクラウド環境で公開されるなど、アナログ方式の量子コンピュータの活用が活発化する。

 これにより、組み合わせ最適化問題やアプリケーションの研究が進み、車の自動運転のための画像認識や渋滞予測のための経路最適化、消費者向けの広告配信に必要な属性分類の最適化をはじめとした研究成果が多数登場すると予想される。

 2020年以降には、IBM、Googleなどによる「量子ゲート型コンピュータ」のクラウドサービスが始まる見込み。両社が提供する予定の50量子ビットの量子コンピュータは、理論上はペタフロップス(FLOPS)級のスーパーコンピュータの演算能力を持ち、従来のコンピュータをしのぐ「量子超越性」を実現する可能性がある。

2024年度以降:発展期 汎用量子コンピュータの実現に向けた研究の進展

 量子超越性が実現した先には、さまざまな問題に利用可能な「汎用量子コンピュータ」の登場が期待される。しかし、超電導体を絶対零度(マイナス273度)に近い温度まで冷却し、量子の状態を安定させてコントロールする量子ゲート型の量子コンピュータは、外部からのノイズなどの影響を受けやすく、なかなか量子状態が安定しないという課題がある。

 特に、コンピュータの大規模化を進めるに当たり、計算で利用する量子ビットを増やせば増やすほど、エラーの発生確率は高くなるため、汎用量子コンピュータの実現に必要となる高い計算能力とエラー耐性の両立が実現するまでには、研究開発にかなりの時間を要すると予想される。

 この課題に対し、Microsoftは量子の状態が安定しやすい「トポロジカル量子コンピュータ」の開発を進めており、今後、IBM、Googleに続く第三の勢力として研究開発をリードしていくと予想される。

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