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IoTへの決断力や人材不足を懸念する日本企業の現状が明らかに――ガートナーが調査結果を発表半分以上の企業が「人材が不足している」と回答

ガートナー ジャパンは、日本企業によるIoTへの取り組みに関する調査結果を発表した。企業はIoTがビジネスに大きな変革をもたらすと期待している一方で、IoTを推進する人材不足や技術の成熟度などに懸念を抱いている実態が明らかになった。

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 ガートナー ジャパンは2018年4月17日、日本企業によるIoT(Internet of Things)への取り組みに関する調査結果を発表した。対象は、日本全国の従業員数500人以上の企業で、ITインフラストラクチャに関わるマネジャーに回答を求めた。その結果、企業はIoTがビジネスに大きな変革をもたらすと期待している一方で、経営者のIoTに対する理解やビジネス変革への決断、IoTを推進する人材の不足、技術の成熟度などに懸念を抱いている実態が明らかになったという。

 まず、「自社のIoT推進体制に関して慣習やルールを刷新する決断力」を尋ねたところ、調査対象企業全体の57.7%が「足りない」と感じていた。IoTの推進体制を確立済みだとしている企業に限ってみると、決断力が足りないと回答した割合は80.3%に上った。


慣習やルールを刷新する決断力が足りないと感じているか(出典:ガートナー ジャパン)

 次に、「IoT技術に関する人材」について尋ねたところ、「人材が不足している」と回答した割合は、前問と同様にIoTの推進体制を確立済みの企業の方が多かった。具体的には、人材不足を感じている企業の割合は、全体で52.4%なのに対して、IoTの推進体制を確立済みの企業では68.9%だった。


テクノロジー人材が不足していると感じているか(出典:ガートナー ジャパン)

 IoTの関連技術への関心と取り組みについての質問では、全体としては特定の技術に関心が偏ったり、検討が進んだりしているわけではなかった。実際に検証を始めている技術としては、「デバイスの内部あるいは環境を把握するセンシングテクノロジー」や「プライバシーを保護するテクノロジー」「デバイスをコントロールする制御テクノロジー」などを挙げる企業が多かった。

 ただし、「関心はあるがテクノロジーが未成熟なため手が付けられない」または「関心はあるがテクノロジーの分かる人材がいないため手を付けられない」と回答した企業が、実際に検証を始めている企業の2倍以上に及んだ。


IoTの実装に関わるさまざまなテクノロジーへの取組状況(出典:ガートナー ジャパン)

 こうした結果について、ガートナー ジャパンでリサーチ&アドバイザリ部門のバイス プレジデントを務める池田武史氏は、「IoTは、多くの企業がこれまで経験したことのないビジネススキームの変革や、新たな技術への挑戦となる重要な取り組みだ。そのため、まずは要員を確保し、経験を積んでから前進しようと考えるものの、人材を十分に集められず、取り組むこと自体にちゅうちょしている企業の現状が、今回の調査結果には映し出された」と述べている。

 「ビジネススキームの変革には、既存のルールや慣習を見直す決断が伴う。そうした選択は、経営者の強い決断力が求められる。今回の結果には、変革を進めようとするものの準備や環境が思うように整わず、IoT推進の理想と現実のギャップに苦慮する日本企業の姿も表れた。特に、IoTの推進体制を確立した企業ほど、決断力や技術人材の不足を痛感している結果が出た点は興味深い」

 また池田氏は、IoTの関連技術への取り組みについて次のように話す。

 「IoTの実現には、センシング、ネットワーク、アナリシス、フィードバックなどさまざまな技術が関連する。求めるビジネスシナリオに従って適材適所の技術を選択する必要があるが、全ての技術が成熟しているわけではない。また自社や取引のあるベンダーが全技術を提供できるわけでもない。技術に関心を持ちながらも、手を付けられないと回答した企業が目立つ。IoTを実現するに当たり、あらゆるものを自社のリソースで賄うことを目標にするのは現実的ではない。IT業界の技術人材を積極的に採用するといった選択肢を考慮すべきだ」

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