MicrosoftがGitHubを買収、「10年前には想像もしなかった」とGitHubの共同創設者:なぜ買収される決断をしたか
Microsoftは2018年6月4日(米国時間)、開発者のためのコード共有/共同作業プラットフォームサービスを運営するGitHubを買収すると発表した。GitHubの共同創設者でCEOクリス・ワンストラス氏のコメントをまとめた。
Microsoftは2018年6月4日(米国時間)、開発者のためのコード共有/共同作業プラットフォームサービスを運営するGitHubを買収すると発表した。買収プロセスは2018年末までに完了の見通し。買収完了後も、GitHubは独立したオペレーションを継続するという。
同社は過去1年近くにわたり、CEOを探していた。買収が完了すれば、Microsoftのデベロッパーサービス担当コーポレート・バイスプレジデントであるナット・フリードマン氏が就任の予定。
GitHub創設者の1人で、現在暫定的にCEOを務めているクリス・ワンストラス氏はマイクロソフトのテクニカルフェローに就任し、「戦略的ソフトウエアイニシアチブ」を担当するという。フリードマン氏とワンストラス氏は、マイクロソフトのクラウド&AI担当エグゼクティブバイスプレジデントであるスコット・ガスリー氏直属の部下になる。ワンストラス氏は、今後もGitHubのチームおよびフリードマン氏と緊密に連携して活動していくという。
ワンストラス氏は今回の買収に関するブログポストで、次のように述べている。
「10年前にGitHubが始まった頃、私はこのような見出しを全く想像できなかった。Gitは強力だがニッチなツールだった。クラウドは空の上の存在でしかなかった。そしてMicrosoftは(現在とは)全く異なる企業だった。当時、『オープンソースとビジネスは水と油の関係だ』と言われていた」
左より、クリス・ワンストラス氏(GitHub共同創設者、現CEO)、ナット・フリードマン氏(Microsoft デベロッパーサービス担当コーポレート・バイスプレジデント)、サティヤ・ナデラ氏(Microsoft CEO)、エイミー・フッド氏(Microsoft CFO)
ワンストラス氏は、「オープンソースとビジネスが両立しない」という誤解を解くことが、GitHubの目的だったと振り返っている。
「私たち開発者が必要としていたのは、コードがパブリックなスペース、プライベートなスペース、その間のどこにあっても、他の人たちとの共同作業がやりやすくなる方法だった。私たちはGitを使って、これを実現しようとした。世界中の誰もが参加できるようなもの、オープンソースであれば1セントも払わずに使えるものが欲しかった。だから私たちは、GitHubを作った」
現在の状況は、当時とは全く異なるとワンストラス氏は続けている。マイクロソフトはオープンソースに注力し、GitHubにおいて最もアクティブな組織となった。同社によるオープンソースプロジェクトVS Codeだけでも、数百万の開発者を集めるまでになった。
一方、変わっていないのはGitHubの、「経験レベルに関係なく、あらゆる開発者が効率的に学び、コーディングし、ソフトウェアを世に送り出せるよう手助けをする」という使命だとする。
「10年後、さらにその先のソフトウェア開発を考えれば、全てが開発者のためにあるべきだと私たちは知っている。過去数年間にわたり、Git LFSからElectronまで、幾つかのプロジェクトでMicrosoftのチームと協力し合ってきた過程で、彼らが私たちと同じ考えを持っていることを知った。彼らがオープンソースに関して成し遂げたことは私たちを奮い立たせた。MinecraftやLinkedInの買収を成功させた実績は、彼らが新しい事業をうまく育てることに真剣であることを示した。そしてAzureの成功は、これが革新的な開発プラットフォームだと実証した」
「しかしそれ以上に、彼らの将来に向けたビジョンは私たちのものと密接に一致している。 われわれは、GitHubが全ての開発者にとって、オープンなプラットフォームである必要があると信じている。あなたの言語、スタック、プラットフォーム、クラウド、ライセンスに関わらず、GitHubはあなたの家であり続けるだろう。ソフトウェアの作成、コラボレーション、発見のための最良の場所だ」
「両社とも、ソフトウェア開発がもっと容易になり、取り組みやすくなり、よりインテリジェントになり、よりオープンになるべきだと考えている。そうすれば、もっと多くの人たちが開発者になれ、既存の開発者は、自身が解決しようとしている問題に集中するために、より多くの時間を割ける。(中略)両社とも、物事を単独でやるよりも一緒にやる方が、素晴らしいことができると信じている」
Microsoftは買収完了後、次の3点に取り組むことを明らかにしている。
- 構想からデプロイメントに至るまで、開発ライフサイクルの全段階にわたり開発者を支援。開発者が、自身の好む言語、ツール、OSを使って開発し、あらゆるクラウドやデバイスにデプロイできる環境を発展させる
- 企業内開発者によるGitHubの利用を促進する
- Microsoftの開発者向けツール/サービスを新たなオーディエンスに提供する
MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラ氏は、同氏のブログポストで、次のように述べている。
「最も重要な点として、私たちはこの合意によって負う責任を認識している。 私たちは、GitHubコミュニティに仕えていくことを約束する。GitHubコミュニティは、開発者ファーストの気風を保ち、独立して運営され、オープンなプラットフォームを維持する。 私たちは常に開発者の声に耳を傾け、基本的な部分と新しい機能の双方に投資していく」
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