「情報銀行」を日立など6社が実証実験、本人同意下で個人データの流通を目指す:消費電力や活動量データを扱う
日立製作所など6社は、「情報銀行」の実証実験を開始した。情報銀行が個人データを収集、管理、提供する仕組みや、個人データを活用したサービスの実現可能性を検証する。今回の結果を基に、政府が定めた情報銀行認定基準の改善案を提示する。
日立製作所と日立コンサルティング、インフォメティス、東京海上日動火災保険、日本郵便、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムは2018年9月10日、「情報銀行」の実証実験を開始したと発表した。
情報銀行は、パーソナルデータの円滑な流通を実現するため、政府が議論を進めてきたこれまで国内には存在していない新しいサービスの一つ。個人データを所有者の管理下で他の事業者に提供する事業である。
2018年6月には、認定基準などが「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」としてとりまとめられている。個人データをビジネスに利用する際の安全性や透明性を確保することが目的だ。
実証実験では電力データや活動量データを扱う
今回の実証実験では、情報銀行が個人データを収集、管理、提供する仕組みや、個人データを活用したサービスの実現可能性を検証する。
取り扱う個人データは、性別や世帯構成、各家庭の電力使用量、個人の活動量データなど。IoT(Internet of Things)が今後普及することを見越し、各種センサーのデータも扱う。実証実験を実施する各社では、今回の実証実験の結果を基に、信頼できる情報銀行の条件を整理し、認定基準の改善案を提示するとしている。
今回の実証実験における参加各社の役割は次の通り。
日立製作所は情報銀行事業者として、実証実験に参加する社員200人の募集と情報銀行システムの構築、運営を担当する。参加者のデータを保有するデータ保有者にもなり、参加者の活動量センサーから得られる健康データや収入データを本人の同意の下で情報銀行に提供する。情報銀行の運用上の課題を抽出し、解決策を検討する役割も担う。さらに参加者のデータ提供に対する受容性について、アンケートを通じて分析する。
日立コンサルティングは、情報銀行が個人やデータ保有者、データ利用者との間で締結する契約書のひな型となるモデル約款の適切性を検証する。モデル約款は「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」で公開されているもの。加えて、政府がまとめた認定基準の妥当性についても検討する。
インフォメティスは、参加者の各家庭に電力センサーを設置し、データ保有者となる。センサーから収集した電力データを、情報銀行に提供する。
東京海上日動火災保険と日本郵便は、データ利用者として情報銀行から提供されるデータを使う。それぞれ、家電向けの保険やサービスの開発可能性や、在宅率に応じた宅配ルートの改善可能性を検討する。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムもデータ利用者として、プロファイルに基づくWeb広告の配信効果を検証する。
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