開発やテストに適した、コスト効率に優れたAzure仮想マシン「Bシリーズ」:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(64)
Azure仮想マシンの汎用向けVMシリーズで2017年末から利用可能になった「Bシリーズ」は、常に高いCPU使用率を必要としないワークロード向けの、コスト効率に優れたシリーズです。特に、開発やテストに最適であり、他のシリーズにはない、CPUとメモリのバランスが良いサイズも用意されています。
汎用Azure VMシリーズに追加された「Bシリーズ」とは?
Azure仮想マシン(VM)には、実行するワークロードの種類に応じて、「汎用(A、D)」「コンピューティング最適化(D)」「メモリ最適化(E、M、Gなど)」「GPU最適化(NC、NV)」「ハイパフォーマンスコンピューティング(H)」といったVMシリーズが用意されています。各シリーズでは、仮想CPU(vCPU)数やメモリ容量、その他の要件の異なる複数のサイズが提供されています。
「Bシリーズ」は、汎用向けのVMシリーズとして、2017年9月にプレビュー提供が始まり、2017年12月に西日本を含む一部リージョンから正式提供が開始された、比較的新しいVMシリーズです。現在は、一般向けのほとんど全てのリージョンで利用可能です(画面1)。
なお、Bシリーズでは、VMストレージとして「Premium SSD」を使用する必要があります。また、Bシリーズは「Azure Resource Manager(ARM)」デプロイモデルでのみ利用可能であり、クラシックデプロイモデルでは利用できません。
- BシリーズおよびMシリーズの一般提供を開始(Microsoft TechNet:ITプロフェッショナルのみなさまへ)
- 負荷の急増に対応できるBシリーズ仮想マシンのサイズ(Microsoft Azure)
Bシリーズの特徴は、常に高いCPUパフォーマンスを必要としないワークロード向けに、低コストで一定のCPUパフォーマンスの提供を約束しながらも、急激なCPU使用率の増加にも対応できるようにするため「クレジットの消費と蓄積」という考え方が導入されているところにあります。
例えば、「B2s」サイズは2CPU、4GBメモリのスペックで、基準のCPU使用率が40%(1CPU当たり20%)に設定されています。実際のCPU使用率(1時間平均)が基準より下回るとクレジットが蓄積され、高いCPUパフォーマンスを必要とする場合は蓄積されたクレジットを消費して基準以上〜最大のCPUパフォーマンス(B2sサイズの場合は2CPUで最大の200%)を利用できます(表1)。一方、Bシリーズ以外の通常のシリーズは、実際のCPU使用率に関係なく単価が決まっているため、同様のスペックで比較するとBシリーズより若干高い価格設定になっています。
サイズ | vCPU | メモリ | ローカル SSD(一時) |
基準CPU 性能 |
最大CPU 性能 |
蓄積クレジット /時間 |
蓄積可能な 最大クレジット |
月額(推定) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
B1s | 1 | 1GB | 4GB | 10% | 100% | 6 | 144 | 1333円 |
B1ms | 1 | 2GB | 4GB | 20% | 100% | 12 | 288 | 2666円 |
B2s | 2 | 4GB | 8GB | 40% | 200% | 24 | 576 | 5333円 |
B2ms | 2 | 8GB | 16GB | 60% | 200% | 36 | 864 | 1万666円 |
B4ms | 4 | 16GB | 32GB | 90% | 400% | 54 | 1296 | 2万1332円 |
B8ms | 8 | 32GB | 64GB | 135% | 800% | 81 | 1944 | 4万2664円 |
表1 Bシリーズのサイズのスペックと基準となるCPU使用率 |
クレジットの消費と蓄積を確認するには?
Microsoft Azureのドキュメントによると、「Webサーバ、小規模なデータベース、開発とテスト環境など、CPUが常時最大限のパフォーマンスを発揮する必要のないワークロードでは、BシリーズVMが最適」と説明されています。
例えば、2CPU、4GBメモリというバランスは他のシリーズにはなく、低コストで利用できるため、特に開発やテスト用のWindowsクライアントに適しています。「Visual Studio(MSDN)」サブスクリプションの契約者は、Windows 7 Enterprise N、Windows 8.1 Enterprise N、Windows 10 Enterprise Nの仮想マシンをAzure上に展開して実行でき、開発やテスト目的で利用できます。
ドキュメントには含まれていませんが、Azure VMでWindowsの仮想デスクトップを展開し、ユーザーにアクセスを提供する「仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)」シナリオにもBシリーズは適しているでしょう。Windows 10 Pro/Pro N(バージョン1709以降)は、ボリュームライセンス契約に基づいてAzure上で実行可能です。
BシリーズのAzure VMが消費および蓄積するクレジットは、Azure VMの「メトリック」を使用して、それぞれ「CPU Credits Comsumed」と「CPU Credits Remaining」で確認できます(画面2)。
CPU使用率が基準を上回る傾向が高い場合は、Bシリーズのより上位のサイズに変更するか、ワークロードに適した別のシリーズに変更することができます。サイズやシリーズの変更は簡単に行えます。
実は、筆者はこのBシリーズの存在とコスト効率の高さに最近気が付いたばかりです。Azureを主に新しいサーバOSやクライアントOSの評価目的で使用しているのですが、Bシリーズを知ってからは積極的に利用しており、既存のVMについても移行を進めています。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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