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単なる「セカンダリストレージベンダー」に、有力ベンチャーキャピタルが投資する理由Cohesity CEOのモヒット・アロン氏に聞いた(2/2 ページ)

なぜ、単なる「セカンダリストレージ」のベンダーが、今どきSequoia Capital、Battery Ventures、SoftBank Vision Fundなどからの投資を受けられるのか。Cohesityの創業者でCEOのモヒット・アロン氏に聞いた。

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 このソフトウェアで、本番環境以外のあらゆる「セカンダリデータ」を、用途にかかわらず格納し、管理できるという。アロン氏の言う「600億ドル」という潜在市場の数字は、ここから来ている。


Cohesityが狙う潜在市場

 顧客はなぜ、これまでの手法をやめて、セカンダリデータをCohesityのプラットフォームに統合することにメリットを見いだすか。アロン氏の説明は次の通りだ。

 多くの企業は、まずバックアップやディザスタリカバリに関してさまざまな、時には高価なストレージ装置を使っている。アプリケーションや用途に応じてばらばらで、利用効率も低い。さらにファイルストレージやテスト/開発、分析で個別の、場合によっては高価なストレージ装置を使っている。ファイルストレージではさらにこれをバックアップする別の仕組みを用意するといったことも行われている。

 これらを全てCohesityに統合すれば、まず高価なストレージ装置を導入する必要はなくなる。さらに単一のプラットフォームにまとめることで、個々の仕組みで生じていた容量効率の無駄、ばらばらな運用に伴う負荷を低減できる。また、多様なデータにまたがって(グローバルに)重複排除を適用すれば、データ容量の節約につながる。

 テスト/開発は、Cohesityにとって重要なユースケースの1つだ。本番アプリケーションのデータを使って開発/テストを行うケースがあるが、このためにデータベースのコピーが散在し、容量効率とガバナンスの双方の点で問題が発生しがちだ。これを解消するために、「Copy Data Management」と呼ばれる製品ジャンルが登場している。Cohesityでは、これと同様な機能が提供できるという。

 また、前述の通りCohesityのソフトウェアはパブリッククラウドで動かすこともできるので、データ保護あるいはビジネス的な観点から、必要に応じてデータの複製を行える。

 さらに、アプリケーション間のデータ共有がやりやすくなる。例えばNFSで取り込んだデータを処理し、これを別のアプリケーションがオブジェクトデータとして扱うなども容易になるという。

 「例えばオンプレミスではNFSあるいはSMBで書き込み、このデータをクラウドに複製して、クラウドアプリケーションからAmazon S3で読み出すことができる。また、NFSで書き込まれたデータとS3プロトコルで書き込まれたデータが似通っていれば、重複排除でデータ量を削減できる。こうした、マルチプロトコルアクセスと、アクセスプロトコルに非依存のグローバルな重複排除は、他の誰にもできないことだと確信している」

iPhoneのように、さまざまなアプリケーションを動かせる

 アロン氏はCohesityの製品を、「ハイパーコンバージドセカンダリストレージ」とも呼んでいる。その意味は、Nutanixなどのハイパーコンバージドインフラ(HCI)と同様に、同社のストレージソフトウェアを動かしているサーバで、さまざまな処理が行えるということだ。

 「GDPRをはじめとした規制に対するコンプライアンス管理や、ウイルススキャン、eDiscoveryなど、アプリケーションは無限に考えられる。AppleがiPhoneをリリースした当時、アプリは5つしか搭載していなかった。だが現在では何百万のアプリがある」

 では、サードパーティアプリケーションのサポートを発表する予定はあるのか。

 「今は『お楽しみに』としか言えない。今後数カ月のうちに、エキサイティングな発表ができると思う」

 アロン氏は、CohesityがMap Reduceを組み込んでおり、例えば個人情報保護のために特定の個人名が含まれたデータを検索するアプリケーションを書けば、CohesityのAPIを通じて「その名前がこの仮想マシン内のデータ内に存在する」といった結果を得ることができると話す。また、顧客の中には、6カ月が経過した高解像度ビデオを自動的に低解像度へ変換するアプリケーションを適用しているところもあると言う。

まずはデータバックアップを対象として製品の価値を訴求する

 筆者がこれまでさまざまなエンタープライズITのスタートアップ企業を取材してきた経験では、どんなに優れた技術やビジョンを持つ企業でも、一般企業における現時点での大きな課題を新たなアプローチで解決できなければ、成功しない。直近の課題解決に貢献した後で、「ところで同じ製品の適用をさらに拡大し、あるいは別の機能も使ってくれれば、さらにメリットがありますよ」と、自社のビジョンに向けて、徐々に顧客を誘導していくことができなければならない。特にインフラ関連ではこれが当てはまる。

 Cohesityの場合は、「ビジネスクリティカルな性能が要求される用途以外のあらゆるデータを統合できる」としながらも、顧客にはまずデータ/システムのバックアップおよびディザスタリカバリの効率化および合理化で使ってもらおうとしているようだ。

 バックアップおよびディザスタリカバリでCohesityが訴求するメリットは、上記と基本的には同じだ。ばらばらで時には複雑、高価なインフラを、汎用ハードウェアによる単一のシステムに統合することで、コスト効率を高められる。

 全てのバックアップジョブは、単一のコンソールで管理できるという。個々のソフトウェアなどの設定はもはや不要になる。バックアップ業務は、基本的には対象に応じたポリシーを設定するだけでいい。また、ロールベースの権限管理(RBAC)機能では、直接の担当者以外、バックアップポリシーの設定やバックアップデータの扱いができないように制限できる。そしてリカバリは、担当者がタイムスライダーで任意の復旧時点を指定することで、実行できる。仮想マシン内の単一ファイルのみを取り出すなども可能という。

 なお、この管理コンソールはデフォルトではSaaSとして提供されるが、オンプレミスで動かすことのできる選択肢も用意しているという。

 さらに、クラウドへのバックアップをしたい場合は、パブリッククラウドでCohesityを動かし、これに対して自動複製をすることも可能だ。この際、仮想マシンについては、例えばVMwareのVMDKからAmazon Web Services(AWS)の仮想マシン形式であるAMIの自動変換も行う。従って、オンプレミスのデータセンターで障害が発生した場合には、同一のシステムをAWS上で即座に立ち上げることができる。

 「シンプルな仕組みで統合的なデータ保護」というメッセージは、パブリッククラウド上で動くSaaSであるDruvaとも重なる。だが、アロン氏は、「あらゆるセカンダリデータをバックアップするには、パブリッククラウドは高価すぎる」と話す。

 結局、用途をデータ保護に限定し、この2つの製品の詳しい機能の違いを捨象して、シンプルに統合するというメッセージだけで考えた場合、コストという要因の他に、クラウドに集約していきたいのか、オンプレミスを組み合わせた仕組みを構築したいのかによって、どちらが魅力的かは異なってくるのだろう。

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