データ管理の簡素化と新たな活用法を提案、Cohesityが注目される具体的な理由:「膨大なコスト」を「宝の山」へ
バックアップやファイルストレージなど、データを統合管理するソフトウェアを開発する米国企業、Cohesity(コヒシティ)が注目されている。日本国内における販売とサポート体制の強化も急速に進展中だ。CEOのモヒット・アロン氏を直撃し、同社が注目される理由を聞いた。
バックアップやアーカイブ、ファイルストレージなど、データを統合管理するソフトウェアを開発、販売する米国企業のCohesity(コヒシティ)をご存じだろうか。エンタープライズIT関連のベンチャー企業として最も注目されている一社だ。
同社CEOのモヒット・アロン氏によると、Cohesityが注目される最大の理由は「守りと攻めの双方で、情報システム部門の抱える悩みの解消を直接支援できること」だという。同氏がCohesity創業時に疑問に感じていたのは、企業の中でバックアップが単なる保険としてしか利用されていなかったことだ。対象ごとに異なるシステムが構築、運用され、大きなコストがかかるにもかかわらず、データのバックアップとリカバリーの時にしか利用されない。こうしたバックアップを簡素化し、さらには単なる保険以上の、データ活用プラットフォームとする――。それがCohesity創業のきっかけだったとアロン氏は語る。
データ管理の効率化で生まれる新たなチャンス
「ITコストを削減しろ」「ビジネスに貢献しろ」などと、矢面に立たされている企業の情報システム担当部署は多い。そして、情報システム部の役割においてデータ管理が占める割合は大きい。つまり、データ管理を守りと攻めの双方で変えられることが情報システム部門の価値を大きく左右するといえる。
アロン氏は、レガシーインフラによって「複雑化したデータを管理しなくてはならない状況」を問題視している。同氏はレガシーインフラを自宅の一軒家に例え、「家の中がめちゃくちゃで、コストがかかってもホテルで生活させてほしいといった状態だ」と話す。一方、自宅をきれいにすれば住みやすくなるだけでなく、家具や装飾品も自由に決めることができる。このため「自宅の簡素化が重要だ」としている。
ここで同氏が例に挙げたホテルはクラウドを意味しており、「選択肢は限られるが、ホテルには柔軟性という価値がある」と語る。その上で「ホテルと自宅の良い面のみ活用すればいい」として、1つのプラットフォーム上で自宅とホテル、つまりデータセンターとクラウドの双方が管理できるCohesityの技術により、両者の価値を最大限に活用すれば、情報システム部門によるデータ管理が効率化され、新たなシステム活用に取り組むことが可能だとしている。
Cohesityによるデータ管理革命とは
多くの企業はバックアップやDR(災害復旧)に関してさまざまなストレージ装置を使っている。さらにファイルストレージやテストや開発、分析用に個別のストレージ装置を使っていることもある。そのような状況では各ストレージ装置の利用効率は低くなり、余計な費用もかかってしまう。だが、これらを全て統合すれば高価なストレージ装置を導入する必要はなくなる。
Cohesityはこのストレージの統合を実現するソフトウェアだ。バックアップソフトウェア、ファイルストレージ、オブジェクトストレージといった多様なデータ管理関連製品の果たしてきた機能を統合的に提供できる。単一のプラットフォームにまとめることで容量効率の無駄やばらばらな運用に伴う負荷を低減できる。多様なデータにまたがって重複排除およびデータ圧縮が適用されるので、データ容量の節約にもつながるだろう。
Cohesityの製品は現在約1000の組織に導入されている。2018年度の売り上げは前年比300%に達したという。同社はソフトバンク・ビジョン・ファンドやGoogle、Cisco Systems、Hewlett Packard Enterprise傘下の投資会社など、著名な投資ファンドからの出資を受けていることでも知られ、従業員数は1000人に達する。2018年には日本法人を設立し、ネットワールドおよびSB C&Sをディストリビューターとし、日本国内における販売とサポート体制の強化を進めている。
Cohesityを使ったデータ管理効率化の進め方について、アロン氏は次のように話す。
「ばらばらなバックアップをまとめることからまずは始める。Cohesityはソフトウェアであり、高価なハードウェアの販売を目的としていない。一般的なサーバ製品にも導入できるし、必要な容量分だけ購入し、後で少しずつ拡張ができる。次の段階ではアーカイブ機能を活用してテープなどのレガシーな製品を排除する。ファイルサーバ機能についても、高価なストレージを購入する代わりにCohesityを利用できる。こうして、高度なパフォーマンスを必要とするアプリケーションのプライマリーストレージ以外を、全てCohesityに統合できる」(アロン氏)
Cohesityはソフトウェアであり、パブリッククラウドで動かすこともできる。アロン氏によると、米国でAmazon Web Services(AWS)に毎月12万ドル支払っていた顧客が、同社の製品でデータ統合した結果、毎月のコストが1万7000ドルになったケースがあったという。
データから価値を引き出すとはどういうことか
バックアップやアーカイブ、ファイルサーバにある非定型データを統合できれば、その次の段階としてこうしたデータから価値を生み出すことができる。
まずテストと開発だ。既存のデータベースを用いてアプリケーションの改善や新規開発をしなければならないケースは多いが、Cohesityはデータベースのバックアップから開発用のコピーを迅速に作り出せる。バックアップデータに影響を与えることなく操作ができるし、重複排除をしているため、無駄にデータが増える心配もない。
次に分析だ。標準プロトコルでCohesityのデータにアクセスできるため、一般的に提供されているツールを使った分析ができる。データレイクをどう構築すべきか、悩んでいる企業は多いが、「究極の柔軟性を備えたデータレイク」としてCohesityを利用できる。「個人名をマスクする」などの分析の前処理も自動化できるという。これにより、埋もれていたデータを宝の山に変えられる。
Cohesityは、さまざまなアプリケーションを容易に活用できる「Cohesity MarketPlace」(以下、マーケットプレイス)の構築を進めている。これらアプリケーションを利用することで、分析をはじめとしたデータ関連作業が容易になる。例えば、統合ログ分析ソフトウェアのSplunkを利用する場合について次のように説明する。
「通常はデータをコピーした上で実行する必要があるが、Cohesityならデータをコピーする必要も、移行させる必要もない。Splunkをダウンロードして稼働させるだけだ。個別管理も不要だ」(アロン氏)
ウイルススキャンアプリも用意されている。1つは「SentinelOne」、もう1つは「Clam AntiVirus」(Clam AV)だ。本番環境では、本番のワークロードが稼働しているため常にウイルススキャンを実行するわけにはいかない。そこでCohesityはバックアップをスキャンする方法を提案している。バックアップのスキャンであれば、応答時間やトラフィックを詳細に把握できるパケット解析手法のDPI(ディープパケットインスペクション)も利用できるためだ。まず簡単なウイルススキャンを実行し、SentinelOneやClam AVを使ってより詳細にバックアップデータをスキャンすればプライマリーストレージの感染も検知できる。
コンプライアンス対応もアプリケーションで可能に
アロン氏によると、欧州連合(EU)で新たにEU一般データ保護規則(GDPR)が施行されたことからも、コンプライアンス対応へのニーズは高いという。そのため、マーケットプレイスにはコンプライアンス関連のアプリケーションも複数用意されている。例えば、企業システム内に特定の名前の人物が登録されているかどうかを検索する場合、レガシーシステムでは全ての環境からデータを抽出し、分析プラットフォームにコピーした上で名前を検索する必要がある。
「Cohesityの検索アプリケーションを使えば、人名を簡単に検索でき、GDPRコンプライアンスへの準拠も容易になる。顧客がわれわれに相談する内容からも、コンプライアンスは企業にとって大きな課題であることが分かる。Cohesityはこの困難な問題の解決を支援できる。さらに新たな機能をこの分野で開発中だ」(アロン氏)
マーケットプレイスは、アロン氏が設立当初から構想し、長期間にわたって取り組んできたものだ。「現在サードパーティーベンダーとの取り組みを進めており、Cohesityをさまざまな方法で活用したいという顧客ニーズに対応していく」とアロン氏は述べている。
段階的な導入を推奨、ロックインとは無縁
アロン氏は「われわれは何も既存システムをリプレースするよう促しているわけではないし、今すぐ既存システムから離脱せよと強制しているわけでもない。顧客に柔軟性を提供したいと考えており、さまざまな状況にいるユーザーが自由に検討できるようにしている」と語る。
例えばバックアップ用ストレージで容量が足りなくなった場合、より大容量のものに置き換えるか、新たな装置を購入するといった選択肢になる。だが、代わりにCohesityを購入すれば無駄が発生しないとアロン氏は提案する。「サポート期限が来たストレージ装置の使用を停止するなどし、Cohesityで管理するデータ量を段階的に増やすといった方法がある」(アロン氏)
それでも、ユーザーの中には囲い込みを警戒する人もいるだろう。バックアップ系ベンダーの多くは独自のフォーマットを提供し、顧客を囲い込もうとしているためだ。この点についてアロン氏は「独自フォーマットはデータの複製に必要なこともある。とはいえ、そのデータは誰もが理解できるAPIなどを通じてアクセスできるようにすべきだ。Cohesityのプラットフォーム上にあるデータは、全てAmazon S3やNFSをはじめとするファイルやオブジェクトのプロトコルでアクセスできる。つまり、データを囲い込んでいないし、コピーすることも簡単だ」と説明、Cohesityがベンダーロックインとは無縁であることを強調している。
「Cohesityの製品は柔軟性が高く、データの抽出方法も複数ある。われわれは顧客には喜んでもらいたいと考えており、ロックインすることで顧客が喜ぶとは思わない」(アロン氏)
日本の顧客にも「課題ごとに少しずつ利用してもらいたい」
アロン氏は、「取りあえず企業のシステム環境を簡素化したい」と謙虚な気持ちでいるというが、Cohesityの製品によって「データセンターのインフラだけでなく、クラウドインフラの簡素化も実現し、価値をもたらすと信じている」と語る。
日本の顧客に対しては「まずは課題となっている部分から少しずつCohesityを利用してもらいたい。その課題は、バックアップ、ファイルシステム、オブジェクトストレージなど、さまざまだと思うが、一つずつ対処して、時間をかけてわれわれの製品がシステムの簡素化に役立つことを知ってもらえればと考えている」(アロン氏)
アロン氏は「データに対しスマートフォンのようなアプローチを取りたい」と語る。つまり、複数の機器を1つにまとめ、単一のユーザーインタフェースで全てのアプリとデータを管理し、マーケットプレイスで新たな機能を追加していく方式だ。この方式で、同社のプラットフォームは今後も進化を続ける。
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提供:Cohesity Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年6月27日