Windows 10の更新管理のためのWSUS最新事情:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(50)(2/2 ページ)
「Windows Server Update Services(WSUS)」は、古くからWindowsおよびMicrosoft製品の更新管理を担ってきたWindows Server標準の役割の一つです。短いリリースサイクルで進化していくWindows 10にWSUSがどのように対応してきたのか、最新情報をまとめました。
機能更新プログラムからx64に続いてx86も分離
Microsoftは2018年9月のWindows 10 バージョン1703、バージョン1709のリフレッシュパッケージ、およびWindows 10 バージョン1809のRTMビルドパッケージから、64bit(x64)版のみを含む機能更新プログラムパッケージの提供を開始しました。従来の「Windows 10……<言語名>の機能更新プログラム」は32bit(x86)版と64bit(x64)版の両方に対応したものですが、「Windows 10……<言語名> x64の機能更新プログラム」が提供されるようになりました。
Windows 10のクライアントが64bit版に統一されている場合、「Windows 10……<言語名> x64の機能更新プログラム」を選択することで、MicrosoftからWSUSサーバへのダウンロードサイズを縮小することができます(クライアントとWSUSサーバ間には影響しません)。この新しい64bit(x64)版パッケージの提供については、以下の公式ブログでアナウンスされています。
- Reduced Windows 10 package size downloads for x64 systems[英語](Windows IT Pro Blog)
Windows 10 バージョン1809からはさらに変更が加わりました。2018年10月の一般向けリリース時および11月の再リリース時には、32bit/64bitの両方に対応した「Windows 10……<言語名> 機能更新プログラム」、64bitのみの「Windows 10……<言語名> x64の機能更新プログラム」の2種類が提供されましたが、2019年3月のリフレッシュメディアは「Windows 10……<言語名> x86の機能更新プログラム」と「Windows 10……<言語名> x64の機能更新プログラム」の2種類に変更されました(画面3)。
画面3 Windows 10 バージョン1809のリフレッシュメディアから、機能更新プログラムは32bit用パッケージと64bit用パッケージの2種類が提供されるようになった(これまでは32bit/64bit用と64bit用の2種類)
この変更についてのアナウンスはありませんが、今後は32bit用パッケージと64bit用パッケージが別々に提供されることになるようです。2019年5月22日(日本時間)にWSUSに同期されたWindows 10 バージョン1903の機能更新プログラムは、最初から32bit用パッケージと64bit用パッケージが別々になっていました(画面4)。従来の32bit/64bit用パッケージと64bit用パッケージの区分よりもシンプルで分かりやすくなったと思います。
WSUSに同期されないオプションの更新はインポートで配布可能
第2火曜日の翌週または翌々週(場合によっては翌月第1週にずれることもあります)にリリースされるオプションの累積更新プログラム(翌月の第2火曜日のためのプレビュー)は、WSUSで配布できるように同期対象になることもありますし、ならないこともあります。重大な問題があって配布停止措置が取られ、同期されない(過去に同期されていても削除される)場合もあります。
記憶に新しいのは、2019年5月1日の改元に向けたWindowsの修正です。Microsoftは大型連休の前日、日本時間の4月26日にオプションの累積更新プログラムに含める形で、新元号に対応した修正を提供しました。ただし、Windows 10 バージョン1809については、連休中の日本時間5月4日に遅れました。そして、これらのオプションの累積更新プログラムは、WSUSの同期の対象にされませんでした。唯一、Windows 10 バージョン1809に対しては、新元号対応関連の修正のみを累積した累積更新プログラムKB4501835(ビルド17763.439)を日本時間の5月2日にMicrosoft UpdateカタログおよびWSUSを通じて提供しました。
新元号対応関連の修正は、5月の第2火曜日以降の累積更新プログラムに含まれます。そのため、4月26日や5月4日にリリースされた累積更新プログラムを今後、WSUSで配布する必要性はありません。しかしながら、WSUSに同期されない更新プログラムを、今回の新元号対応のように緊急で配布したいという場合は今後もあるはずです。
そのような目的のために、WSUSにはMicrosoft Updateカタログから直接更新プログラムをインポートする機能が備わっています。この機能を利用するには、「Update Services」スナップインで「更新プログラム」ノードを開き、「操作」ペインの「更新のインポート」をクリックして、Microsoft Updateカタログで目的の更新プログラムを検索してバスケットに追加し、WSUSに直接インポートします(画面5、画面6)。
画面5 5月4日時点でWSUSに同期された新元号対応パッチはWindows 10 バージョン1809用のみ。Windows 10 バージョン1803以前に新元号対応パッチを配布するためには、Microsoft Updateカタログからインポートする必要があった
累積更新プログラムの差分パッケージの廃止
Windows 10 バージョン1607〜1803までは、毎月第2火曜日にリリースされる累積更新プログラムについてMicrosoft Updateカタログで、フルパッケージと差分(Delta)パッケージの2種類が提供されてきました。差分パッケージは、前月の累積更新プログラムがインストール済みのデバイスにインストールできる、前月から新たに累積された変更差分のみを含む軽量なパッケージです。手動でのインストールやWSUS(ただし、同期対象外であるためWSUSで配布するためにはインポートする必要があります)、その他の配布ツールを利用してクライアントに配布できます。
以下の公式ブログでアナウンスされているように、今後、累積更新プログラムの差分パッケージは提供されなくなります。当初は2019年2月の第2火曜日の累積更新プログラムを最後に、差分パッケージが提供されなくなる予定でしたが、2カ月延長され、4月の第2火曜日の累積更新プログラムが最後になりました。5月以降の累積更新プログラムについては、フルパッケージのみが提供されることになります。なお、Windows 10 バージョン1809以降については、最初から差分パッケージは提供されていません(画面7)。
- Windows 10 quality updates explained & the end of delta updates[英語](Windows IT Pro Blog)
画面7 Windows 10 バージョン1803以前に対する差分パッケージの提供は2019年4月の更新を最後に廃止。Windows 10 バージョン1809以降は最初から差分パッケージは提供されていない
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- さようならSAC-T! これまでの、これからのWindows 10の更新チャネルをざっくりと解説
2019年春にリリースされるWindows 10の新バージョンから、ブランチ準備レベル「半期チャネル(対象指定)」が廃止されることが発表されました。これにより、どのような影響があるでしょうか。Windows Update for Business(WUfB)を利用していない限り、何の影響もないでしょう。WUfBを利用しているなら、更新後に設定を確認しておきましょう。 - 次期Windows 10最新動向:リリース秒読みの「19H1」はこう変わる
間もなくリリースされるWindows 10の新しい機能アップデート「19H1」。それに実装される新機能をまとめてみた。また、同時に変更となるライフサイクルなどについても解説する。 - 複雑怪奇? Windows 10の大型更新とサポート期間を整理する
Windows 10では従来のWindows OSと異なり、年2回、大型アップデートの提供が行われるようになった。それに伴い、サポート期間もバージョンごとに設定されるなどの変更が行われており、かなり複雑なものとなっている。本稿では、アップデートの提供タイミングならびにそのサポート期間などを整理する。 - Windows Update for Businessってどうなったの?
Windows 10の登場ですっかり変わってしまったWindows Update。IT管理者の多くが戸惑っているに違いありません。「Windows 10 バージョン1511 ビルド10586」に合わせ、「Windows Update for Business」が利用可能になりました。しかし、筆者を含む多くの人が想像していたのとは違い、SaaSタイプのサービスではありませんでした。 - Windows 10の更新プログラム適用で地雷を踏まないためのWindows Update運用法
Windows Updateによるアップデートの適用は、場合によっては不具合を起こす可能性もある。アップデートによって不具合が発生しないことを確認してから適用するとよい。そのためのWindows Updateによる適用を延期する方法を紹介しよう。