「AI監視技術」は世界に広がっているのか? カーネギー国際平和財団が発表:日本も中国企業の監視技術を採用
カーネギー国際平和財団は、AI監視技術が世界でどのように導入、利用されているかについての調査結果を報告書にまとめた。同技術で最も影響力があるのは中国企業、次いで米国企業だった。
米国の外交政策シンクタンクであるカーネギー国際平和財団は2019年9月17日(米国時間)、人工知能(AI)を用いた監視技術が世界でどのように導入、利用されているかについての報告書「The Global Expansion of AI Surveillance」(AI監視のグローバルな拡大)を公開した。
同財団が調査に乗り出した背景には、さまざまな政治的目的のために高度なAI監視ツールを使って国民を追跡、監視する国が増えていることがある。AI監視技術へ適切に対処するには、これらのツールの導入、利用状況を理解することが重要だが、そうした情報は乏しい。そこで研究を開始した。
報告書では、調査対象となった人口25万人以上の世界176カ国におけるAI監視ツールの導入、利用状況の調査結果を解説しており、事実に関するデータを集計して定量化した指標「AI Global Surveillance(AIGS)Index」(AIグローバル監視インデックス)を国別に示した。
この調査では、AI監視技術について合法的な利用と人権を侵害する違法な利用を区別していない。新しい技術が個人やシステムに対する政府の追跡、監視能力をどのように変えているかを明らかにすることを主眼としている。
同財団によれば今回の調査の主要テーマは3つある。
- どの国がAI監視技術を導入しているか
- 政府はどのような種類のAI監視を進めているか
- どの国や企業がAI監視技術を提供しているか
中国企業のAI監視技術は対象国の約3分の1に浸透
報告書が明らかにした主な調査結果は以下の通り。
- AI監視技術は、専門家の一般的な見解と比べて、はるかに急速に世界に広がっている
調査対象となった176カ国のうち少なくとも75カ国が、AI技術を監視目的で積極的に利用している。主な目的はスマートシティ/セーフシティプラットフォーム(56カ国)、顔認識システム(64カ国)、スマート警備(52カ国)などだ。
AI監視技術を導入している国の数と地域ごとの比率 東アジア/太平洋では導入比率が65%に達しており、中東/北アフリカが続く(出典:The Global Expansion of AI Surveillance)
- 中国は、AI監視技術について主要な供給国となっている
中国企業(特に、Dahua Technology、Hangzhou Hikvision Digital Technology、Huawei Technologies、ZTE)はAI監視技術を63カ国に提供しており、このうち36カ国は、中国の「一帯一路」構想に関する覚書を中国と締結している。この4社のうちの最大手である企業は、少なくとも50カ国に技術を提供している。この規模に迫る企業は他にはなかった。
提供相手国が多い企業をリストアップすると、中国企業が1位と2位を占めた。3位はNEC(14カ国)だった。
- 中国製品の売り込みでは、長期低利融資を利用して製品を購入するよう相手国政府に働き掛ける場合が多い
この戦術は、ケニヤやラオス、モンゴル、ウガンダ、ウズベキスタンなど、こうした融資がなければ、AI監視技術にアクセスできなかったと考えられる国々で特に顕著だ。こうした動きは「中国政府が、高度な抑圧的技術の購入をどの程度助成しているのか」という疑問を呼び起こす。
中国企業に次ぐのは米国企業
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