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個人顧客のデジタルチャネル利用率は71%、欧州第3位の金融機関が仕掛ける「リアルタイム」と「パーソナライズ」SAS Analytics Experience 2019(2)(2/2 ページ)

欧州で第3位の金融機関であるSberbankでは、個人顧客のデジタルチャネル利用率は71%で、世界第3位だという。同社が個人向けのデジタルバンキングで特に力を入れているのはリアルタイムのパーソナライズされたキャンペーンおよびサービスだ。具体的には何をやっているのだろうか。

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 こうした機能は、ユーザーがATMの操作で迷ったり、時間を浪費したりするのをできるだけ回避するために提供しているとバクラノフ氏は説明した。具体的には、メイン画面だけで全操作の15%が完結できることを目指していて、ユーザーの時間を計15年分節約できる計算になるという。

 ATMに関しては、レシートにパーソナライズされたオファーを印刷するといったこともやっているという。

ロボットでクレジットカード利用枠引き上げキャンペーンを全自動化

 バクラノフ氏は、モバイルユーザー向けにクレジットカードの利用枠引き上げキャンペーンを実施し、コンバージョンレート12%を達成した例も紹介した。


ロボットによる働きかけをきっかけに、わずかな時間で継続的な利用枠引き上げを実現

 このキャンペーンでは、ユーザーの一部をターゲットとし、ロボットによるキャンペーンコールを実施した。即時性を重視し、ユーザーが承諾すると、新たな利用枠と本人による承認用のコードをSMSですぐに送付するというプロセスにしたという。ロボコールを受けたユーザーの承諾率は22%に達し、最終的なコンバージョンも12%だったという。

リアルタイムでクレジットカード利用枠の一時引き上げ

 クレジットカード利用枠の一時引き上げについては、さらにリアルタイム性を高めた自動キャンペーンを実施したという。


一時的な利用枠引き上げは、ほぼリアルタイムで行える

 クレジットカード利用残高が利用枠に近づいているユーザーの一部に対し、クリスマスショッピングなどの時期に「利用枠を一時的に上げたいですか?」といった働きかけをする。ユーザーが承諾すれば、即座に利用限度額が引き上げられる。

このように、通常では時間を要する作業を、ターゲティング/パーソナライズと自動化で迅速に実行するモデルは、カードの無効化など他のプロセスにも適用できると、バクラノフ氏は話した。

自動音声応答システムもパーソナライズ

 ユーザーからの問い合わせ対応についても、パーソナライズを通じて、顧客満足度の向上と自社にとっての効率化を推進しているという。

 ユーザーからの問い合わせ電話を受ける自動音声応答(IVR)システムでは、メインメニューの最初に「コンテキストベースの対応」を追加し、ユーザーがこれを選択した場合には、このユーザーのこれまでの行動に基づくパーソナライズで、求めている可能性が最も高い機能へ即座に進めるよう支援する。


既存IVRのメインメニューに、コンテキストベースの対応を追加

 これを預金残高確認のシナリオに適用した例では、顧客満足度が向上した一方、オペレーターの負荷が減少し、以前のIVRに比べて1億3700万ユーロのコスト削減効果が得られたという。


コールセンターのオペレーターの負荷が目立って改善したという

SAS RTDM、Kafka、Flinkなどを活用

 Sberbankは、下図のようなシステム構成で、リアルタイムなパーソナライズを実現している。


Sberbankのリアルタイム・パーソナライズ基盤の構成

 中核はSAS Instituteの機械学習に基づくリアルタイムアナリティクス製品「SAS Real-Time Decision Manager(SAS RTDM)」。これは、各顧客のイベントに基づき、その顧客に対する最善のアクションを自動的に判断し、オムニチャネルでリアルタイムに提供できるようにする製品。

 これに、FlinkやKafkaによるComplex Event Processing(CEP)、Elasticsearch、Logstash、Kibanaによるモニタリング/ロギングなどを組み合わせているという。

 こうした構成にDevOps自動化を組み合わせ、ETLスクリプトをはじめ、自動キャンペーンに関わる全てのプロセスのパッケージングは、6分で完了するようになっているという。

 次の取り組みとしてバクラノフ氏は、社内ユーザーが、マイクロセグメンテーション/パーソナライゼーションを適用したキャンペーンを容易に構築できるような、セルフサービスポータルを提供したいと話した。

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