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「判断の根拠」を示すAIを開発 農研機構農作物の病気診断向けに開発

農研機構は、判断の根拠を示すAIを開発した。ジャガイモの葉の画像から95%以上の精度で病気を診断でき、病気の根拠となる画像部分を示すという。

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 農研機構は2020年1月23日、農作物の病気診断時に、その根拠となる画像の特徴を表示するAI(人工知能)を開発したと発表した。これまでのAIの多くは、学習した特徴や学習に基づく判断の根拠が、利用者には分からない。農研機構は、AIの判断を人間の意思決定の参考にする場合などその根拠が必要となるケースが次々と出てきており、判断の根拠を説明可能なAIへの社会的要請が強まっているとしている。

健全か病気かを判定

 開発したAIは、ジャガイモの葉の画像から病気を診断する。健全な葉の画像と病気の葉の画像をそれぞれ学習させ、健全、病気、共通部分という3つの領域の特徴を抽出する。そして、オートエンコーダーを用いて病気診断の根拠となる特徴を可視化する。

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開発したAIの概念図(出典:農研機構

 オートエンコーダーは、ニューラルネットワークを用いたデータ圧縮手法。入力データをニューラルネットワークによって符号化した後、出力データが元のデータと同じ次元になるようニューラルネットワークによって復号する。入力データが画像ならば、出力データも同じ大きさの画像になる。その際、入力画像と出力画像の差が小さくなるように学習させることで、中間層に次元圧縮したデータ(特徴)が生成される。例えば病気の葉の画像を学習に用いれば、病気の特徴が中間層に蓄えられる。

 ジャガイモに発生する2種類の病気について、健全な葉の画像400枚と、病気の葉の画像827枚を学習させた後、176枚の画像を使って精度を検証した。すると2種類の病気の両方について95%以上の精度で診断できたという。ピーマンやトマトについても、病気の葉と健全な葉の識別精度が90%を上回ったとしている。

 健全な葉の特徴を学習させたオートエンコーダーに病気の葉を入力して新たな画像を生成させると、健全な葉の画像になる。これを元の画像を比較することで、病気と診断した根拠となる特徴を可視化できるわけだ。

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説明可能な特徴が反映されていることを確認できる(出典:農研機構

 農研機構は、開発したAIを、ジャガイモの原原種を生産する農地(ほ場)に導入することを検討している。さらに、イネの重要害虫であるウンカ類の種類判別にも適用を試みている。今後は、農業分野に限らず、幅広い分野での活用が可能だとしている。

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