米国人患者データで学習済みAI、日本人患者でも高い検出精度 宮崎大学とNTTデータ:精度向上だけでなく担当医の負荷も軽減
宮崎大学とNTTデータは、米国人患者のデータを学習させたAIが、日本人患者に適用可能であることを実証実験で確認した。特に腎ガンについては、高い診断性能が確認できたとしている。
宮崎大学とNTTデータは2019年9月26日、両者が実施したAI(人工知能)を活用した画像診断の実証実験について、特にガンの検出に関して高い検出精度が得られたと発表した。この結果を踏まえて、診断業務での医師の負担軽減効果検証を、2020年度中をめどに計画している。
宮崎大学とNTTデータの実証実験は、NTTデータが開発したAI画像診断支援ソリューションを用いて腎臓のあらゆる異常を検出するもので、2019年3月〜8月に宮崎大学付属病院で、700人の患者のデータを対象に実施した。今回の実証実験の目的は、大きく分けて2つ。1つ目は、約5000人の米国人患者から得た約11万枚の腹部CT画像を学習させたAI画像診断支援ソリューションが、日本人患者に対して適用可能かどうかを検証すること。2つ目は、付属病院のCT画像データのうち、腎ガン患者データについて、検出精度を検証すること。
結果は、米国人患者のデータを学習させたAIによって、腎ガンや腎臓結石、水腎症、嚢胞(のうほう)、腫瘍など、腎臓のあらゆる異常を検出できた。人種や生活習慣の異なる国の患者に対してAI診断が適用できることを確認したとしている。
精度向上と放射線科医の負荷軽減を目指す
腎ガンの診断精度は正解率が89.00%、陽性と判定すべきものを正しく陽性と判定した割合である「感度」が82.00%、陰性と判定すべきものを正しく陰性と判定した割合である「特異度」が95.00%、陽性と判定したもののうち、真に陽性である割合の「適合率」が94.60%だった。高い診断性能が確認できたとしている。なお、特異度は、高いほど偽陽性が少ないことを意味し、有病率が低い診断では重要な指標。適合率は、高いほど誤検知が少なく医師に余計な確認負荷を与えないことを意味する。
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