Windows 10 May 2020 UpdateとWindows Server, version 2004の一般提供が開始:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(111)
2020年5月27日(米国時間)、半期チャネル(SAC)のWindows 10とWindows Serverの最新バージョン「2004」がリリースされました。2020年5月末までにAzure Marketplaceでもこれらのバージョンの仮想マシンイメージが利用可能になりました。
Windows 10/Windows Server, version 2004イメージがAzure Marketplaceで利用可能に
2020年5月27日(米国時間)、半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)の「Windows 10 May 2020 Update」(Windows 10 バージョン2004)と「Windows Server, version 2004」が正式リリースとなりました。Windows 10については同日から、Windows Serverについてはその翌日から、Azure Marketplaceでこれら最新OSの仮想マシンイメージが利用可能になりました。
具体的には、Microsoftとのボリュームライセンス契約に基づいて使用が許諾される「Microsoft Windows 10」のPro、Pro N、Enterprise、Enterprise N、Enterprise multi-session(Windows Virtual Desktop専用)、および追加のライセンス要件のない「Windows Server」の「[smalldisk]Windows Server, version 2004 with Containers」が新たに利用可能になりました(画面1、画面2)。
なお、Visual Studioサブスクリプション(旧称、MSDNサブスクリプション)の契約者のみが利用可能な「Windows Client」の「Windows 10 Enterprise N(x64)」イメージについては、2020年5月末時点ではバージョン1909ベースです。
Windows 10 バージョン2004の新機能
「Microsoft Windows 10」は、ボリュームライセンス契約に基づいて、Windows 10をAzure仮想マシンとして利用する、あるいは「Windows Virtual Desktop」サービスに展開して利用するためのものです。
最新のWindows 10 バージョン2004は、ITプロフェッショナル向けに更新管理やセキュリティ機能、展開機能、Windows Virtual Desktopのための新機能など、さまざまな新機能を提供します。詳しくは、以下のドキュメントで確認してください。
- What's new for IT pros in Windows 10, version 2004[英語](Microsoft Tech Community)
上記のドキュメントでは触れられていませんが、これまでWindows Serverのみに提供されてきた「緊急管理サービス(Emergency Management Services、EMS)」が、Windows 10 バージョン2004からはオプション機能「Windows 10用EMSとSACのツールセット」として、全てのエディションで利用可能になりました。このオプション機能を有効化すると、Azure仮想マシンの「シリアルコンソール」から「Serial Administration Console(SAC)」を使用して、シャットダウンや再起動、メモリダンプ作成、コマンドプロンプトへのアクセスなどが可能になります(画面3)。
画面3 Windows 10バージョン2004には、これまでWindows Serverの限定機能であったEMSがオプション機能として利用可能に。適切に構成すれば、Azure仮想マシンの「シリアルコンソール」からアクセス可能
Azure MarketplaceにあるWindows Serverイメージは、EMSが規定で有効です。Windows 10 バージョン2004のイメージが既定で有効なのか、追加で構成する必要があるのかを筆者は確認していませんが、オンプレミスのHyper-V環境で利用できることは確認済みです。オプション機能「Windows 10用EMSとSACのツールセット」を有効にする必要があるところ以外は、Windows Serverと構成方法は同じです。
Windows Server, version 2004の新機能
Windows Server, version 2004は、Server Coreのみで提供されます。Azure Marketplaceのイメージ名の「with Containers」が示すように、これはWindowsコンテナのホストとして利用することを想定したもので、「Hyper-V」の役割、「Containers」の機能、最新バージョンの「Docker Enterprise」(Docker Engine 19.03.5)が組み込み済みになっています(画面4)。
画面4 「[smalldisk]Windows Server, version 2004 with Containers」は、Windows Server, version 2004 Datacenterエディションをベースに、最新のDocker Enterprise、および最新のベースOSイメージが登録済み
また、最初から最新バージョンのWindows Server Core(mcr.microsoft.com/windows/servercore:2004)およびNano Server(mcr.microsoft.com/windows/nanoserver:2004)のベースOSイメージが登録済みになっています。
最新バージョンのDocker Enterpriseは2019年11月リリースのもので、その後更新はありません。Windows Server, version 2004固有の新機能としては、Windows Server Coreイメージのサイズ削減による、ダウンロード速度とコンテナのパフォーマンスのさらなる向上です。これは、Windows Server Coreイメージから大部分のNGENイメージを削除し、.NET Frameworkの最適化、NGENイメージ(ネイティブイメージ)の一世代のみの保持などで実現しています。
- What's new in Windows Server, version 2004[英語](Microsoft Docs)
Windows Server, version 1909リリース時(18362.476)と、Windows Server, version 2004リリース時(10.0.19401.264)のWindows Server Coreイメージで比較すると、旧バージョンのダウンロードサイズは約2GBでディスク上のサイズは4.58GB、新バージョンのダウンロードサイズは約1.8GBでディスク上のサイズは3.98GBと、1割程度サイズが削減されています(上記ドキュメントでは2020年5月の更新イメージによる比較です)。
なお、Nano Serverイメージについては早くから極限まで縮小化が図られており、新旧ともにダウンロードサイズ約100MBでディスク上のサイズは250MB前後と、最近ではバージョンでの大きな差異は見られなくなりました。
その他、Server Core環境の日本語化や最近のWindowsコンテナ環境の機能強化については、以下の記事を参考にしてください。Windows Server, version 1903で筆者が確認した「MS-IMEで日本語を入力・変換できない問題」は、最新バージョンでも解消されていませんでした。
- Azure MarketplaceにWindows Server 2019がようやく登場(本連載 第67回)
- Windows Server, version 1909が正式リリース――「プロセス分離モード」の制限が緩和(本連載 第94回)
- Server Coreベースの仮想マシンを日本語化する方法[バージョン1809以降編](本連載 第96回)
Windows Server, version 2004は、Windows 10 バージョン2004と新機能の多くが共通しています。例えば、「Windows Subsystem for Linux(WSL)」の機能強化(WSL 2など)は、どちらでも利用可能です。WSLをAzure仮想マシンにセットアップすれば、Azure仮想マシンの「シリアルコンソール」からLinuxシェルを操作することもできます。WSLをWindows Serverで有効化する手順については、以下のドキュメントで説明されています(画面5)。
- Windows Serverインストールガイド(Linux用Windowsサブシステムを有効にする)(Microsoft Docs)
なお、Azure Marketplaceのイメージは「Hyper-V」が有効になっています。筆者が確認した限り、Windows Serverで「Hyper-V」が有効な場合や過去に有効化したことがある場合、「VirtualMachinePlatform」を有効化してもWSL 2への切り替えはエラーで失敗するようです。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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