新型コロナで取り組むべきインフラのレジリエンス強化:Gartner Insights Pickup(162)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行が続き、世界中の企業が対応に苦慮している。ITインフラのレジリエンスを高め、ビジネスの大規模な中断を防ぐには、具体的にどうしたらいいのか。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
企業のビジネスリーダーもITリーダーも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような事業継続上の課題について、適切な対応を準備する難しさを痛感している。感染地域内の移動制限はリソース配分の制約となり、稼働できる運用スタッフが減少してしまう。
ITインフラストラクチャ&オペレーション(I&O)のリーダーは、特にリモートワークインフラのサポートへの需要拡大に対応するのに苦労している。世界中で、従業員の多くが長期にわたり在宅勤務を続けているからだ。
Gartnerは、以下の3つのステップを踏んでI&OへのCOVID-19の影響を抑え、インフラのレジリエンス(回復力)を高め、ビジネスの大規模な中断を防ぐことを勧めている。
従業員レジリエンスプログラムを確立する
移動制限やオフィス閉鎖に伴い、従業員はリモートワークを強いられている。リモートアクセスが急増すると、サーバやネットワークに過負荷がかかって動作が重くなり、チームのメンバー間のリモートコミュニケーションに支障が生じる恐れがある。
パンデミック(感染症の世界的大流行)の状況下で従業員の生産性を最大化するには、基本的なガイドラインを含む従業員レジリエンスプログラムを確立するとよい。例えば、従業員が課題やアイデアを共有できる社内のオンラインコラボレーション・コミュニティーの利用を促進し、リモートワーカー向けにパブリッククラウドのDaaS(Desktop as a Service)を使えるようにすることで、リモートワークで必然的に発生するヘルプデスクの需要を抑える。
「DaaSは、従業員のレジリエンスを支えるデスクトップ環境を短期間に構築するために、運用規模の拡大が可能な迅速なスケーラビリティと、従量制課金モデルを提供している」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのケビン・ジー(Kevin Ji)氏は語る。
「DaaSは小規模企業向け市場で成功しており、中堅企業や大企業でも導入されつつある。主な導入目的はディザスタリカバリーや、COVID-19対策のように弾力的かつ臨時に使用するユースケースだ。プライベートクラウドの構築だけでは、業務オペレーションを維持するには不十分だ」(ジー氏)
インフラの維持計画を策定する
感染が続いている間は、従業員が健康かどうかにかかわらず、会社の施設への物理的なアクセスは制限されるかもしれない。以下を含むデータセンターの維持計画を策定し、こうした事態に備える必要がある。
- ユーザーが基幹インフラにアクセスし続けられるように、オンサイトでインフラの稼働維持に当たる少数の担当者を決め、この職務に必要な権限を認可する。
- システムの健全性チェックやパフォーマンスモニタリングなどの日常タスクを自動化する。ルーティンタスクを手動で実行する必要がある分野では、スタッフや契約業者を増強する。
- オペレーションサポートレベルで複数の連絡先を用意し、ミッションクリティカルなITサービスの提供が継続されるようにする。各システムに少なくとも3人の担当者を置く。
「短期間および長期間のリカバリー・オペレーションのために確保する必要があるリソースも予測しておくべきだ」(ジー氏)
スケーラブルなアーキテクチャを利用して事業継続をサポートする
パンデミックの状況下では、強制ロックダウンや外出への恐怖から、オンライントラフィックやデジタルビジネス取引が増加する。Eコマースベンダーのように、パンデミック中に需要が拡大すると予想できる企業は、比較的短期間におけるワークロードの急激な増加にも対応できるスケーラビリティを確保する必要がある。
そのためには、オンプレミスのワークロード処理能力を、パブリッククラウドサービスを利用して拡張する。一般的に、データセンターのキャパシティーは、追加の需要に対応するには不十分であるからだ。さらに、パブリッククラウドプロバイダーをマルチクラウドソリューションで補完し、リソース不足や特定地域におけるトラフィックの急増が発生した場合に対処する。IT運営委員会を設置することで、I&Oチームは、パンデミックの影響を受けている地域で需要への対応を支援するサービス関連アプリケーションを開発しやすくなる。
これらの自衛策を講じることで、COVID-19危機が収拾してリスクレベルが低下した後で、従来の業界のITオペレーションをインターネット企業のITオペレーションに整合させられるという追加の利点がある。
出典:Achieve Infrastructure Resilience During the Coronavirus Outbreak(Smarter with Gartner)
筆者 Katie Costello
Manager, Public Relations
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