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外出自粛要請期間が一応終わった今、人流分析データは用済みなのかメリハリのある対策につながる?(2/2 ページ)

外出自粛要請期間中、携帯関連各社が提供する人流分析データが、接触削減目標の達成における目安として盛んに活用された。では、「ポスト外出自粛要請期間」に、人流データは役に立たないのだろうか。

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人流データと言っても取得方法はさまざま

 ところで、人流データといっても1つではない。NTTドコモはユーザーが接続した基地局の位置情報を利用している。KDDI(「au」)は基地局情報に端末のGPS情報を組み合わせている。

 3社のうちAgoopのみ、情報の取得方法は大きく異なる。Agoopでは、基地局位置情報は使わない。携帯アプリを通じて取得する端末のGPS情報だけだ。「アルコイン」など、Agoopが開発したアプリもあるが、同社が提供するSDKを組み込む他社のアプリを通じて取得する情報がほとんどだという。柴山氏は、世界で約50種類のアプリがこのSDKを利用しているとしている。

 当然だが、ユーザーがアプリを使う際に、GPS情報の取得について明示的に使用許諾を与えた場合のみ利用する。さらに性別や年齢層を含む個人情報は全く取得していないという。

 なぜ基地局情報を全く使わないのか。それはAgoopのサービスが基地局の最適配置のために使われたからという。特にソフトバンクがSprintを買収し、経営のてこ入れを行った際、基地局の投資コストを削減するためのツールとして使ったのだという。

 日本以外のアプリにも搭載されている理由、SDKを通じて他社のアプリとの連携を進めた理由もここにある。

 「海外向けのアプリを、Agoopが開発しメンテナンスするというのは非現実的だった」

 個人情報を全く取得しない理由も、GDPR(EU一般データ保護規則)を守る必要があったためという。

 基地局の位置情報に依存していたのでは得られないメリットとして、柴山氏は特定地点を中心としたメッシュでの分析が可能になったこと、そして最大50メートルメッシュという細かな粒度が実現できたことを指摘する。

 もっとも50メートルメッシュに関しては、Agoopが2019年6月、人流分析の災害対策への適用を始めた頃から実現したもの。例えば100メートルメッシュでは、高台と低地が同一のメッシュに入ってしまうことも多く、洪水に対する危険度を分析するのに使えない。そこで、よりきめ細かな粒度での分析を提供できるようにしたかったのだという。

 AgoopはAmazon Web Services(AWS)のユーザーだが、ちょうどその頃AWSのコンピューティングリソースが低価格化したことで、コスト的にも50メートルメッシュが現実的なものになったと、柴山氏は話す。

 Agoopでは人流データを、自治体の災害対策や観光振興策に使えるようにしている。また、店舗の出退店の判断に適用するサービスも始めている。既述の通り、Agoopでは年齢層や性別といった情報を取得しないため、こうした用途には不利なようにも感じられる。だが、「そうしたデータはPOSの情報を活用すればいい」。

 人流データだけを使おうとするのではなく、それにどのようなデータを掛け合わせて、何を見出すか。新型コロナ禍で柴山氏が最も強く感じたのは、日本に社会学的知識やビジネス知識と、データサイエンスのノウハウを兼ね備えた人があまりにも少ないということだという。

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