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リーマンショックの生還者が語る、アフターコロナに訪れるSI不景気蟻地獄仕事はなくなり、単価はたたかれ、妹の結婚式にも出席できない(2/3 ページ)

ポストコロナのIT業界とエンジニアの生き残り術を模索する特集「ポストコロナのIT業界サバイバル術」。第1弾は、リーマンショック、東日本大震災後の不景気地獄を知恵と技術力で生き抜いてきたソルジャーエンジニアが、SI業界にこれから何が起こるのか、そのときエンジニアはどうすればいいのか、を語ります。

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現場が地獄に変わっていきました

1 忙しさの連鎖

 リーマンショックのころ、「他社の業務をわが社が巻き取ることになりました!」と威勢の良い報告が営業から上がりました。この御時世にすごい手柄だと感心したのですが、現場から話を聞いて同情の涙が出ました。

 巻き取りの実態は、「契約額に見合わない膨大な仕事量を抱えるか」「手を引くか」の二択を顧客から迫られ、他社が手を引き、わが社がその分をしょい込むという話でした。人が増えるわけでもなく、給料が上がるわけでもなく、ただ業務量が増えただけだったのです。

 私の現場でも人は増えないのに仕事ばかり増えるようになり、あまりの忙しさに不満が募りました。しかしどこも似たような状況のため、黙って耐えるしかありませんでした。


働けど、働けど

2 モンスター化する発注者

 不景気は人を鬼にします。

 東日本大震災後に常駐していた現場でのお話です。一次請けのPMが下請けのエンジニアに、「今週と来週の土日は出勤してください」と指示していました。下請けの男性が「来週は妹の結婚式があるので、勘弁してください」と断ったところ、PMは男性の所属企業の営業に電話をして「○○さんに休日出勤をお願いしたら断られましてね」と話し始めました。

 PMは下請け企業から来たメンバーの不満を一通り話し、最後に「率直に言いますと、御社メンバーは全員、今月で契約終了にしようかと思います」と言い放ったのです。

 妹の結婚式を控えた男性は、暗い顔をして仕事をしていました。

不景気を抜け出しても、トンネルは終わりませんでした

 ある日、同僚が「エンジニアを辞める」と言い出しました。スキルが高く、多少の無理な依頼も涼しい顔でこなす優秀なエンジニアだったので理由を聞いてみると、「この業界に、俺の未来はないからね」と言うのです。

 世の中がリーマンショックから脱し、大手IT企業は売り上げや利益が過去最大になったという話が聞こえ始めていたころです。

 でもそれには、景気の回復以外の理由がありました。大手企業は、利益率の高いおいしい仕事を自分たちが独占し、手間が掛かり利益率の低い仕事は下請けに委託する、というやり方で巨額の利益を上げていたのです。

 しかも、下請けに払う契約額は不景気のときから毛が生えた程度しか増額されなかったそうです。今までできていたのだから、これからもこの金額でできるだろう、と。もちろん末端のエンジニアに支払われる給料は、不景気のときのままです。

 同僚はそんな業界の実態に失望し、景気が上向いてきた今のうちに新しい業界へ転職すると決めたのでした。


下請けはいつまでも不景気

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