リーマンショックの生還者が語る、アフターコロナに訪れるSI不景気蟻地獄:仕事はなくなり、単価はたたかれ、妹の結婚式にも出席できない(3/3 ページ)
ポストコロナのIT業界とエンジニアの生き残り術を模索する特集「ポストコロナのIT業界サバイバル術」。第1弾は、リーマンショック、東日本大震災後の不景気地獄を知恵と技術力で生き抜いてきたソルジャーエンジニアが、SI業界にこれから何が起こるのか、そのときエンジニアはどうすればいいのか、を語ります。
でも、抜け出す方法はありました
リーマンショック、東日本大震災のころを振り返り、不景気がSI業界を地獄に変えるさまをお話ししてきました。でも、そんな困難な状況でも、比較的好条件の仕事に就けるエンジニアもいました。彼らの共通項は何だったのでしょうか。
1 コスト削減の提案
不景気になると、企業は「コスト削減のための投資」を始めます。東日本大震災の後、私が携わっていた業務もコスト削減でした。仕事内容は、日々増加し続けるデータに対してソフトウェアの性能を向上させ、ハードウェアへの投資を抑止するというものです。
ハードウェアを購入するよりも、エンジニアを雇う方が高いと思うでしょう? いえ、ハードウェアが増えると保守運用にかかる費用も増え、ソフトウェアライセンス費が重くのしかかります。特にデータベースのライセンス費は非常に高額なため、私一人を雇う方が断然お得なのです。
コスト削減のための提案は不景気の中でも採用されやすく、エンジニアにもやりがいのある仕事です。データベースをオープンソースへ変更しつつシステムリプレースするという提案は定番です。
ただし、コスト削減の提案は技術的な裏付けがないと信用してもらえないため、エンジニアと営業が協力して提案書の作成やプレゼンテーションを行わなければなりません。私も、多くの提案書を作成しました。腕の見せ所でした。
2 エンジニアコンサルタント
私が前職でお世話になった人のお話です。その人のチームは景気が悪くなっても継続して契約をもらい、景気が回復すると契約量が大幅に増えました。
なぜそうなったのか尋ねたら、「日常的に顧客の悩みを聞き、可能な限りその悩みを解決していたら、どんどん仕事を任されるようになった」というのです。
もう少し詳しくお話しします。あるとき「顧客のグループ会社が分析システムの構築を計画しているが、扱うデータ量が膨大かつ予算も少なくて困っている」という話を耳にしたそうです。システム自体はシンプルで、データベースとデータを取り込むサーバという構成。ネックはデータの取り込み部分で、ETLツールを導入するととてつもないライセンス費用になってしまうということでした。
そこでその方が提案したのが、オープンソースのETLツールでした。オープンソースのロードバランサーやクラウドサービスを活用すると低コストで分析システムが実現できることを、顧客と共にグループ会社へ提案し、みごと採用されたのです。
不景気でも不幸にならなくていい
不景気になると多くの企業がIT投資を削減し、ITエンジニアに厳しい状況になります。
しかしリーマンショックや東日本大震災の不景気から、私は生還しました。その理由の一つが「提案力」です。顧客の困りごとを積極的に解消し、仕事を作り出せるエンジニアなら、景気に関係なく条件の良い契約を得られるのです。
不景気だからといって全てのエンジニアが不幸になる必要はありません。この記事があなたの考えの一助になれば幸いです。
特集:ポストコロナのIT業界サバイバル術
2020年春、コロナ感染防止のための外出削減要請を受け、多くの企業がリモートワークを取り入れた。この流れはコロナ収束後も加速し、ITの開発・運用においても今後はリモート化が進む他、外部委託開発に懸念を感じ内製化に踏み切る企業も増えるだろう。ITを前提としたビジネスが求められ、これまで以上にITを主体的に活用しなければ生き残れないポストコロナ時代。そのとき、IT企業は、エンジニアは、どう変化しなければならないのか――。
金近勇治
情報戦略テクノロジー エンジニア
子供のころからコンピュータが大好きで、高等学校から大学院まで情報処理分野を専攻してきた純粋培養なITエンジニア。一人でも多くのエンジニアが幸せになれることを目標に、情報発信を続けていきたい。
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