Azure MarketplaceにDocker Enterprise 3.1定義済みWindows Serverイメージが登場:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(118)
Windows Server向けDocker Enterpriseの最新のメジャーリリース「Docker Enterprise 3.1」が2020年6月にリリースされましたが、Azure MarketplaceのDocker Enterprise定義済みイメージはこれまでDocker Enterprise 3.0ベースでした。2020年8月の更新イメージでようやく最新のDocker Enterprise 3.1(Engine 19.03.11)定義済みイメージが利用可能になりました。
Azure Marketplaceの2020年8月のWindows Serverイメージから
本連載第112回で紹介したように、Docker Enterprise事業部を2019年末に買収したMirantisは2020年6月に買収後、初のメジャーリリースとなる「Docker Enterprise 3.1」をリリースしました。
Azure Marketplaceの名前に「with Containers」を含むWindows Serverイメージは、Docker Enterpriseと、一部のServer CoreおよびNano ServerベースOSイメージの最新版が定義済みになっており、このイメージからAzure仮想マシンをデプロイすることで素早くWindows ServerベースのDockerコンテナホストを構築することができます(画面1)。しかし、2020年7月までは「Docker Enterprise 3.0」(Engine 19.03.5)が定義済みでした。
2020年8月のセキュリティ更新を含む、「Windows Server 2019(LTSC)」および「Windows Server, version 1809(SAC)」以降のDocker Enterprise定義済みイメージは、Docker Enterprise 3.1が最初から定義済みとなりました。Docker Enterprise 3.1の最新バージョンはEngine 19.03.12(2020年8月10日リリース)ですが、8月の定義済みイメージにはEngine 19.03.11(2020年6月24日リリース)が含まれます(画面2)。
Docker Enterprise 3.1を最新バージョンに更新するには
本稿執筆時点(2020年8月17日)のDocker Enterprise 3.1の最新バージョンは「Engine 19.03.12」(2020年8月10日リリース)です。Docker Enterprise 3.0までは、PowerShell Galleryの「DockerMsftProvider」モジュールを使用してDocker Enterpriseのインストールや更新を行いましたが、Docker Enterprise 3.1ではこのモジュールを使用しません。代わりに、Mirantisが提供する「install.ps1」を使用します。最新バージョンに更新するには、Windows PowerShell(またはPowerShell Core)で以下のコマンドラインを実行します(画面3)。
PS C:\> Invoke-WebRequest -Uri https://get.mirantis.com/install.ps1 -o install.ps1 PS C:\> .\install.ps1
画面3 Docker Enterprise 3.1のインストールや更新に、従来の「DockerMsftProvider」モジュールは使用しない。Mirantisが提供する「install.ps1」をダウンロードして実行すればよい
Docker Enterprise 3.1のリリース情報については、以下のサイトで確認することができます。
Windows Server 2016のDocker Enterprise 3.0の更新時の注意点
Docker Enterprise 3.1は「Windows Server 2016」をサポートしていません。Docker Enterprise定義済みのWindows Serve 2016イメージのバージョンは、Docker Enterprise 3.0です。こちらも最近までEngine 19.03.5(2019年11月14日リリース)が定義済みでしたが、2020年8月のイメージはEngine 19.03.11(2020年6月24日リリース)に更新されています(画面4)。
Docker Enterprise 3.0のサポートライフサイクルは「2021年7月21日」まで続きます。こちらは引き続き「DockerMsftProvider」モジュールを使用して今後も更新することができるはずです。
ただし、「PowerShellギャラリー」や「DockerMsftProvider」モジュールが使用するDocker Enterpriseのダウンロードサイト(dockermsft.blob.core.windows.net)のTLS 1.0/1.1の廃止の影響で、モジュールのインストールや一部のコマンドレットがエラーになる場合があります。TLS 1.0/1.1廃止の影響は、次のコマンドラインの1行目で回避することができます。この例は最新バージョンに更新する場合のコマンドラインです(画面5)。
PS C:\> [Net.ServicePointManager]::SecurityProtocol = [Net.SecurityProtocolType]::Tls12 PS C:\> Update-Module DockerMsftProvider PS C:\> Get-Package -Name Docker -ProviderName DockerMsftProvider PS C:\> Find-Package -Name Docker -ProviderName DockerMsftProvider PS C:\> Install-Package -Name Docker -ProviderName DockerMsftProvider -Update -Force
なお、Docker Enterprise 3.0はEngine 19.03.11からバージョン情報(docker version)に「Unlicensed - not for production workloads」と表示するようになりました。このメッセージの意味することがこの通りなのか、現状は詳細な情報を見つけられていませんが、運用環境でこのメッセージが気になる場合は、次のコマンドラインでメッセージが表示されない1つ前のバージョンであるEngine 19.03.8を明示的に指定して更新してください。
PS C:\> Install-Package -Name Docker -ProviderName DockerMsftProvider -RequiredVersion 19.03.8 -Update -Force
Docker Enterprise 3.0のリリース情報およびライフサイクルについては、以下のサイトで確認することができます。
- Docker Engine - Enterprise release notes(Docker Enterprise 3.0)[英語](Mirantis)
- Enterprise Maintenance Lifecycle[英語](Mirantis)
Docker Enterprise 3.1と3.0の違いは?
Docker Enterprise 3.1と3.0のリリース情報を見ると分かるように、これらのEngineは19.03.8以降で共通です。本稿執筆時点(2020年8月17日)では、「DockerMsftProvider」モジュールでインストールできるのはEngine 19.03.11ですが、Microsoftが「DockerMsftProvider」モジュール用に用意しているダウンロードサイトの準備ができ次第、最新バージョンが利用可能になるでしょう。
Docker Enterprise 3.1と3.0のEngineは共通ですが、Docker Enterprise 3.1はWindows Server 2016をサポートしません。また、表1に示すように、オーケストレーション関連の周辺環境のサポート状況が異なります。詳しくは、以下のサポートマトリックスのページで確認してください。
- Enterprise Compatibility Matrix[英語](Mirantis)
OSバージョンの サポート |
Docker Enterprise | Universal Control Plane(UCP) | Docker Trusted Registry(DTR) |
オーケストレーション | |
---|---|---|---|---|---|
Docker Enterprise 3.1 | Windows Server 2019 LTSC、SAC version 1809以降(OSビルド17763以降) | 19.03.8以降 | 3.3.0以降(ワーカーノードのみ) | サポートされない | Swarm mode、Kubernetes |
Docker Enterprise 3.0 | Windows Server 2019 LTSC | 19.03.x | 3.2.2(ワーカーノードのみ) | サポートされない | Swarm mode |
Windows Server 2017 LTSC | 19.03.x | 3.2.x(ワーカーノードのみ) | サポートされない | Swarm mode | |
表1 Docker Enterprise 3.1とDocker Enterprise 3.0の違い |
最新情報(2020年11月13日追記)
2020年11月12日(米国時間)リリースの新バージョン(Engine 19.03.13)から、「Docker Enterprise」は「Mirantis Container Runtime(MCR)」という名称になりました。
- Mirantis Container Runtime release notes[英語](Mirantis)
- [速報]Docker Enterprise 改め、Mirantis Container Runtime(MCR)リリース(Engine 19.03.13)(山市良のえぬなんとかわーるど)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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