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YKK AP、リクルートホールディングスの「日常業務を変える、変わる」話がおもしろいほぼ月刊Google Cloud(2)(2/2 ページ)

働き方改革におけるITツールは、あくまでもツールでしかありません。YKK APとリクルートホールディングスの「G Suite」導入事例からは、「どのように日常的な業務を変えられるか」が重要であることが分かります。

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 VPNを経由せずにG Suiteをどこからでも使えるような設定としたため、メールやファイルをどこにいても確認できる利便性を当初から提供できた。また、メール、ドキュメント、スプレッドシート、カレンダーなどを横断検索できる「Cloud Search」という機能も歓迎されたという。会議室調整など、従来Excelの共同編集でやっていた作業を移行する動きも進んだ。


YKK AP IT統括部グローバルITセキュリティ&ガバナンス室長、齋藤充宏氏

 ただし、「進展はゆっくりしていた」と、YKK APのIT統括部グローバルITセキュリティ&ガバナンス室長、齋藤充宏氏は振り返った。ワークショップや参考資料を通じた普及活動を行ってきたが、活用度合いは職種や部署、ITリテラシーの高さなどによって違いが生まれていた。それが新型コロナ禍によって、様変わりしたという。

 「COVID-19が、(幅広い職種や職階の社員の間で)『業務を変えなければならない』という考えを生む、いいきっかけになったことは否めない」(齋藤氏)

 いい例が営業部門だ。2020年3月にYKK APは全社で原則在宅勤務を通達した。一方、毎年3、4月は、会社の方針説明や新商品の説明を行う重要な時期だが、顧客や取引先からは訪問の拒否や遠慮を求める声が相次いだ。

 営業部門ではこれをきっかけに、社内での日常業務を、さまざまな点で見直した。YKK APは以前からテレワークを推進してきたが、営業部門では物理的に集合する会議体が多数残っていた。また、事務所のホワイトボードでスケジュール共有を行っているケースも多かった。

 COVID-19対応ではまず、約1000台のPCを緊急に配布。社内会議については、経営会議や大規模な会議も含め、「Google Meet」への移行を進めた。

 「一部の会議では紙で配るのが礼儀だった資料についても、Meetでの表示や、PDFでの配布に切り替えた。議事録はGoogle ドキュメントにすぐ上げられるようになった。また、従来の会議では物理的なスペースの制限から出席できなかった社員も、出席できるようになった例がある」

 事務所のホワイトボードで共有されていた行動予定表は、カレンダー機能の「Google Calender」に移行、また、予定に加えて活動実績を入力することで、管理がしやすくなったという。物件の工程表は、これまでExcelで多数のバージョンを管理してきたが、Google スプレッドシートによって単一のシートを共同編集すればよくなり、効率が上がったという。また、Webサイト作成機能「Google サイト」を使い、IT部門の助けなしに自部署の社内Webサイトを立ち上げる動きが相次ぎ、社内の情報共有促進に一役買ったという。

 顧客対応でも、Google Meetの利用は広がった。

 社外の商談では、片道1時間半をかけて相手先を訪ね、30分間話すといったケースもあった。こうした短時間の商談も容易にできるようになった。大規模なイベントは、これまで会場を参加人数に合わせて手配していたが、立地優先で考え、入りきれない場合はMeetを補完的に使って対応できるようになったという。

 「営業本部のシステム企画部部長は、『G Suiteがなかったらと思うとぞっとする』と話していた」

 営業部門では、業務プロセスにより深く踏み込んだ改善も進めようとしている。例えば、営業部門の困りごとに耳を傾けるチームが、長らく紙を正本としてきたA0、A1といったサイズの設計図面を対象としたチェックのプロセスを電子化するための案を検討しているという。


COVID-19で、営業部門はこうした働き方の変革を進めた

 一方、シンガポールにある関連会社YKK APファサードでは、シンガポール政府の外出禁止令に、機動的な対応ができたという。

 シンガポール政府がロックダウンを発表したのは2020年4月3日の金曜日。翌週火曜日には実施するということで、猶予は週末を含めて4日しかなかった。同社ではPCの自宅への持ち帰りや手渡しを進める一方、ファイルサーバのデータをGoogle ドライブに複製する作業を実施、1週間で3.2TBを移行した。6月2日からは段階的なロックダウン解除となったが、その後も同社では在宅勤務を許可、自宅に持ち帰ったPCは会社に戻すことなく利用できるようにしている。

 このように、G Suiteを活用したテレワークを推進していたYKK APは、COVID-19に無理なく対応できたと齋藤氏は話した。


COVID-19対応に関する従業員へのアンケート結果

 緊急事態宣言中の2020年5月11日に、G Suiteを使っていない工場社員を含む従業員、約1万人を対象として行った択一式のアンケートでは、「COVID-19対応における業務上の困りごと」がないとの回答が55%を占めた。「IT環境の不備」と答えた人は、3%だったという。

 齋藤氏は、今後実現したいこととして、「部署間での情報のサイロ化を防ぐための、情報共有の拡大」「サイト、フォーム、『Google Apps Script』などの幅広い利用の促進」「在宅勤務で時間をとられがちな会議を減らすための情報共有手段の研究」「社員の健康状態確認など、職場であればできることの在宅勤務への適用」などを挙げている。

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