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「Cortana」を利用しない企業向けWindows 10活用のベストプラクティス企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(85)

音声パーソナルアシスタント「Cortana」は、「Microsoft 365」で強化されたクラウドベースのアシスタントサービスに強化されることになっています。そのため「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」ではCortanaアプリが刷新されました。しかし現状、日本/日本語で利用できる機能は限定的です。当面、利用予定がない場合は、ユーザーから問い合わせを受ける前に、無効化しておくことをお勧めします。

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

Windows 10 バージョン2004におけるCortanaの大きな変化とは

 「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」で「Cortana(コルタナ)」は大きく変わりました。従来と同じように利用できることを期待していたユーザーは、これまでできていたことの多くができなくなったことに不満を覚えるかもしれません。

 新しいCortanaは、Windowsの「デスクトップ検索機能(Windows Search)」から分離され、タスクバーからも切り離された“スタンドアロンアプリ”になりました。また、従来は音声入力だけでの利用でしたが、チャット方式のキーボード入力にも対応しました。

 Windows 10 バージョン2004のリリース当初は「Cortanaベータ版」が搭載されていましたが、現在は「ベータ版」は取れているので正式版になったと思われます。ただし、ベータ版を抜けたばかりなので、実装されている機能はまだ少ないようです。

 特に日本/日本語でできることといえば、定形的な会話(ジョークを含む)とBing検索くらいしかありません。従来はできた「Cortanaさん」という呼び掛け(ウェイクワード、音声によるアクティブ化)も未実装です。

 以下のドキュメントでは、Cortanaの新機能として「Windows 10 バージョン2004では、Cortanaは更新され、強化されています」と紹介されています。米国/英語ではCortanaアプリの更新でできることが増えているように書かれていますが、日本/日本語では利用できないため、実際にどうなのかは分かりません。

 また、以下のサポート情報「Upcoming changes to Cortana」では、新しいCortanaは「Microsoft 365」(旧称、Office 365)のAIで強化されたデジタルアシスタントにシフトするともあります。さらに、現行バージョンのCortanaのサポートが段階的に縮小されることも説明されています。

 例えば、米国/英語のみでサポートされていた「Cortanaスキル」は2020年9月までにサポート終了となります。なお、Windows 10 バージョン2004の新しいCortanaは、Cortanaスキルの管理機能を最初から搭載していません。

 個人/企業のユーザーにとって最も大きな変更点は、Cortanaアプリを利用するために、個人のMicrosoftアカウントまたはMicrosoft 365の組織アカウントでWindowsまたはCortanaアプリへのサインインが必須になることです(画面1)。

画面1
画面1 Windows 10 バージョン2004の新しいCortanaを利用するには、MicrosoftアカウントまたはMicrosoft 365の組織アカウントでのサインインが必須

 Microsoftアカウントであれば利用可能というわけではなく、そのMicrosoftアカウントが「Outlookメールボックス」を持つ必要もあります。以前のCortanaはサインインなしでも利用できましたし、Outlookメールボックスを持たないMicrosoftアカウント(他社サービスのアカウントにひも付いたMicrosoftアカウント)でも利用できました。それがWindows 10 バージョン2004に更新すると、同じMicrosoftアカウントで新しいCortanaを利用できなくなる場合もあるということです(画面2)。

画面2
画面2 画面左はOutlookメールボックスを持たないMicrosoftアカウント、画面右はMicrosoft 365の組織アカウント

組織全体でCortanaを無効化する方法

 Microsoft 365を利用している企業であれば、将来的に新しいCortanaの強化された機能を利用できる可能性があります。ただし、日本/日本語でどれだけの機能がサポートされるかは現時点では不明です。Microsoft 365を利用していない企業の場合、新しいCortanaの利用価値はこれといって見いだせません。社員が個人のMicrosoftアカウントで利用することも想定されますが、多くのIT担当者はそれを許可したくないでしょう。

 CortanaはWindows 10のビルトインアプリであり、他のビルトインアプリがそうであるように、「設定」アプリやスタートメニューからアンインストールすることはできません。Windows PowerShellのコマンドラインを利用して、Cortanaアプリを完全にアンインストールする方法もあるようですが、筆者はお勧めしません。ビルトインアプリであるCortanaは、次の機能更新プログラムで復活するであろうというのがその理由です。

 Active Directoryドメインを導入している企業であれば、「グループポリシー」でCortanaを無効化できます。具体的には、Windows 10クライアントを対象とした「グループポリシーオブジェクト(GPO)」で、以下の場所にある「Cortanaを許可する」ポリシーを「無効」にします(画面3)。

  • コンピューターの構成\ポリシー\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\検索\Cortana を許可する:無効

画面3
画面3 グループポリシーで「Cortanaを許可する」ポリシーを「無効」にする

 Windows 10クライアントにポリシーが適用されると、タスクバーから「Cortana」のアイコンが消え、さらにタスクバーを右クリックしたときの「Cortanaのボタンを表示する」オプションが非表示になります(画面4)。

画面4
画面4 画面左はポリシー適用前、画面右はポリシー適用後

 スタートメニューや検索ボックスから「Cortana」アプリを起動することは引き続き可能ですが、起動しても「Cortanaは無効になっています」と表示されて利用できません(画面5)。

画面5
画面5 スタートメニューや検索ボックスから「Cortana」アプリを起動しても利用できない

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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