ITコストを一気に削減する10の方法をGartnerが紹介:即効性のある削減策とは
Gartnerは「新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で景気が悪化し、多くのCIOが目先のITコスト削減を迫られている」と指摘し、短期間でITコストを削減する10の方法を紹介した。効率良く削減でき、事業に影響を与えにくい方法とは何だろうか。
Gartnerは2020年10月27日(米国時間)、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)が世界経済に幅広い影響を与えており、多くのCIO(最高情報責任者)が目先のITコスト削減を迫られている」と指摘し、短期間でITコストを削減する10の方法を紹介した。
Gartnerによると2020年のIT支出は全てのカテゴリー、全ての地域で減少する見通しだ。「ほとんどの産業でビジネスが再開されている。だがこれまでのパンデミック対策、例えばロックダウン(都市封鎖)、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)、移動制限、国境封鎖などが経済の重しになり、運輸や製造、天然資源関連といった業界が、最も深刻な打撃を受けている」と、Gartnerは説明している。
ITコスト削減について、Gartnerは戦略的なコスト最適化アプローチを提唱している。継続的な規律に基づいて支出を管理し、単にコストをカットするのではなく、ビジネス価値の最大化を目指すものだ。
「困難な時期には通常とは異なる行動が要求される。生き残りに奮闘している企業でも、CIOはビジネスの中長期的な健全性への打撃が最も小さい方法でコスト削減に取り組む必要がある」と、Gartnerのシニアリサーチディレクターを務めるクリス・ガンリー氏は指摘している。
Gartnerは、目先のITコスト削減が必要になったときは、次の10のルールに従うようアドバイスしている。
(1)即効性を狙う
年単位ではなく、数週間や数カ月の予算に影響するコストをカットするか、減らすか、一時停止する。こうした支出の例として、経常的に発生し、毎年ではなく毎月、または四半期ごとに従量制で支払う費用が挙げられる。
(2)凍結するのではなく、減らす
支出を当面の間凍結し、後日再開するのではなく、本当に減らせるか、またはなくすことができる項目に集中する。
(3)現金は最優先
減価償却費のような非現金支出費目ではなく、損益計算書の現金に影響する費目のコスト削減を目指す。
(4)1回で済ます
ほとんどの企業は最初に十分なコストを削減しなかったために、再度、削減しなければならないことが多い。これは人員削減では特に問題になる。人員削減を繰り返すと、大きな打撃になりかねない。
(5)勘定を精査する
財務パートナーと協力し、経費勘定や定期的に累増する利子、延滞料などの金額、前払い金など、支出レベルを詳細に把握する。それを基に現金支出を削減する即効性のある方法を見つける。
(6)未払いの支出や契約金に注目する
支払い(契約金)の回収や前払いの返還は不可能だ。最も即効性があるのは未払いの支出や契約金の免除、減額だ。契約の再交渉や解除条項を検討すればよい。
(7)設備投資を含む包括的なコストを削減する
通常、運用にかかる費用は削減効果を最も出しやすいが、設備投資も減らすことが可能だ。Gartnerの「IT Key Metrics Data」によれば、IT予算の平均25%が設備投資に振り向けられている。目先のコスト削減が必要な場合は、あらゆるIT支出について削減を検討する。
(8)サンクコストは無視すべきか
コスト削減においては、一般にサンクコスト(埋没費用)は無視すべきだといわれている。つまり将来の支出に対しては、過去の支出とは無関係に考えなければならない。目先のコスト削減という観点からすると、これは確かに正しい。だが、支出の継続によって今後得られる便益とコスト削減効果のどちらが大きいのかは、検討に値する。
(9)裁量的支出と非裁量的支出の両方を考慮に入れる
キャパシティーやサービスの増強、新規プロジェクトなどを含む裁量的支出の方がカットしやすいと見なされる場合が多い。だが、ITインフラやオペレーションの支出など、ビジネスを運営するための非裁量的支出も、サービスの使用量やサービスレベルの引き下げという形で、カットすることが可能だ。
(10)変動費と固定費の両方の削減に取り組む
固定費はオフィス賃料や給与など、業務状況や使用量にかかわらず、一定で推移する支出を含む。固定費に対しては、特定の支出をなくすことに集中する。
変動費は通信費や業務委託料、消耗品費など、業務状況や使用量に応じて変化する。変動費に対しては、特定の支出をなくすことと減らすことの両方に焦点を当てる。
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