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エンタープライズクラウド戦略、7つの策定ポイントをGartnerが紹介クラウド戦略の重要性を強調

Gartnerは企業が実践的なクラウド戦略を策定するための7つのポイントを挙げ、注力ポイントを解説した。鍵となるのはビジネス戦略との関係だ。

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 Gartnerは2020年12月8日(米国時間)、企業が実践的なクラウド戦略を策定するための7つのポイントを挙げ、解説した。

 Gartnerのシニアリサーチディレクターを務めるラジ・ベーラ氏は、クラウド戦略の重要性について次のように述べた。

 「クラウド戦略は全ての企業にとって重要だ。企業におけるクラウドとその役割についての簡潔な見解を表した戦略でなければならない。クラウド戦略がないままクラウドに移行すると、場当たり的な導入の仕方になり、結果的にコストが高くつき、管理が混乱し、セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性が発生して、クラウドの導入効果が全体的に満足のいかないものになってしまう」

 Gartnerは、クラウド戦略を策定するための7つのポイントについて、次のように説明している。

(1)クラウド戦略はビジネス戦略に従って策定する

 ビジネス戦略は企業によって大きく異なる。「業種にかかわらず、エンタープライズアーキテクトやI&O(インフラ&オペレーション)のリーダーは、自社のクラウド戦略がビジネス戦略と整合性を持ち、ビジネス戦略を強力にサポートするようにしなければならない」(ベーラ氏)

(2)5種類のクラウドリスクを評価する

 エンタープライズアーキテクトやI&Oリーダーがクラウド戦略を策定する際、クラウド関連の5種類のリスクを評価する必要がある。そのリスクとは「アジリティリスク」「可用性リスク」「セキュリティリスク」「サプライヤーリスク」「コンプライアンスリスク」だ。コンプライアンスにかなったバランスの取れた方法で、潜在リスクと潜在メリットを比較検討しなければならない。

 「リスク管理はクラウド戦略プロセスの不可欠な部分だ。クラウドプロジェクトやベンダーのリスク管理に取り組む前に、具体的なクラウド出口戦略を策定しなければならない。これがバランスの取れたクラウド展開を意思決定する前の重要なステップだ」(ベーラ氏)

(3)コスト削減がクラウド導入の主な動機になっていないか

 Gartnerが顧客から最もよく聞かれるクラウドについての質問は「クラウドは本当に安いのか」だ。この質問に答えるには、綿密なアプローチが必要になる。トータルコストはクラウドサービスの種類やワークロードの特性、企業が置かれた状況によって左右されるからだ。

 「ほとんどの企業が実際にクラウドを利用するようになり、コストよりもイノベーションやスピードといった面でのメリットの方が大きい場合が多々あることも分かってきた」(ベーラ氏)

(4)クラウドへの移行ルートを計画する

 ほとんどの企業ではクラウド戦略の策定過程で、クラウドへの移行ルートを計画する必要がある。次のように、さまざまな移行ルートがある。

  • リホスティング

 最小限の労力でアプリケーションを移行する。だが、最小限の変更しか加えなければ、得られる効果も最小限にとどまる。アプリケーションの大部分の側面が従来と同じままだからだ。

  • リファクタリング

 既存データベースをクラウドに移行し、社内から管理し続けるのではなく、クラウドマネージドデータベースのようなサービスを利用する。

  • リビルド

 弾力的なスケーラビリティや従量制のクラウド料金モデルを可能にするクラウドネイティブアーキテクチャに基づいて、戦略的アプリケーションを再構築する。

(5)クラウドの共有責任モデルを理解する

 クラウドコンピューティングにおける従来との根本的な違いは、共有責任モデルにある。

 クラウドでは、プロバイダーの責任は提供されるクラウドサービスの機能と能力で定義される。顧客企業は、目指す結果を得るために、独自のプロセスの中でクラウドサービスの機能を利用する責任を負う。

 「クラウドサービスの提供者に合理的に期待できることは何か、自分自身の責任は何かを、クラウドの顧客は明確に理解する必要がある。責任を持ってクラウドサービスを利用するためには、スキルと経験が不可欠であるため、組織はクラウドサービスを利用するスタッフのトレーニングや教育、最終的には認定を促進すべきである」(バーラ氏)

(6)エンタープライズクラウド導入の3つのパターンそれぞれで異なるアプローチを取る

 Gartnerは、クラウドの導入には3つのパターンがあると認識している。「モダンな標準的機能に迅速にアクセスするためのSaaS(Software as a Service)の導入」「独自の新機能を実現するためのCIPS(Cloud Infrastructure and Platform Services)の導入」「現在のアプリケーションとレガシーアプリケーションの移行」の3パターンだ。

 エンタープライズアーキテクトやI&Oリーダーはクラウド戦略を策定する際、運用管理とマネジメントのトレードオフを踏まえた包括的な観点に立つ必要がある。クラウドにデプロイするアプリケーションごとに導入アプローチを検討しなければならない。

(7)IT部門の役割の変化を受け入れる

 エンタープライズアーキテクトやI&Oリーダーがどのようなクラウド戦略を策定したとしても、クラウド戦略は社内IT部門の役割の変化を伴う。「通常、この変化に対応して、クラウドアーキテクトの任命やクラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)の創設、ビジネスステークホルダーとクラウドサービスプロバイダーとの連携を図るクラウドサービスブローカーグループの設置などが起こる」(ベーラ氏)

 人事部門が人的資源に関する役割を担うようになったように、IT部門はクラウドサービスに関する役割を受け入れていくだろうとGartnerはみている。ベーラ氏は「デジタルに詳しくなっているビジネス部門が適切なクラウドサービスを選択、利用できるように、IT部門が支援するケースもあるだろう」と述べている。

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