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ツールの導入やインフラ整備だけにとどまらない変革が必要 ガートナーが「日本のテレワークに関する展望」を発表「リモートファースト」の企業への転換

ガートナー ジャパンは、「日本のテレワークに関する2021年の展望」を発表した。2025年までに企業の30%がテレワークを当たり前のものにすると予測している。

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 ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は2021年4月6日、「日本のテレワークに関する2021年の展望」を発表した。同社は「日本企業はテレワークを企業の重要な戦略の一つとして取り組むべきだ」と主張する。

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ガートナーのWebページから引用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を契機に企業でのテレワークが急速に普及した。テレワークが話題になった当初は特定の従業員が対象だったが、現在はほとんどの従業員が対象になっている。ガートナーはテレワークについて次のように述べている。

 「オフィスワークやモバイルワークという観点をはるかに超えて、働く場所に対する考え方が根本的に見直されている。従業員にとってもテレワークは利点が多く、単に移動時間を削減できるだけでなく、自分にとって最も働きやすく、生産性の上がる場所や時間で働けるメリットがある」

2021年以降のテレワーク戦略を策定する際に注目すべきトレンド

 ガートナーは、テレワークに関する戦略を日本企業のIT部門が2021年以降に策定する上で、注目すべき今後3〜5年のトレンドとして以下の3項目を挙げている。

ツールの導入やインフラ整備だけにとどまらない変革が必要

 テレワークを実施するに当たって、ツールの導入やインフラの整備だけでは従業員満足度を高められない。ガートナーは「働き方改革などを目的としてテレワークを導入した企業は、導入の目的を明確化した上で、人事や総務、IT部門がテレワークを主導している。一方、COVID-19対策として緊急で導入した企業はIT部門に運用を依存する傾向がある」という。

 ガートナーによると、テレワークを緊急導入した企業の割合は8割を占める。こうした企業では、テレワークの取り組みを単なるツールやインフラ整備と捉えて、経営層から一般社員までの意識や企業文化を変える取り組みとして認識していないとガートナーは指摘する。

 「テレワークを推進する企業の65%は、従業員の意識や企業の文化を変えられず、従業員満足度の向上を含むベネフィットを達成できない」

社内ソーシャルネットワークを使った従業員エンゲージメントの確保

 テレワークを実施する大手企業の80%が、従業員エンゲージメントの確保のために社内ソーシャルネットワークを再評価しているという。テレワークが進むと従業員同士が直接会う機会が減少し、雑談や歓談などから得られる知見やアイデア、人脈などの非公式な知的生産活動が低下する。上司と部下との間のコミュニケーションも減少しがちだ。

 ガートナーは「不足しがちな従業員間のコミュニケーションを補強するために、『Microsoft Teams』や『Slack』など、ソーシャルネットワークから進化したコラボレーションアプリの利用が進む」とみている。

「リモートファースト」の企業への転換

 リモートファースト企業とは「テレワークを当たり前のものとする企業」のこと。これまでの働く場所に関する考え方が根本的に見直され、2025年までに企業の30%がリモートファースト企業に転換するとガートナーは予測する。

 「働く場所はもはやオフィスだけではなく、自宅やサテライトオフィス、カフェなど、あらゆる場所がオフィスになり得る。企業は今後、こうした環境について検討すべきだ。テレワークを前提とした機器やツールの選定とセキュリティ対策に加え、リモートでも働ける自律した社員の育成や、従業員エンゲージメントの強化などの取り組みを進めることが重要だ」

「企業全体の働き方の問題」として捉え直す時期が来ている

 ガートナー ジャパンのアナリストでシニア プリンシパルを務める針生恵理氏は次のように述べている。

 「緊急的、断片的に実施してきたテレワークだが、企業全体の働き方の問題として捉え直し、恒久的な対策として取り組む必要がある。経営陣の推進力、従業員の快適さ、それを支える評価やマネジメント、ITツールの活用が重要な要素になる。今後、テレワークはデジタルワークプレース戦略の一環として、企業戦略で重要な意味を持つようになる。企業は、自社のテレワーク戦略を改めて見直し、将来に向けたビジョンを明確に示さなければならない」

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