刷新された「Windowsのリリースの正常性」サイトの歩き方:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(99)
Microsoftは2021年2月に「Windowsリリース情報」サイトを刷新し、「Windowsのリリースの正常性」をトップに据えた新たなサイトに移行しました。Windows 10の毎月の品質更新プログラム(累積更新プログラム)や半期に一度の機能更新プログラムの最新情報は、このサイトから入手できます。
一般向け「Windowsのリリースの正常性」サイトとは
「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」の「Windows 10」は、毎月リリースされる「品質更新プログラム(累積更新プログラム)」と半期に一度リリースされる「機能更新プログラム」(Windows 10の新バージョン)で継続的に更新し続けることが、セキュリティや安定性を維持しながら最新テクノロジーを活用する上で重要になります。
Windows 10(SAC)の各バージョンのサポート期間は「18カ月」または「30カ月」(下半期リリースのEnterpriseおよびEducation)と短く、サポート期間が終了するとセキュリティ更新が受けられなくなります。
セキュリティ修正を含む毎月の品質更新プログラムは「累積更新プログラム」と呼ばれ、過去に修正された内容を全て含みます。特定のセキュリティ問題へ対策するために、小さなセキュリティパッチで対応するということは基本的にできません(有償サポートでは可能な場合もあります)。そのため、企業や組織内で運用中のWindows 10デバイスのバージョンと更新状況を把握し、できる限り最新またはサポート期間内のバージョンを、できるだけ新しい推奨の累積更新プログラムで利用されていることを確認する必要があります。
Microsoftは2021年2月、2019年4月から開始した更新情報提供サイト「Windows 10リリース情報(Windows 10 release information)」や「Windowsメッセージセンター(Windows message center)」を、新たに「Windowsのリリースの正常性(Windows release health)」をトップに置いたサイトに刷新しました(画面1)。
- Windowsのリリースの正常性[日本語]
- Windows release health[英語]
画面1 Windows 10の更新プログラムに関する最新情報と関連情報へのクリックアクセスのハブとなる「Windowsのリリースの正常性(Windows release health)」サイト(日本語)
Windows 10の更新プログラムに関する最新情報や関連ドキュメントには、「Windowsのリリースの正常性」をハブとして素早くアクセスできます。例えば、「Windows 10のリリース情報とサービスオプション」をクリックすると、「Windows 10リリース情報」ページにアクセスできます(画面2)。
Microsoftのサイト全てにいえることですが、日本語の情報は最新情報が反映されるまでにタイムラグが発生する場合があるので、オリジナルの英語サイトもチェックすることをお勧めします。URLの「/ja-jp」を「/en-us」に置き換えることでオリジナルの英語サイトに素早くアクセスできます。
「Windowsのリリースの正常性」ページ中段にある「メッセージセンター」では、Windowsメッセージセンターに新たに投稿または更新された最新情報(品質更新プログラムや機能更新プログラムのリリース、ブロード展開、既知の問題の報告など)をキャッチアップできます。また、Windows 10のバージョンごとに「既知の問題とお知らせ」や「解決した問題」「リリースノート(Windows 10の更新履歴)」への直リンクがあります(画面2、画面3)。
更新状況は「Windows 10リリース情報」のOSビルドで確認
Windows 10が適切に更新されているかどうかは、「Windows 10リリース情報」で素早く確認できます(前出の画面2)。「サービスオプションごとのWindows 10の現在のバージョン」としては、常に最新バージョンに「Microsoft推奨」フラグが付いていますが、サポート終了日以前のバージョンを使用していれば問題ありません。ただし、サポート終了が近づいている場合は、急いで後継バージョンへの移行を計画する必要があります。
サポート期間中のWindows 10のバージョンを利用中の場合は、「サービスオプションごとのWindows 10の現在のバージョン」一覧、または画面を下にスクロールすると出てくる「Windows 10のリリース履歴」のバージョンごとのOSビルド一覧にある「OS build」列を確認します。
OSビルドは、最上位にある最新のものが推奨というわけではありません。前出の画面2は2021年3月末時点のものですが、Windows 10 バージョン20H2に関しては2021年3月29日(米国時間)にリリースされた累積更新プログラム「KB5000842」のOSビルド「19042.906」が最新です。しかし、累積更新プログラム「KB5000842」は「累積更新プログラムのプレビュー」や「Cリリース」と呼ばれるオプションの更新プログラムです。
Windows Updateを使用する場合、オプションの更新プログラムは「更新プログラムのチェック」をクリックするか、「ダウンロードしてインストール」をクリック(Windows 10 バージョン2004以降のCリリースの場合)しなければダウンロード、インストールされることはありません。「Windows Server Update Services(WSUS)」を利用している場合、オプションの更新プログラムは同期されることはありません。WSUSで配布したい場合は、WSUSに更新プログラムをインポートして承認する必要があります。
使用中のWindows 10に不足しているセキュリティ更新がないかどうか確認するには、「毎月第2火曜日」(日本ではその翌日の水曜日)にリリースされる、「Bリリース」とも呼ばれるセキュリティ更新を含む累積更新プログラムのOSビルドまで更新されているかどうかを確認します。
言い換えると、翌月のBリリースが来るまでは、前月のBリリースまでにできるだけ早く更新されていることが望まれます。Windows 10 バージョン20H2の場合は2021年3月9日にリリースされた累積更新プログラム「KB5000802」のOSビルド「19042.867」です。3月のBリリースとCリリースの間には2つの累積更新プログラムが定例外(Out-Of-Band)でリリースされましたが、これは3月のBリリースで一部のプリンタで確認された印刷関連の問題を修正するものであり、問題の影響を受けていない限り、対応する必要はありません。影響するかどうかは「既知の問題」(前出の画面3)のページで確認できます。
Windows 10のOSビルドを確認する方法
Windows 10の更新状況は、詳細なOSビルド番号(ビルド番号.xxx)を調べ、「Windows 10リリース情報」の「OS Build」列と比較することで素早く確認できます。詳細なOSビルド番号は、「設定」アプリの「システム」の「詳細情報(またはバージョン情報)」や「Windowsのバージョン情報」(「winver.exe」コマンド)、コマンドプロンプト(cmd.exe)起動時のヘッダで確認できます。
また、PowerShellで次の1行のコマンドラインを実行することで、レジストリ「HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion」内の「CurrentVersion」および「UBR」値から取得することもできます(画面5)。
(Get-ItemProperty "HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion").CurrentBuild + "." + (Get-ItemProperty "HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion").UBR
Microsoft 365管理センターにも統合された「Windowsのリリースの正常性」
2021年3月にWindowsメッセージセンターでもアナウンスされましたが、Microsoftは3月初め、「Windowsのリリースの正常性」を「Microsoft 365管理センター」に統合したことを発表しました。
- Windows release health coming to the Microsoft 365 admin center[英語](Windows IT Pro Blog)
「Microsoft 365管理センター」に統合された「Windowsのリリースの正常性」には、Windowsのライセンスを含むサブスクリプション(Microsoft 365 E3/E5、Windows 10 E3/E5など)の管理者がアクセス可能です。
その他のリリース情報
Microsoftはかつて、自社製品のほとんどの更新プログラムをWindows UpdateやWSUSを通じて提供してきました。しかし現在は、製品やアプリごとに異なるコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を利用するようになりました。
例えば、2021年4月からWindows 10の標準ブラウザとして完全に入れ替わったChromium版の「Microsoft Edge」(旧Edgeは2021年3月でサポート終了)や「Microsoft 365」(旧称、Office 365)アプリはそれぞれ別のCDNを持ち、リリース情報を公開しています。また、「Microsoft Azure」という、デバイスにインストールされることなく利用されるクラウドサービスもあります。
- Microsoft Edge Stableチャネルのリリースノート(Microsoft Docs)
- Microsoft 365 Appsの更新プログラムに関するリリース情報(Microsoft Docs)
- Azureの更新情報(Microsoft Azure)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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