ドライブレコーダーの映像から事故の過失割合をAIで算出 セイコーソリューションズが「事故状況推定システム」を開発:従来の「事故当事者による状況説明」は客観的な情報が不足
セイコーソリューションズは「事故状況推定システム」を開発した。市販のドライブレコーダーの録画データから、AIによって簡易な事故形態を判定し、基本過失割合を算出する。3次元化した主観と俯瞰視点のシミュレーター映像も出力する。
セイコーソリューションズは2021年5月19日、「事故状況推定システム」を開発したと発表した。同システムは、市販のドライブレコーダーの録画データから、AI(人工知能)によって簡易な事故形態を判定し、基本過失割合を算出する。自動車保険を取り扱う損害保険会社や共済に向けたサービスとして提供する。
過去の判決事例を基に作成したデータベースと照合
多くの自動車事故は客観的な情報が不足しており、事故の当事者が自ら状況を説明したり証明したりする必要もあることから、事故状況を正確に把握することが難しかった。
セイコーソリューションズは「こうした背景から、示談交渉が困難になっており、事案解決の長期化や難化が課題となっていた」という。
最近は、ドライブレコーダーが普及したことで事故の状況を正確に記録できるようになったが、映像から事故状況を把握するにはそのスキルを備えた人材と時間が必要になることが新たな課題になっている。
事故状況推定システムは、ウタゴエと共同開発したAI画像処理技術によって、ドライブレコーダーの映像から「交差点形態」「自車・相手車の進行方向」「信号機の有無・色」を識別、抽出する。抽出した情報を、過去の判決事例を基に作成したデータベースと照合し、事故形態や基本過失割合を算出して「事故状況図」と、事故状況の理解を助ける3次元化した主観と俯瞰視点のシミュレーター映像を出力する。
信号機の有無や車両の進入方向など、システムの判定が間違っていた場合は補正も可能だ。ドライブレコーダーの映像がない場合も、条件を手入力すればデータベースを活用できる。
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