検索
ニュース

さまざまな物性データを単一のモデルで学習可能に 早稲田大学理工学術院の畠山氏らが手法を開発各種データベースを共通書式に変換

早稲田大学理工学術院で講師を務める畠山歓氏の研究グループは、多彩な形式の材料科学データを単一のAIに学習させる手法を開発した。グラフ構造を利用して各種データベースを共通書式に変換することで、どのようなデータでも単一のモデルで学習できるという。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 早稲田大学理工学術院で講師を務める畠山歓氏と教授の小柳津研一氏の研究グループは2020年7月30日、多彩な形式の材料科学データを単一のAI(人工知能)に学習させる手法を開発したと発表した。研究グループは「材料科学や創薬など広範な分野に応用可能な万能AIを導く道筋になる可能性がある」としている。

画像
従来の研究との違い(出展:早稲田大学

多彩な材料の異なる物性値を単一の学習モデルに認識させる

 畠山氏らのグループが取り組んでいるのは「マテリアルズインフォマティクス」(MI)。これはAIを使って物性に関する研究データから新素材を発見したり、材料開発に役立てたりする研究だ。

 この研究では物質の性質(物性)データを基にAIでさまざまなシミュレーションをするが、従来のAIには課題があった。1つの予測モデルで1つの概念しか学習できず、例えば物質の「融点」と「沸点」といった2つの概念を学習させることが難しかった。

 畠山氏らの研究グループは、学習させるデータ形式に原因があると考え、情報間のつながりを表すグラフ構造を利用し、各種データベースの書式を共通書式に変換する手法を開発した。あらゆるデータを共通書式のグラフ構造に変換した上で専用の学習モデルに入力することで、どのようなデータでも学習できるという。

 研究グループはこの手法により、40種以上の物性、数千以上の化合物、数百以上のプロセス情報をAIに学習させた。「PEDOT-PSS」という導電性ポリマーの性能を予測したところ、「フィルムの製法を基に、化学実験の熟練者並の精度で導電性を予測できた」という。

 研究グループは、「既に分かっている知識ならばインターネットを検索することで手に入れられるが、未知の事象についても今回開発した手法を応用すれば、熟練者が導いたような予測が得られる」としている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る